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公爵の次は侯爵です

 ジャレットのところでのパーティーが終わったと思ったら、その後すぐに今度はセシルのところのパーティーが迫っている。


 ジャレットのところでは思わずシリルに出会え、しかもセシルのところにも招待されているから、また踊ろうと約束まで出来た。

 ジャレットとセシルのパーティーのお呼ばれは正直勘弁して欲しいところだったが、シリルに会えたので良しとしようと思う。


 未来の義弟との繋がりだもの。負けるわけにはいかない!


「で、またエスコートなのか」

「ごめんね、レオナルド」

「……まあ仕方がないけどな」


 レオナルドはグッタリしながらそう口にする。

 執事としては失格であろうこの態度は、しかしレオナルドだからと許されている。さすが乙女ゲーム。


 レオナルドに淹れて貰った紅茶を飲みながら、シリルとどう仲良くなってお兄様であるクリフォードに繋いで貰おうかと頭を働かせる。


 何故か始から異様に好感度の高い攻略対象に、個別ルートにしか無かったパーティーの招待。

 前世の記憶にある乙女ゲームとは展開が違う。


 考えれば分かることだった。

 『ここ』は「私」が生きていた場所では無い。

 ゲームの中でもない。

 「クロエ」が生きている世界なのだ。


 そして私が攻略したいのは非攻略対象!

 記憶にあるゲーム通りにことを進める必要は初めから無かったのだ。

 


「……ふふ。そうと分かればもう、好感度とか気にしないわ」


 テーブルにあるクッキーを1つ齧りながら、私はそこでふとあることを思い出した。


「そう言えば、ジャレット様のところでオリヴィア様に会わなかったわね」


 ジャレットルートの恋敵であり、クラスメイト。

 ゲームには居なかったエリーナと言う子を通して知り合ったオリヴィアは、そう言えばジャレットのところの舞踏会で見掛けなかった。


 セシルのところではスカーレットに出会うだろうか。


 なんて呑気なことを考えていたあの時の私を、今、とても殴りたい。


* * *


「あ、の、どうなさったんでしょうか。オリヴィア様に、スカーレット様」


 ウッドマン家に着いて屋敷の者に招待状を見せ中に入り、セシルとウッドマン家の当主様、奥方様に挨拶を終えたところで、オリヴィアに声を掛けられた。

 オリヴィアは上品な薄いピンクのドレスを身に纏っている。しかし、とても可愛らしい彼女の、強かさを隠したふんわりとしたいつもの雰囲気は、今日に限っては何処かへ行っており、有り体に言って怖い。いやすごく。


 その隣に居たスカーレットの表情もまた怖さを助長させた。


「……先日、ジャレット様の舞踏会に行かれたと聞きました」

「えっ、あ、はい。ジャレット様にお呼ばれしたので」

「何故あなたなの?」

「え?」


 オリヴィアはぎりっと歯を食いしばり、憎いのだろう、鋭い視線を私に寄越す。

 その隣ではスカーレットが腕を組んで、こちらも鋭い視線をこちらに向けている。


「何故、あなたがジャレット様と1番に踊っていたのですか!! どんな手を使ったのです! 子爵の分際で!」


 オリヴィアがスッと右手を上げた。

 あ、これ叩かれるやつだ。と何処か冷静に考えた私は、たぶん冷静では無いのだろう。

 どうすればこの状況が打開出来るのか全く浮かばないのだから。


 というか、あの場にオリヴィアは居たのか。全く気付かなかった。

 1発で終わらせてくれるだろうか。

 なんて思いながら、反射的に目を瞑り俯く。


 と、パシンっと良い音が響いた。

 響いたと言うのに、来るはずの衝撃がいつまでも来ない事に私は恐る恐る目を開けると


「シリル、様」


 そこにはオリヴィアの手を掴んだシリルがいた。

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