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同じクラスには攻略対象キャラクター

 ここ、聖カデリア学園は主に貴族が通う学園である。

 貴族のマナーを学び、経営学を学び、美的感覚を養い、あとはただひたすらに社交界の縮図である学園でツテを作るための学園。

 とはいえ、望めば剣術も学べるし魔術も学べる。

 剣術と魔術を学べば攻略対象キャラクターが増える。

 学ばなければ正規ルートの5人。


 さて、その正規ルートの5人。

 うち1人は先ほど声をかけてきたモーガン先生。モーガン先生は担任教師で、準貴族である。

 そして2人目の攻略対象は、同じクラスで席がお隣さんであるジャレット・フレッカーだ。

 彼は公爵家の次男。

 緑色の髪は前髪が長めで、俯くと綺麗な灰色の瞳を隠してしまう。身長はクロエと同じくらいで華奢なので儚い印象を与える。

 性格は優しい。とにかく優しい。同級生にも敬語を崩さない、ピアノが得意な少年である。


「アッカーソン嬢、遅かったですね」

「……少し、人の多さにやられてしまって。休んでいましたの」

「大丈夫ですか? あまりご無理なさらないよう気をつけて下さいね」

「有難うございます」


 眉尻を下げて心配そうにこちらを見るジャレットにお礼の言葉を返し、私は彼の隣の、自身の席へと腰を落ち着かせる。


 豪華絢爛なホールとは違い、教室は至って普通だ。

 少々大きすぎる机と椅子が縦に4列、横に4列、計16。1クラスを形成するには少なすぎるこの数は、この学園ではしかし正規な数である。ただし、クラス数は異常に多い。

 数が増え、基本減ることの無い爵位持ち。無駄にプライドの高い彼・彼女らは、それぞれ主張が強い。家がライバルなんて事も少なくない。ゆえに1つの教室に沢山入れると厄介なのだ。

 そこで考えられたのが少人数制。クラスの数だけがやたら多い面倒な学園の完成である。

 まあ、学園自体大きく空き教室も腐るほどあるので問題無いのだが。


「クロエ様」

「……えっと、貴方は」

「私、エリーナ・エヴァンスと申します。今年、男爵の爵位を頂きました」

「そうだったんですか」

「いきなりお声をお掛けしてしまいすみません」


 目の前に居るのは綺麗なブロンドの髪を腰まで伸ばした女の子。身長はさほど高く無いが手足がスラリと長く、支給された制服を綺麗に着こなしている。髪と同じブロンドの瞳はやや垂れ気味だ。


 ちなみに言うと、爵位が下の人間が上の人間に不躾に声を掛けるのは、社交界ではNGである。

 まあ気にしないが。


 謝る彼女を見つめながら、「私」はぼんやりとした記憶の中で、ゲーム内でエリーナと言うクラスメイトとの接触があったかを必至で思いだそうとした。

 しかし、攻略対象キャラクター毎に用意されたライバルこそ居たが、こんな無害そうな女の子の友人はどうしても思い出せなかった。


* * *


 さて、ここでやっと私は大事な事を思い出した。

 それは「私」が前世でこのゲームをしていた理由だ。


「シリーズが進めどファンディスクが出ようと移植されようと絶対に攻略対象にならなかった最推しを! まさか! リアルに落とせるかもしれない日がくるなんて!」


 そう、「私」の最推しはファンディスクが出ても、続編シリーズが出ても、移植されようても、絶対に攻略対象キャラクターになれなかった。


 どんなに悔しかったか。

 アッカーソン家の平民執事も、なにかと接触の多かった学園の守衛も、なんならお抱え衣装屋のお兄さんですらファンディスクで攻略対象になったのに!

 私の最推しであるキャラクターだけ待てど暮らせど一向に攻略対象にはならなかった。


「よし。まずはシリル・シーグローヴと出会うところから始めなければね!」


 さあ、最推しを攻略する為に頑張ろうと思います。

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