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平民執事は王道幼馴染みです

「……うわっ。んなとこで何してんだクロエ」


 父と母に挨拶を済ませ、今年のドレスの件を話していたところ、何故か中好感度で発生する、「パーティーへの招待」というイベントのフラグが立っていることを知った私は、少し疲れたと言って部屋に引きこもった。


 「パーティーの招待」というイベントの発生事態、予想外の展開なのに何故ジャレットとセシルの2人から招待状が届いているのか。

 無駄に接触せず、平均的に能力を上げ、経営学が出るを待つのが目標だったのに、何故もうイベントが発生するのか。何も考えたくない。


「レオナルド……」

「どうかしたのか?」


 部屋の隅で体育座りをして膝に顔を埋めていると、扉をノックする音がした後、断りもなく扉が開いた。

 顔を上げて確認すると、そこにはレオナルドの姿。


 カチャリ。

 テーブルの上に置かれたカップからは甘い香りが漂う。


「ホットミルク、好きだろ」

「ありがと」


* * *


「フレッカー公爵家とウッドマン侯爵家から招待状なんてすげーじゃん。まだ入学してそんなに経ってねーのに、良くそんな所のぼっちゃんと仲良くなったな」


 ホットミルクを飲みつつ、目の前に居るレオナルドに招待状の件を話すと、レオナルドは素直に感心した。


 当たり前の反応だ。侯爵も公爵も、子爵家なんぞと縁を持っても仕方がない。こちらからお呼びして来てくれれば万歳。お礼としてパーティーに呼んでくれたら万々歳。


「仲良くなった覚えは無いのだけど……」

「でも呼ばれたんだろ?」

「ええ。しかもどちらも舞踏会だそうよ」

「……益々すげーじゃん。で、エスコートはまたオリバー様か?」

「……お兄様、今年は婚約者居るし頼むのは難しいわね」

「……じゃあ誰が?」

「………………」


「貴方なんじゃないかしら、レオナルド」


* * *


「奥様! ケイシー奥様!!」


 たっぷり間をあけてレオナルドの質問に答えた私に、レオナルドは一瞬呆けた顔をしたあと一目散にリビングへと走っていった。


 バタン。


 貴族家の執事とは思えない所作でリビングの扉を開け放ったレオナルドは、そんな事気にも止めずにお母様へと詰め寄る。

 遅れてリビングに到着した私にお父様は「レオナルドに何を言ったんだ?」と聞くので、私は質問に答えたらだけです。と返す。


「今年のクロエのエスコート! 誰がやるんですか?」

「……あら、クロエちゃん。私がお願いしようとしたのに先に話しちゃったの?」


 残念そうに頬に手を当てるお母様と、血の気が引き愕然とした様子のレオナルド。そしてレオナルドが慌てていた理由が分かり納得顔のお父様。


「俺、なんですか?」

「オリバーには婚約者が居ますし、レオナルドしか居ないじゃない」


 当たり前のように言うお母様に、しかしレオナルドは声を上げた。


「なんで! どうして俺なんですか! 執事風情の俺が、公爵家や侯爵家にクロエをエスコート? 本気で言ってます?」


 うん。まあそうなるよね。

 出来るなら本人だって行きたくないよ。


「大丈夫よ。とっておきの先生を用意したから!」


 背景に花でも飛んでそうな愛らしい笑顔を向けるお母様に、私まで背筋が冷たくなったのは気のせいじゃない。

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