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ガーバー家は公爵家(返上済)でした

 午後。

 午前中だけで殆どの体力を奪われた私は、しかしお母様が呼んだ特別教師にダンスの指導を受けるため練習用の小さなホールへと向かった。


「疲れた。もう嫌。…………あ」


 廊下をヨタヨタと歩きながらホールへと向かっている最中、ふと目を向けた窓の外。

 中庭に面しているその窓にゆっくりと近寄ると、窓の外にはペンタスの花が一面咲き誇っていた。

 ピンク色の可愛い花は星の形に似ているため「希望がかなう」「願い事」という花言葉が付けられている。


「もう満開になったんだー」

「……ペンタスの花ですね。1つ1つは可愛らしいですが、この量だと圧巻ですね」


 窓に手を伸ばしながら呟いた言葉は、1人、空気に溶けて消えるはずだった。

 すぐ横から聞こえた、何処かで聞いたような声が聞こえるまでは。


「……! モーガン先生!!」


 驚いて横を向くと、そこに居たのは担任であり歴史の教科担当であり、地質マニアのモーガン・ガーバー先生だった。


「アッカーソン嬢が中々ホールに来ないのでつい」

「……え、ホール?」

「ええ。今日の特別教師、モーガン・ガーバーです。宜しくお願いしますね」


* * *


「では、ガーバー家は貴族だったんですか?」

「ええ。公爵家でしたが、俺が継ぐつもりは無く他に兄弟も居ないので返上しました」

「……公爵を返上、って」


 爵位を返上することは、実はそんなに難しいことではない。毎年、様々な理由で自ら返上したり、上から返上を言い渡されたりしてそれなりの数の貴族が居なくなっている。

 まあ同じくらい増えているから意味無いのだけど。

 しかし、1度返した爵位は2度と取り戻せない。男爵は1代限りだから例外だけど、公爵と言えば爵位の中で1番上。トップだ。


 それを易々と返上するとか、モーガン先生頭大丈夫だろうか……


「俺は元々教師を目指して居たし、家督には興味が無かったから」


 そう笑うモーガン先生に、私は「そうなんですね」としか返せなかった。


「しかし元でも公爵家で良かった。このダンス指導の報酬として炭鉱に入ることを許して貰ったんです」

「ああ。なるほど」


 確かに昨日、お父様にモーガン先生の話をした時、モーガン先生のファミリーネーム聞かれたっけ。で、モーガン・ガーバーって答えたら不敵な笑みを浮かべてたけど、こう言う意味だったのか。なるほど。


「じゃあ、まずは、」


 モーガン先生は1つ息を整え、ゆっくりとひざまずくと私の右手をゆっくりと取ると


「クロエ様、私と踊っては頂けませんか?」

「……っ。はい。喜んで」


 ふわりと微笑むモーガン先生は、そのまま私の腰へと手を回した。

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