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お着替えが楽しいのは女の子だけでは無いのです

 翌日、朝一でやってきたお抱え衣装屋のロアは早速お母様とドレスの相談を始めた。

 薄い紫の髪は腰まであり、糸のようにサラサラとしている。髪と同じ色をした紫の瞳は、この国では珍しく、幼い頃の私はロアの瞳をじっと見つめるのが好きだった。

 黒いマントとシルクハットがトレードマークのちょっと煩い25歳。


「フレッカー家の次男、ジャレッド様は髪の色が綺麗な緑だったわよね。ならフレッカー家に伺うドレスには緑を取り入れましょう。ウッドマン家の嫡男は瞳が赤よね。ジャレット様は瞳の色が灰色で、セシル様は髪が銀色だし、そうね、ゴーストホワイトを地にしましょうか」


 布の色見本を見ながらテキパキと決めていくロアは、流石と言ったところか。


 ちなみにこれで出来上がるドレスは個別ルートに入ってから招待されるパーティーに着ていくドレスのようだ。


 イベントすっ飛ばし過ぎじゃないかしら。


「あんまり媚びても気持ち悪いから、緑と赤はチラ見え程度のスカートの裏地にしましょう! 歩いたりダンスする時だけ見えるのよ。なんて素敵なの!」


 1人暴走するロアをお母様は止めもせず、たまに「クロエちゃんは瞳が翡翠色だからそれも入れて欲しいわ」なんて言っている。

 そして当の本人である私は離れたところにあるソファで既に屍である。


「翡翠を使うと赤と喧嘩するわね。……赤をレースのグラデーションにすれば大丈夫かしら」


 大きな丸テーブルの上はもう色見本だったり布見本だったりデザイン画だったりで埋め尽くされていた。

 たった2着を仕立てるだけでどんだけお金使う気なのか本気で心配である。


 うち、爵位低いからお金そんなに無いはずなのに。



コンコン。


「失礼いたします」


 するとそこに、仕事にキリをつけてレオナルドがやって来た。

 レオナルドがお母様に勝てるはずもなく、昨日、晴れてエスコート係になったレオナルド。彼の衣装も1着新しく仕立てようと言う話になり、呼び出したのだ。


「ご無沙汰しております、ロア様」

「お久しぶり、レオナルド」


 ペコリと頭を下げ丁寧に挨拶するレオナルドに対し、ロアは砕けた口調でそれに返す。

 長いこと屋敷に出入りしているロアとは顔見知りであるが、お抱え衣装屋は言わば準貴族だ。レオナルドより一応、身分は上である。


「ケイシー様。レオナルドは礼服を1着仕立てるので宜しいのよね?」

「ええ。ハンカチーフは赤と緑をこちらで用意するわ」

「ではレオナルドはひとまず寸法を測りましょう。こっちにいらっしゃい。暫く見ない間に身長伸びたでしょう?」

「……うげ。測るのか」


 苦虫を潰したような顔をするレオナルドの気持ちは良く分かる。

 うん、面倒だよね寸法測るの。そんなところまで必要?ってところまで事細かく測るから時間掛かるし。


「ほら早く。大丈夫よすぐ終わるわ」


 なんて言われてカーテンの後ろに連れていかれたレオナルドが出てきたのは、それからたっぷり30分後だった。

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