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前世で一人暮らししてたので料理くらい出来ます

閑話の続き

 誰も正確に香辛料の調合が出来ないと分かった私は、とりあえず冒険することにした。

 すべての香辛料をとりあえず少しずつ、同じ割合で器に入れていく。そしてそれを味見。


 繰り返すこと10回くらい。


「これだ!!」


 出来た! もう二度と同じ調合は出来ないけど、理想の味である。


 私は調合が終わった香辛料をひとまず脇によけ、カレーの具の調理に取りかかる。具は、オーソドックスに人参とじゃがいも、玉ねぎと豚肉だ。

 玉ねぎは1個はみじん切りにし、1個は普通に切っていく。人参とじゃがいもは大きめに乱切り、豚肉はバラでは無くひき肉を選んだ。


 みじん切りにした玉ねぎを多めの油で飴色になるまで炒め、1度お皿に取り出す。そこからはじゃがいもと人参を炒め、玉ねぎを入れお肉を入れ、水を入れ香辛料を入れ。と前世の記憶の通りにカレーを作っていく。


「お嬢様は何処でカレーの作り方を?」

「……え、あ、と学園で知り合った方に教えて頂いたんです」


 私の隣で私の手元を興味深そうに眺めていたリックが、ふとそんな疑問を口にする。


 当たり前の疑問である。


 私はクロエ・アッカーソン。

 爵位は低いが一応、代々続く子爵家の娘である。料理なんてしたことが無い、はずだ。

 まあ中身である「私」は前世、食文化豊かな日本でそれなりに一人暮らしをし、それなりに自炊をしていた只のOLである。香辛料の調合こそ知らないがカレーを作るなんて簡単だ。


「ほう。流石カデリア学園。カレーの作り方を知ってるお方も居るんですね」

「ええ。お話を聞いて作ってみたくなったのだけど、なかなか大変なのね」

「でもお見事な包丁さばきでしたよ。……出来上がったカレーはどうされますか?」

「お夕飯に出してくれるかしら。何かこれに合う付け合わせが欲しいわね。ああ、余ったカレーは屋敷のみんなで食べて」

「本当に私たちで食べてしまって良いのですか?」

「ええ。もちろん」


 冷蔵機能が無いこの世界で、2日目のカレーを堪能するのは危険だろう。

 え? 魔術はって? この世界の魔術は万能ではないのです。


 とにかく、2日目のカレーは危険だろう。ならば屋敷で働いているみんなに少しでもカレーを食べて貰った方がいい。そう考えて、リックの言葉に頷くと、リックはそれはもう勢いよく頭を下げた。


 そしてすぐに出来上がりつつあるカレーに顔を近付けクンクンと匂いを嗅ぎながら、付け合わせを考え始めてくれた。


* * *


 さて、出来上がったカレーですが、あっと言う間になくなりました。


「ねえ、レオナルド。貴方、食べ過ぎじゃない?」


 レオナルドのせいで。


「いやだって、これ凄い旨いから」

「私もまだ食べたかったのに! というか、私が作ったのに!」


 リックが両親に今夜の夕飯は私が作ったこと。高価なカレーをリックたちにもと言ったことを伝えると、父はそれなら今日はみんなで食べようと言い出した。

 屋敷で働いている者たちを大事にしている父は、使用人たちと同じ食卓を囲むことを嫌とは思わない。もちろん母も。そしていつの間にか帰ってきていた兄も。


 と言うことでみんなでカレーを食べたのだけど、兄とレオナルドが競うようにお代わりをするものだからあっと言う間に無くなってしまった。


 こんな事なら1人分にすれば良かったかしら。


「クロエ。ご馳走さま。とても美味しかったよ」

「ええ。クロエちゃん、美味しい料理をありがとう」

「クロエ。お兄ちゃんはまたこれが食べたいので宜しく頼む」

「クロエ様、本来であれば私たちは食べる事の出来ないものを、本当に有難うございました。とても美味しかったです」


 まあでも、みんなが美味しいと言ってくれたし、また今度作ろうと思う。

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