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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

SFロボット恋愛ストーリーシリーズ

最期に、一つだけ…

作者: 小宮 海
掲載日:2017/06/23

今回、息抜きに書いてみました。悲恋です。ところどころ、R描写があります。


 ガラガラと、落ちる音がした。


 それは、私が今いる場所が壊れている、音だった。


 私は、自分に与えられた部屋を出ようと立ち上がる。


 周りにいる女性達は不安げな顔をしながらお互いを見合わせていた。


ー…行かないと……ー


 歩こうと、脚を動かすと私の長いスカートが引っ張られた。引っ張られた所を見ると、私のスカートを握って引き留めようとする女性がいた。


 ー…私と、此処にいる女性達の中で一番仲が良かった人…

 

 綺麗で、優しくて、いつも私達を励ましてくれた、素敵な女性。彼女は、地球よりも遠いの星の王女だと教えてくれた。


「何処に行くの?」


 彼女の真剣な顔に、私は笑った。


「…行かなくちゃ、多分あの人があそこにいる。」


 少し、お店に行ってくるような感覚で言うと、彼女は顔を一層歪めて首を横に振った。


「ダメよ…行ってはダメ。もうすぐ、助けが来てくれるわ」


 その言葉に、私は理解した。


 ー…そっか、多分彼女の仲間達が助けに来てくれるのか…ー


 どうやって、それを知ったのか分からなかったけれど、きっとそうなのだろうと、不思議と納得した。


「トワ、もう会わなくとも良いの…アナタは、あの皇帝から解放されるわ…だから、一緒に助けを待ちましょう?」


 哀しげに、言った彼女は途中から、声を怒りに変えて言った。そして、私のスカートを先程よりも強く引っ張り、座らせようとした。


 私は、彼女のその行動に、苦笑を浮かべるしかなかった。 

 




 私が、此処に来たのはまだ、高校生になったばかりだった。


 その頃の地球は、まだ侵略者が現れた様子もなくて平和だった。

 私は、学校から家に帰ろうとしたとき、突然大きな物体が降ってきた。


 それが、私の今までの常識を塗り替えてしまった。


 その物体は、私達の国だけじゃなくて、世界各地に降ってきたと当時、体育館で避難していた時にラジオで聴いた。


 その物体は、地球各国に大きな損害を出した。


 各国の首都圏は、壊滅状態になり、他の町や村には建物や建築物……そして、沢山の人が犠牲になった。


 私の家族は、私以外が犠牲になった。私だけが生き残った。


 だけど、それは何も私だけじゃなかった。私よりも小さい子、年齢がお年寄りくらいの人も私と同じになって、亡くなった大切な人達を生き残った人達で泣きながら弔った。


 

 そうして、体育館に避難してきた人達と私は生きることになった。

 最初は、食料をとってきたり、協力して生きてきた。

 

 家族を思うと辛くて泣くことはしょっちゅうで、隠れて何度も何度も泣いた。


 そうして、いつの間にか手を取り合って生きてきた。


 だけど私は、あの日食料を調達し終わって、体育館に帰ると 



 見知らぬ、人達がいた。



 その人達の手には、銃のような物が握られていた。私は、その人達に気付かれたけれど、構わずに体育館を開けると




 私達を見送ってくれていた人達が動かないまま、倒れていた



 辺りを見回すと鉄の臭いがした…そして、壁に付いた手をよく見た。


 赤い血が……手の平いっぱい付いていた……


 その場で、私は気付かないうちに叫んでいた。


 見知らぬ人達に取り押さえられても、私の叫びは止まらなかった。まるで、壊れてしまったラジオのように叫んだ。



 どうして……!


 なんで……!


 なんで、こんな酷いことをしたの?!



 漸く出た、言葉にその人達は五月蝿い、黙れと言った。


 だけど、その問いかけに応えるように、空から声が聞こえてきた



『この星に住まう、地球人よ!貴様等の星は、我々、ギャラクシス帝国が支配した!!』

『下等な地球人共!この星は今から、我々の物になった!大人しく投降するのなら、命だけは助けてやろう!だが、抵抗するのならば……皆殺しにしてくれよう!』



 私は、その声を聴いた瞬間に力無く、膝を着いて泣いた。



 また、大切な物を奪われた。


 大事な人達が…死んでしまった。



 今度は、叫びの代わりに目から涙が止まらずに流れ出した。無理矢理、私は立たされて、両腕を拘束された。だけど、もう、抵抗する気なんて起きなかった。


 


 不意に、足音が聞こえた。それに反応する気もなく俯いた私は、失った物への悲しみにくれた。 


 その、足音の人が私の顎を掴んで無理矢理あげた。



 目の前には、黒い髪を真っ直ぐに肩まで伸ばし、目は鮮血を連想させる色合いだった。顔立ちは端正だけど冷たく、私を見る顔は見る人をぞっとさせる笑みを浮かべた。


「…ほう…生き残りはこの女だけか」

「……」


 じっくりと見られ、そして笑みを深めた彼は言った。  


「女、名を名乗れ」

「…斗羽…灯月斗羽」


 そして、顔を近づけた彼は私に言った。


「トワか、なるほど……我の名は、アザルス。アザルス・クルト・ギャラクシス。貴様等の星の新たな支配者だ」 


 彼が…彼が、私の家族や仲間を……  


 だけど、私は、怒りが沸かなかった。出てきた感情は、虚しさと悲しさと……どうしようも無いくらいに……こみあげた、可笑しさだった……。


 私は、その場で思いっきり嗤った。私を捕まえている人が黙らせるための言葉なんて、聞こえないくらい。目の前の、私から全てを奪った男は無表情のままだった。



 あぁ可笑しいな…私の、来るはずの明日はこんなにも簡単奪われるなんて!!

 嗤いが止まらなくて困る、どうしたら止まるの? 

 


 業を煮やしたのだろう、私を捕まえている人が私を騙すために頭を髪ごと思いっきり掴んで、後ろに引っ張る。

 その衝撃に、私は黙った。だけど、彼の目には私は泣きながら…嗤った顔が映る。


 どうせ、私は死ぬのだから、このまま殺されるんだろうなぁ


 そんな事を呑気に考えていたときだった。彼が、こう言った。


「この女を連れて行く…準備しろ」


 その言葉に、私は理解が出来なかった。


 今度は呆然とした顔を向けると、彼は



「何只の気まぐれだ。連れて行け。トワ、お前は今から我の所有物だ…せいぜい、楽しませろ?俺が、飽きるまでな?」

 


 アザルスは、そう言って部下らしき人と、その場を去った…


 なんで?なんで、殺さないの?どうして?


 口を開こうとしたけれど、私は口をハンカチのようなもので眠らされた。そして、



 目を開ければ、さっきまで居た場所ではない、何処かに私はいた。



 そして、私が彼の住処に連れて行かれたことを、あのときの会話で思い出した。


 そっか、捕まったんだ


 理解して、私は周りに私以外の女性がいることに気が付いた。  

 その人達は、皆、暗い顔や涙を流していたり、悲しんでいた。


 この人達も、捕まったんだなぁ…と思うと、静かに顔を伏せて…




 もう、流せないと思った涙が、一滴、流れた…。





 苦笑を浮かべた私を、彼女は訝しんだ。


「…トワ?」


 心配してくれている、彼女には申し訳ないけれど私は、彼女がスカートを掴んでいる手をそっと掴んだ。


「…ありがとうリラ王女、此処に来たときに、貴方は私達を励ましてくれた。私に、優しくしてくれた、私はそんな貴方が大好きです…」


 リラ王女は、目を見開いて私を見つめていた。そして、彼女と目線を合わせると私は、笑顔を作った。


「忘れてしまった物を思い出させてくれてありがとう、私を友達だと言ってくれてありがとう…私に、失った物をもう一度与えてくれた。だから、どうか、貴方の星が……再び、平和になれますように」


 本当は、リラ王女の星に行ってみたかった


 私達の違う星の食べ物も食べてみたかったし、色んな物を見てみたかった。何より、リラ王女の星の、綺麗な緑色の海も見てみたかったなぁ。


 私は、リラ王女の掴んでいた手をスカートから離すと、勢いよく、扉まで走った


「待って!?行かないで!!トワ!!」



 …さようなら、リラ王女……私の大切な、友達。



 扉を開けた瞬間、別の方向から大きな音が聞こえた


 リラ王女の言葉から、どうやら助けが来たのだろう…私は、安心して、その場から飛び出した。


彼に、会うために私は、玉座へ向かって足を走らせた。





 私が、此処が彼の住処、言うならば、ギャラクシス帝国の城の一室であることが分かった。そして周りにいる女性達は聴くところによると滅ぼされたり、壊滅させられた星のお姫様や女王様達だった。


どうやら、私だけが一般人だったようだ。


 私は、自分が地球人である事を話すと、貴方も私達と同じで人質になったのねと言われた。


 彼女達は、私とは違って、星のために人質にさせられたり、自ら人質になった人と様々だった。


 私の場合は、誘拐そのものだった。 


 彼女達と私とでは、違いすぎた事に気付いた。


 その事を話す気にもならず、曖昧に返事をした。


 私が入れられた城は、特に不便もなかった。だけど、自由もなかった。そして、此処に来てから大分たった


 ある日、私はアザルスの部下に呼ばれた。そして、彼の部屋まで案内された。

 私は、部屋に入ると、アザルスが椅子に座って私を見ていた。


 私の今の格好は、アザルスに会うために無理矢理お風呂に入らされ、簡易の白いワンピースを着せられた。


 アザルスが何も反応しない私に近付いた。


 身構えたりせずに彼が来たことを確認すると


 私を、側にあったベッドに放り投げた。


 流石に、予想が出来なかった私は、起きあがろうとするとアザルスに組み伏せられた。


 アザルスが、私の耳に口を寄せて囁いた。


「お前を連れてきたのは、面白みのある、女だと思ったからだ。さて、」


 何をされるのか分かった私は、心が恐怖に染まった。


 そして、抵抗するが、アザルスはそれを物ともせずに、私が着ていたワンピースを引き裂いた。


「いやぁぁ!!何するのっ!?」


 私の悲鳴にアザルスは楽しそうな顔で笑った。



「トワ、楽しませて貰おうか」



 其処からは、私は覚えていることは、痛くて辛くて……何より久し振りに感じた、悲しみだった



 自分の麻痺していた感情を無理に起こされた私は、ただアザルスに与えられる事に涙を流しながら、耐えるしかなかった。



 目を開けて、体を起こすと体に残った痛みに顔をしかめた。そして、歩こうとした時に体の所々に…噛んだ後や、赤い跡を見つけて昨日のことを思いだした。



 私は、好きでもない男の人に抱かれた。しかも


 よりにもよって、家族や仲間を殺した相手に



 その事実に、私は、胸が張り裂けるような気持ちになった……。


 初めては、いつか好きな人がいいよね 


 もう、此処にはいない友達の何気ない会話を思い出した。

 

 そして、今度は家族を失った時以来に声を上げて、自分を抱き締めて泣いた。




 私は、また一つアザルスに奪われたのだった。




 激しい音が聞こえる。多分、玉座まではまだ少しかかるのに、こんなに大きな音をするのは、きっと戦っているからだ。


 走りつづけて、息が上がる。私は、少し立ち止まって肩で息を整えた。 


「全くもう、広すぎるよ…」



 そういった私は、多分笑っているんだろう。そして、再び走った


 この広い、お城ともお別れなんだなと思うと、不思議な気持ちになる…


 確かに、良い思い出なんてないし、只、崩れるのも時間の問題なんだろうなと思ってしまう。


 だけど、 


「崩れる前に……会いたいな」


 貴方に、会いたい…どうしても、会いたいの。





 そして、私がアザルスに初めて抱かれてからというもの、私は、定期的にアザルスの部屋に連れて行かれては夜を共にされることを強要された。


 そして、起きあがる度に、私は…彼がつけた跡を見て思い知らされる


 その日は、私がアザルスに呼ばれない日だった。そして、新たな人質が来てしまった。



「離しなさい!無礼者!その手で私に触らないで!」



 綺麗な、澄んだ女性の声に私は、体を起こした…。


 目の前の女性は、まるで物語に出てくるような…女神様か聖女様のようだった。



 彼女は、私よりも少し年上のようだった。


 髪は、月の光のような銀色で


 目は、強い意志を宿した、だけど、宝石のような緑色で…


 肌は、真珠のようで


 そんな、美しい人が、私達の目の前に現れたのだ。


 彼女は、私達を見回すと険しい顔つきで兵士に睨んでいた。



「あなた方は…よくも、こんな非道なことが出来るわねっ!彼女達の星を滅ぼしただけでは飽きたらずこんな場所に閉じこめるなんて!」


 そして、私の側まで来ると私の顔を躊躇うことなく、触れた。その顔は、先程の怒りに染まった顔ではなく、慈しみに溢れた…労るような、優しい顔だった。


「こんなに窶れて…本来なら、貴方はまだ庇護を受ける身でしょう」


 自分のことのように、親身になってくれる彼女は、とても、優しい人なのだろうと分かった。



「…私を、捕らえただけで、勝てるとは思わない事を、アザルス・クルト・ギャラクシスに伝えなさい」



 私から、兵士に視線を移した彼女は、宣言した。



 彼女は、その後…この部屋で私達と暮らした。


 彼女とは、その日に自己紹介をした。


 彼女、リラ王女は地球よりも遠い星から此処に連れてこられた、ライラック星のただ一人の王女様だと聴いた。


 リラ王女は此処に連れてこられる前に、ギャラクシス帝国に自分の親類や臣下を自分以外殺されてしまったと話した。


 リラ王女は、その中でも姉妹のように育った侍女が庇ってくれたお陰でこうして生きていると言っていた。


 だけどリラ王女は、その後、侍女の一人の決死の覚悟で何処かの星に飛ばされたらしい。


 その星が地球だと教えて貰って驚いた。


 リラ王女は、自分が此処の星ではない異星人だと話した上で、地球にもいずれ、ギャラクシス帝国が来ることを話したそうだ。



 だけど、誰も本気で信じて貰えなくて…それでも、この地球をライラック星のようにしたくない一心で、必死に訴えかけた。



 その訴えが聞き届けられたのか、ある組織がリラ王女の言葉を信じてくれたらしく、その組織にリラ王女は一か八かで自分の知る限りの事を話した。



 その組織は、リラ王女の言葉を信じてくれたのか、直ぐに対策に乗ってくれた。


 リラ王女の乗ってきた物がギャラクシス帝国を倒す、武器である事で、乗り手を探すことにしたが、その組織の全員が、適性がなくリラ王女は組織の力を借りて、戦おうとしていた。



 だけど、ある日その力を扱える人が現れたのだ。



 その人が乗ると、リラ王女が乗って戦った時よりも一段と早く行動に移せた。



 そして、勝利したのだ。

 


 だけど、その人は私と同じで一般人だったらしく、リラ王女は彼に強制することはしなかった。


 組織は、彼に戦わせたがっていたが、無理に戦わせたくない彼女の言葉でこの場を納めた。

 


 彼も戦いたくなかったようだったけど、結局いろいろあって一緒に戦うことになった。



「初めは、やはり喧嘩ばかりしていたわ…だけど、それでもなんとか勝てていたの…だけどあの日、」



 リラ王女が連れて来られたあの日、あの時彼と二人で戦ったものの……戦った相手が、あの…アザルスだった。



 アザルスは、負けた二人を嗤いながら彼から引き離されたらしく、リラ王女は悲しげに曇らせた。


「あの時、私がもう少し、しっかりしていたら」


 私は、この話を聞いて自然と彼等に守られていた事に気が付いた。


 アザルスに負けたその日に、私達地球は大打撃を受けてしまった


 そして、ギャラクシス帝国の物になってしまった


 だけど、私は責める気持ちはなかった。だから、



「ありがとうございますリラ王女…地球の為に、頑張ってくれて」


 お礼を言ったら、彼女は首を振った。


「いいえ……いいえ!私が、もっと…もっとしっかりしていれば…!そうすればっ、ライラック星のようにならなかったはずです」


 責め続ける、彼女の手を握って私は言った。



「それでも、貴方は自分の星のように…ならないように地球に呼び掛けてくれた、戦ってくれた。だから、責めないで下さい…本当に、ありがとうございます」


 彼女は、私に抱き付いて、涙を流していた。


 ありがとう、ごめんなさいと繰り返して言いながら、私は彼女を抱き締めた。


 そして、私は何日かリラ王女と色んな話をしてくれた。


「地球の食べ物には驚いたわ……特にミソシル?だったかしら?不思議な味で気に入ったわ。野菜と魚貝類が入った時じゃ、味が違うことに驚いたわ。それに、オコメも、味がしないのに不思議とたくさん食べたくなる。ライラック星とは違ったわね」


「地球の海は、綺麗な青だったわね…まるで、空の色を移したような、素敵な海…私達の星はね、空は緑色で、海も緑色なの…とても綺麗なの…」


「トワは、好きな動物はいるかしら?私はねあの…ネコという生き物が一番好きかしら?あれに似た生き物はいたけれど…とても大きかったわ…可愛いわよね…ネコ…でも、少し気まぐれね。頭を撫でろって催促してきたから撫でてあげたら直ぐに何処かに行ったわ」


 リラ王女の、地球での出来事を聞く度に懐かしさと、ライラック星の事を教えてくれる度に、地球との違いに驚いたりした。 


 表情を変える、彼女はとても魅力的で、私は彼女が大好きになった。


 彼女の、希望を捨てないその姿が眩しくて綺麗で目が眩みそうになる。


 この前も、悲しみに暮れた姫の側に着いていた。


 先週も、ストレスの溜まった女王に当たられたとき、彼女は黙って聞いた後、宥めていた。


 彼女は、本当に優しくて誰よりも強い、女性だった


 私は、そんな彼女に忘れていた物を思い出していた。


 ある日、私はアザルスに久しぶりに呼ばれた。時間は夜だった。


 リラ王女は、心配そうに私を見てきたけれど大丈夫と言って……その部屋から去った



 久しぶりに来た、アザルスの部屋は綺麗なままだったけれど、彼自身は不機嫌だった。


 多分、リラ王女の言っていた組織に痛手を負わされたのは分かった。


 私が連れて行かれる最中、そんな事を耳にしたから。


 彼は、苛立ち紛れに私の手を強引に掴むと、その捕まれた手を顔まで寄せて、私の腕に容赦なく噛みついた。


「………っ」


 思いっきり噛みつかれて顔を歪めれば、彼は少し満足した様子で、だけど次の瞬間、私は乱暴にベッドに放り投げられた。


 そして、覆い被さる彼に抵抗はせずに…されるがままになった。


 希望を持った彼女と、絶望を手に入れた私では違いすぎた。


 彼を見れば、変わらずに不機嫌な顔で私の首を噛みつく。そして、ワンピースを脱がされた。


 そして、一方的な行為が始まることを覚悟し、目を閉じた。


 だけど、何時まで立ってもそれが行われなくて…目を開けた。



 目を開けたとき、彼は戸惑っていた。


 私は、彼を見つめてその顔に触れるために手を伸ばした。


 その顔に何故か、触れたとき…彼が私の手を握りしめた。


「…何故だ…」


 何故?自分でも、分からない……ただ、始めてみるその顔を、触れてみたかった。

 彼は、言葉を続ける。私は、彼の顔に手を添えたまま


「…何故、お前達地球人は、抵抗する…何故、異星人である者達を受け入れて…共に戦う」


 どうやら、話の内容ではリラ王女以外の異星人もその組織にいるようだった。


「……お前は、お前達は……何故」


 其処までいうと、私の添えた手を自分の手で握りしめた。


 理解できないことへの、苛立ちと彼の悲しみをみた気がした。だから、私は答えた。


「抵抗するのは、何かを守るため。受け入れるのは同じ傷を受けた人達の優しさと信頼。共に戦うのは…その人達が同じ気持ちだから…」


 それが、私なりの答えだった。その言葉を聞いた彼は、更に顔を歪めた。


「理解が出来ない…」

 

「…だけどもっと深いところに踏み込むと…きっと、彼らは仲間を求め合ったから……同じ、心を持つ仲間を求めて…そして、漸くで会えたから……貴方に、抵抗するの」


 これが、私に出来る精一杯の答え。


 目を見開いた…驚いた彼を見た私は…何故か、凄く満足した。


 あぁ、私でも彼を、そんな顔にさせられるのか。


 私の大切な物を何もかも奪い尽くしたアザルスにそんな、答えを出したのか分からなかったけれど、今なら分かった。


 これが、私なりの彼に対する精一杯の…抵抗だった。


 暫く、お互い見つめ合ったけれど、アザルスはそのまま、私を抱いた。


 だけど、その行為は今までの一方的に奪い取るような行為ではなく、私に求めるような…行為だった。


 顔を見れば、顔をしかめながら私の肩に顔を埋める。腰に回された手はいつもなら両手を拘束するのに、今は私を離さないとばかりにキツく回されていた。


 掻き抱かれながら私は、不思議な満足感と、少しの幸福感の中で意識を手放した。


 意識を手放す、その間際


「……トワ……」


 私の名前を呼ぶ声が、聞こえた





 走りつづけて私は…漸く見えてきた玉座の間に着いた。


 玉座の間は、いつも其処にいるであろう臣下も彼もいなく、ただ、広い空間の中にポツンと彼がいつも座っている、赤い椅子が置いてあった。


 その椅子に近付いて、私は椅子に座り込む事はなく、その椅子の足に体を預けて、目を瞑った。


 此処で待っていれば、恐らく彼が来るんじゃないかと…根拠もないのに、そう思った。


 大きな音は、まだ止まない。この城も何時崩れても可笑しくはないのに


 私は、ただ、彼が此処に来ることを待ち続けた



 


 あの、彼に問われた日から私への扱いが変わった気がした。


 相変わらず、アザルスから私は呼び出され、相手をさせられるけれど…以前のような、奪うような感じではなく何かを探るような、ともすれば、私に何かを求める感じだった。


 私は、彼がどういう心境なのか、さっぱりだった。


 私に、何故アザルスは求めるのだろう?アナタは、散々私から全てを奪っていったのに


 もう、私から奪うものなんて、無いはずなのに


 そう考えて、私はあてがわれた部屋でぼんやりと考えていた。


 此処にいる皆は、同じ境遇からかお互いを慰めたり、時には喧嘩もするけれど特に、問題はなかった


 ただ、私が定期的にアザルスに呼ばれて、私が彼にされていることを…感づいているのか、彼女達は、当たり障りなく接してくれた。言葉は悪くなれば、腫れ物を触るような感じだけれど、私は特に気にもせず、彼女達なりの気遣いに感謝さえしていた。


 ある日、アザルスに私ではなく、リラ王女が呼ばれた。


 リラ王女は、それに強い意志を込めて、兵士達に連れて行かれた…


 そして、私は悟った


 彼は、今度は私から、友達を奪っていくのかと……私の、優しくて綺麗な友達を


 そこまで考えて、今度は顔を覆った


 彼は、私に遂に飽きて、彼女を抱くのかと思うと



 凄く、悲しくて嫌な気持ちになった。



思えば、彼がいつも呼ぶのは私だけで、他の人達が呼ばれたことはなかった。

 

 それが、リラ王女になった時、私は、胸が張り裂けそうになった。



 どうして、彼が他の女性に抱かれるのをこんなにも嫌がるのか…あの時の私は理解が出来なかった。



 そして、今度は私がアザルスに呼ばれた。多分、時間なのだろう



 アザルスの所に行く時に、不思議とリラ王女とすれ違うことはなかった。




 そして、アザルスの部屋に着くと彼は愉快そうに笑った顔をしていた。



 その顔を見て、多分私よりも、綺麗なリラ王女を抱けたのが…そんなに嬉しかったんだろうなという気持ちでいた。


 そう思ったら、胸の中が痛くて痛くて仕方なかった。


「先程、リラ王女と共にいたが…あの、気丈な王女があんなに取り乱すとはな…実に見物だった」


 きっと、彼女は強引な行為にとても、辛い思いをしたんだろう…そう思ったら、私の心は、痛み始めた。




「お前を、定期的に慰み者にしていることを話したら、目を見開いて、その後は殺すほどの殺気で、ありったけの罵声を浴びせてきた。しかも、泣きながら……いつも、気丈な姫があんなに辺りを構わずに、取り乱すのは……愉快だった」


 

 その言葉に、弾かれたように顔を上げた


「まぁ面倒なことになる前に…退室して貰ったがな…さて」


 そういうと、私の側に近寄ってきたアザルスは、私の顎を掴んで、顔を向けさせた。


「あの王女は、お前のことを大切にしているようだ……だが、大切にしていた者が既に汚されていた事にきっと絶望しているだろうな」


 その赤い目は、何処か、狂気を孕んでいた。そして、こういった。


「トワ…今の我は、気分が良い……今なら、お前の願いを叶えてやる」

「……願い?」


 何のつもりなんだろう急に、そんな事を言い出した彼に私は疑問を感じた。


「あぁ…だが、お前を解放するというのは無しだ…お前は所有物…それの範囲を超えなければ、叶えてやる」


 本当に、彼は叶えるつもりなのか、疑ったけれど…それなら、私が彼に願うことは一つ


「…私以外の、此処にいる女性達……特に、リラ王女には私にすることをさせないで下さい…酷いこともしないで……それを、叶えてくれたら後は、何も入りません」



 アザルスは、その言葉に驚いた顔をした後


「あぁ……その願い、了承しよう」



 私は、その時彼の嬉しそうな顔を見て良かったと、思った。


 私が、リラ王女や他の女性達に酷いことをして欲しくないのは本当だ。彼女達は、私を気遣ってくれたし、私が部屋に戻るといつも心配そうに見てくれた


 リラ王女も、私にとってとても大切な友達だし、何よりあんなに何もかも、綺麗で素敵な人を同じ目に遭わせたくない。



 でも、それ以外にも私は、心の奥でもう一つ、思っていた



 彼に、私の知る所で、私以外を抱いて欲しくないとそんな、当時では分からない感情があった。


 一通りの事が終わり、私が部屋に戻ると、リラ王女が気付いた


 リラ王女は、泣きそうな顔をした後、なりふり構わず私に抱きついた。


 私の首に付いた情事を示した赤い跡を見て、更に、強く肩を震わせ、口からはしゃっくりの音が聞こえ、私の着ていた服は、涙で湿ってくる。


 この光景に、私はリラ王女を宥めるために、背中をさすって、周りをみると


 皆も…特に、リラ王女に宥められた女王様は、俯いて拳を握り締めて、慰められた姫は、可愛らしい顔から涙を流していた。


 それを見て、他の皆もそれぞれ、似たような反応だった。


 私は、此処にいる人達が私に対して心から心配して、気にしていることに、感謝して


 アザルスに取り付けた約束に、良かったと心から思った。

 

 そんな皆に、彼女を抱き締めたまま笑いかけた。




 玉座の間に、私以外の誰かが来たことを察して、目を開けた


 体を預けていた、椅子から座ったまま見回すと


 玉座の間に、大きな黒い物が落ちてきた。


 激しい音に私は、その、黒いロボットを見つめた後、それを上から来た対になるような白いロボットが舞い降りてきた。


 墜ちてきた、黒いロボットが悪魔ならば


 舞い降りた、白いロボットは天使のようだった。


 黒いロボットは、自分の体格と同じくらいの大剣を支えて立ち上がり、白いロボットは、西洋の騎士のような剣を持っていた。


 お互いが、先程の激しい戦闘での音の主だというのが分かった。


『アザルス!!お前が今まで虐げてきた人々の報いを受けろ!!攫われ、深く傷付き…罪無き人々を殺し……悲しみと恐怖を与えたお前を俺は許しはしない!!』


 強い、決意と意志を持った男性の声が聞こえた。


『……そして、お前が攫った俺の大切な……リラを返して貰う!…構えろ!アザルス!!これが、最後の決着だ……!』


 彼は、そういうと剣を構えた。


 私は、彼がリラ王女の大切な恋人だということを知った。


 前に、彼女は言っていた。彼が、その武器を操れる人だと…そして、初めてあって、暫くしたときに話してくれた…。


ー…いろいろあったんだけど…私ね、彼と恋人同士になったの…ー


 照れ臭そうに笑った、彼女の顔を思い浮かべて私は笑った。


 リラ王女…あなたの恋人は、きっと真っ直ぐな人なんだろうね…だって、貴方を取り戻すために、必死で戦っているもの


 そんな彼女に、私は羨ましく思った。




 私が、此処に来て三年、リラ王女が来て一年がたった。


 相変わらず、私はアザルスと変わらない日々を過ごした


 リラ王女は、アザルスの所に行かない時は手を握っていつも一緒に眠った。


 女王様は、何も言わずに私の側に来るようになったし、姫様は、私とたまに話したりするようになった


 そんな、些細な変化はアザルスにも現れた。



 私を奪い取るような行為から、求める行為に変わり、最近では私とそのまま朝まで過ごすことになっていた。  


 今までは、終われば私はそのまま返されていたのだけれど、此処最近では、私に抱きついたまま眠るようになった。


 行為の方も、初めより何だか優しさがあるように感じられた。


 私は、目を開けたとき、初めて彼の寝顔を見た。 


 いつもの、人を見下すような表情ではなく何処か、あどけなさが残るその顔に思わず、そっと触れた。



 あの夜の問答以来、触っていない彼の頬を優しく触る。


 その頬は、暖かく…私は手を離すのを躊躇った。そして、充分触って満足したので、手を離すのと同時に彼が、目を開けた。


「……………」


「おはよう、ございます…」


 起こしてしまったのか思いつつ、ぎこちなく挨拶すると彼から反応はなく、変わりに私を抱き締めて私の肩に擦りよってきた。



 髪が揺れる度にくすぐったくて、たまらず身を捩れば彼は気に食わなかったのか更に力をいれてきた。


「逃げるな」

「…くすぐったいんです…」

「知らん」


 ふてくされた子供のような反応に、私は困ってしまう。溜息を付いて、諦めてじっとすれば、満足したような反応をしてアザルスは離れた。


 離れた、温度を寂しく思いながら私はもう朝だと知って、部屋に戻る準備をする。


 この時から、私は多分……彼に惹かれていた。


 部屋から出ようと、扉を開けた…その時、


「……トワ……暫くは我は、戻らん」


 その言葉に、足が止まった。



 何故、わざわざ私にそんな事を言ったのだろう…


「……だから、この部屋に戻ることも少なくなる…」


 その、声色は寂しげに聞こえた。だけど、私は何も言わずに部屋に戻った。



 戻る途中に、彼から言われた言葉が離れなくて…私は、その頃は、どうして部屋に戻ったのか覚えていない。



 そして、彼の宣言通り…私は呼ばれることはなかった。




 二つのロボットが、再び玉座から離れて空に上がり剣戟が聞こえた。多分、また、激しい戦闘が始まったんだろう。


 彼等が上がった、空を見上げて動かないでいた。


 何処か、遠くでも戦いの音がした。そして、再確認する。


 リラ王女の言っていた組織は、今日、此処でこの城を落とすのだろう。


ー…あぁ……本当に…この城は、終わるんだね……ー


 そして、突然開け放たれた扉を、対して驚きもせずに見た。其処にいたのは


「……トワ!!」

「……リラ王女」


 

 追いかけて、息を切らしたリラ王女がいた。


 リラ王女は、もう崩壊しても可笑しくない玉座の間にゆっくりと歩いてきた。




 彼に呼ばれることがない日々が続いても、リラ王女は私の側から離れないようにいた。


 私は、その日は、此処に来てから暫く見てなかった悪夢に魘された。

 

 

 それは、此処に来る前の、私。


 最初は、お母さんにいってらっしゃいって言って、学校に行く。


 学校では新しい友達といろんな話をして、授業では当たらないように友達とこっそり目配せして、お昼には一緒にご飯に食べる。


 そして、下校の時にあの時の光景が蘇る。



 急いで、家に着くと家があったのか分からないくらいの惨状に、お母さん達がいないか探す


 お父さんは、お母さんを庇って既に頭から血を流して息をしていなかった。お母さんも、目を見開いてそのまま、曇った眼をしている。


ー…斗羽ちゃん…誕生日おめでとう…ー


ー…今日は、レストランで祝うから、寄り道しないで帰って来いよ…ー



 今日は、私の誕生日。お父さんは、私のためにレストランで三人で誕生日を祝うために早く帰ってくるって言っていた。


 二人を見て、触るけれど段々、冷たくなる肌に私は、家だった物の前で、座り込む。



 そして、涙を流した



 それから、私を見つけてくれたお爺さんが、声を掛けてくれて、あの、体育館に行った。


 お爺さんも、あの時…奥さんを亡くして生き残りを探していたらしい。


 私は、お爺さんの手と繋いで途中で大声で泣いていた子供を連れて、体育館に行った。



 体育館で、自衛隊が来ることすら困難だと聴いて落胆したけれどリーダー格の人がそれなら此処で暮らそうと言う声に、皆頷いた。



 最初に、文字が書けるだけの石に自分の亡くした人達の名前を書いた。


 隣のお爺さんは、奥さんの名前を、泣いていた子供は、両親の名前と多分、ペットだと思う名前を


 私は、お母さんとお父さん。それから、友達の名前を書いた


 私達が来る途中に、私の友達がまだ学校で部活をしていて…それに巻き込まれて…全員、死んでしまった。


ー…おめでとう!斗羽…ー

ー…明日、プレゼント持ってくるよ~…ー



 その、まだ現実を受け入れられない私は涙を流しながら、友達の名前を書いた。


 震えて、書けなくなった私に気付いた女性……彼女は、婚約者を亡くしていた……私を何も言わずに抱き締めてそれになんとか全員書けて、簡単なお墓を作った。



 そして、体育館で暮らし始めた。


 体育館の暮らしは、大変だったけれど…だけど、不謹慎かもしれないけれど楽しかった。


 リーダー格の人が、困っていたらすぐに来てくれた。


 婚約者を亡くした彼女とは、一緒におばさん達と料理した。


 泣いていた子供は、私や生き残った子供達と遊んだ。


 お爺さんは、私が泣いていると黙って暖かい飲み物を内緒でくれた。


 私達は、揉めたりしても…なんとか生きてきた。


 だけどあの日、私が食料を探すために体育館から出て行く日


『斗羽ちゃん、本当に一人で大丈夫?私も行こうか?』


 その日は、皆忙しくて私しか、動けなかった。だから、私が行くことになるのは当然だった。


 子供達も、今日は色んな大人の手伝いで慌ただしく動いていた。だから、彼女の言葉に首を振って


『大丈夫です。それに、往復すればこれくらいへっちゃらです』 


 その言葉に、心配そうな彼女に言って私は、


『行ってきます』

『行ってらっしゃい』


 言葉を交わして、出掛けた。 


 思えば、これも私が学校に出掛けるときの再現のよう。


 そして、最初の食料を手にして戻れば


 

 さっきまで、生きていた彼等が何も言わない…体育館の中で血を流して倒れているのを見た



 その中には、私達のリーダー格の人や、私を見送ってくれた彼女、一緒に遊んだ子供達、料理もしたおばさん達…そして、



 私に声を掛けてくれた、お爺さんがお母さんの時と同じような眼で動くことがなく、倒れていた。



「い……いやぁぁぁぁぁ!!」


 私は、飛び起きて頭を抱えるように叫んだ。


「トワ!?」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!」


 あの時、離れてごめんなさい!


 私だけが、いなくなってごめんなさい!


 私だけ……私だけが!


「落ち着いて!トワ!!大丈夫だから!!」


「私だけがっ生き残って……ごめんなさいっ!!」


 それだけ言った後、私は、意識を失った。



 私は、そして思い出した。



 私は、あの時虚しさと悲しさと……どうしようもない可笑しさとともに…それ以上に……




 彼を、憎んでいた事を……





 今、玉座の間では私とリラ王女がお互い向き合っている。リラ王女は、玉座の側の私を見据えて、真っ直ぐに歩いてきた。


「…リラ王女、危ないから此処から離れて…」

「…貴女も、私と共に来るのなら離れるわ…」


 彼女のその姿に私は、また、苦笑をしてしまう。


「…この玉座の間はいつ崩れても可笑しくないの…だから…」


「そうね…だけど、トワ…危ないのは貴女も一緒よ…」


 リラ王女の瞳は、私を強く見た。そして、


「トワ、お願いだから私達と一緒に来て」


 その瞳は、泣きそうな顔と共に涙を作った。私に向かって差し伸べられた手を見て私は玉座の階段を下りた。だけど、


 その手を取らなかった。


 上では常に戦闘の音が響いている……私が横に首を振れば、眼から溢れた涙が一層溜まる。


「……どうしてっ」


 私は、その答えを言った。


「……私が、アザルスを憎んでいるから……私の、大切な物を奪ったアザルスを心の底から憎んでいるから…」



 初めは、私の日常を


 次は、私の家族と友達を


 その次は、生き残った仲間を


 そして、私の自由を


 最後に、私の純潔をアザルスは奪っていった。



 眼を閉じれば、私の当たり前だった、当たり前になった日々が思い出される。


 大切な、本当に大切な人達の優しい顔や、笑顔が頭の中でいつも繰り返しては消える


 本当なら続く筈の毎日が、突然奪われた


 だから、彼のことは憎くて憎くて……仕方ない……。


 ずっと、心の底から殺したいくらい憎い相手だ。


「…それならっ!尚更っ!」

「だけど」


 だけど、殺したいくらい憎い相手と思うのと同時に私は、彼のことを…



「私は、アザルスの事を……いつの間にか……憎しみと同じくらい……好きになっていた…」

「え……」



 リラ王女は、目を大きく開けた。


 だから、私は彼女に言いたくなかった…絶対、傷つけるから…だけど、一度話せば止まらなかった。


「…おかしいよね…私のものを全て奪っていったアザルスを好きになるなんて…だけど、止まらなかった……こんなに、憎いのに……自分の手で、殺してしまいたいくらい……憎くて仕方ないのにっ……」


 途中から、私は涙を流していたけれど、構わずに言い続けた。


「トワ…」



「それなのに…私は、好きになった……アザルスを……彼を……」


 耐えきれず、私は手で顔を覆った。目の前のリラ王女は何も言えないで立ち尽くしている。


 

 その時、私の後ろではもう一度大きな音がした。


 その音が原因なのか、天井の壁が私とリラ王女に降り注いだ。


 私は、リラ王女を庇うために駆け出そうとしたけれど


 『リラ!!』


 白いロボットがリラ王女を寸でで助けたので、大事には至らなかったことに安堵した。


 私は、奇跡的になんとか外れたと思ったけれどすぐに違うと思い直した。



 「……アザルス」



 アザルスが、その黒いロボットで私を庇っていた。黒いロボットは、見たところボロボロで、よく見ると凶悪な顔をしていた。私は、後ろにいるリラ王女を見た。


 リラ王女を、白いロボットに入れようとしたのは、私よりも少し年が上の人のようでリラ王女を中に入れた後、閉まる直前に見た彼はリラ王女を安心したように抱き締めてきた。


 いいな


 場違いにも、そんな事を思った私は再びアザルスのロボットに向き直った。


『……何故、貴様は此処にいる』


 その声は、怒りを含んでいた。……その様子に笑いかけて、


「……貴方に、会えると思ったから」


 自然と口が言葉を紡いだ。




 最後に会ったのは、一ヶ月前だった。


 私は、あの後錯乱したことを皆に謝って、リラ王女は私をよりいっそう側から離れなくなった。

 

 そして、久しぶりに会った彼は、私を何も言わずにそのまま押し倒した。


 その、動作は初めて抱かれたあの日と似ていた。


 彼は、私を静かに見つめ、私は彼を見つめた。


 思い出した憎しみは、私の心を支配した。黒く黒く、染まる。


 だけど、それと同じくらい募るのは……愛しさだった



 何故、地球や色んな星を壊したのか


 何故、そんな事をしたのか


 どうして、家族や仲間を殺したのか


 そんな事をしなければ、私は貴方を……純粋に、好きでいられたのに……


 愛せば愛すくらい…憎しみが深くなり私を壊してくる。


 憎めば憎むくらい…貴方のしたことを責めてしまう。



 それが、どうしようもなくて…仕方ないことで…彼にとって必要な事なのかもしれないけれど、私はもう心が耐えきれなかった。


 愛しさと憎しみで、壊れてしまうくらいならいっそ、



「……私を殺して…」



 私の言葉に、アザルスが大きく反応した。


「なに…?」


 もう、これ以上壊れたくなくて彼に懇願した。


「…私は、もう耐えきれない……だから、お願い……殺して…」


 苦しい…辛い……痛い……悲しい……


「…殺してくれないなら死なせて…」


 貴方への思いで…壊れてしまう



 貴方が憎くて/愛おしくて


 貴方を殺したくて/死にたくて


 貴方を傷つけたくて/大切にしたくて


 そんな、矛盾した考えが私の中でせめぎ合う


 眼を閉じて、流れてくる涙は彼に両手を捕まれていて動けずにそのまま流れる。



「断る」 


 

 アザルスの言葉に私は目を開けて、どうしてと言う時間さえなく……



 私の目を口付けた。私は、何が起こったのか分からずに、彼を見つめると



「貴様を殺す、死なすは貴様が決める事じゃない……我が決めること…貴様は、我の所有物だ……故に、そのような事は認めない」


 その言葉、残酷と言えば残酷なのに、今まで一番……とても優しい声だった



「だから、その願いは聞かない……トワ、お前の命は我の物…だからこそ殺したりはしない」


 そういって、両手の拘束を解いて私の服を脱がし始めた


「っ………!」


 首に、口付けられほんの少しの痛みを感じた…彼を見れば、目を優しくさせていた。


 自由になった両手は、彼を拒否せずに彼の服を掴んでいる。


「堪えきれない…?それがどうした……堪えきれないなら」


 翻弄され、既に抵抗が出来なくなった私に、アザルスは言った。


「壊れてしまえ…壊れても、飽きさせないならそれでいい…お前は、壊れても俺の物だからな」


 その言葉で、私の心はいっぱいになって、それを抑えるために必死で、彼の身体にしがみついた。だけど、与えられる快楽や全てに堪えられなくなり


「んっ………あぁっ…!アザ……ルスッ!」


 初めて、この行為で彼の名前を呼んだ。彼は、それに反応した後、嬉しそうな顔して、私をその腕ごと包んで


「……トワッ……」


 耳元で、今まで一番優しく囁いた。


 指をお互い絡めて…私は、それで自分が満たされていくのを感じながら



 もう一度、涙を流した。



 これが、彼と最後に会った記憶。多分、本当の意味で彼と心も体も重ねられた、日


 その後は、この日までずっとあの部屋にいた。そして、今、私は、彼と久しぶりに会えたのだ。




「貴様は何を戯けたことを」


 驚いているのか、呆れているのか…彼の声は焦りが見えた。


「本当だよ」


 笑って見せたけれど彼はどう思ったのか


 私の視界では、白いロボットが此方を見つめていた。


『トワ!』


 声からは、リラ王女のだと分かる。そして、もう一人の声も聞こえた


『リラからさっき聞いた……君が斗羽さんだね』


 その言葉に頷けば、彼は


『俺は、君と同じ地球人だ…君を保護したい…此方に来て欲しい』


 白いロボットが、優しく私に向かって手を伸ばす。目の前の、アザルスのロボットは多分、さっき私を庇ったから、限界が来たのだろう…どこもかしこもバチバチと配線が火花をたてた。


 それが分かっているのか、それ以上の攻撃を加えない事を証明するために剣を戻して私に近付いてくる。


『貴方の名前は?』


 私は、彼の名前を教えて貰うために聞いた。


『俺は、カケル…光陽 翔留』

『私は、トワ…灯月 斗羽』

 


 もし、彼とリラ王女にもっと早く会っていたら、私はどうしていたんだろう。


 きっと、二人の側で特にリラ王女の応援をしながら、私は翔留さんと仲良くなって、リラ王女の恋を応援して…それから暫くしたら私も普通に恋をして、幸せに慣れたのかもしれない


 ふと、其処まで考えて私は笑った。


 そして、私は彼に向かって首を横に振った。


 多分、翔留さんは驚いたのかどうしてと聞いてきた。


 リラ王女は、私に懇願するようにトワと呼んだ。


「リラ王女、さっきも言ったとおり、私はアザルスの事を憎んでる。だけど、同じくらい、好きなの」


 私の言葉に、アザルスまで驚いた声を上げて少し笑ってしまう


『…君は…』


 翔留さんは、何かを言い掛けながらも私に差し出す手を下げない。


 この城全体が、もう持たないのだろう…あちこちで大きな音が聞こえる


 早く、この二人を脱出させなければ


 私は、そう考えてどうすればいいか考えようとしたら…



 もう、動かないはずのアザルスのロボットが…大剣を思いっきり振り回した。


『アザルス!』


 そして、大分私達と距離を開けた翔留さんが再度、私達の元に行こうとするけれど、今度は、その衝撃で天井の壁が割れて此方に来ることが不可能になる。


『貴様は、本当に……馬鹿だ…』


 アザルスは大剣を床に置くと私をすくい上げた…そして、



 私を、アザルスのロボットの中に入れてくれた。


『アザルス!貴様!』

『この女は我の……俺の物だ…お前が好きにしていい女ではない。早く、去れ』


 私は、彼に抱き締められながら、最後に私の大切な人に向かって言った。


『これで、本当にお別れだよリラ王女…今まで本当に、ありがとう』

『……ト……ワ……!』


 多分、泣いている声に、私は最後の言葉を……アザルスに対する思いを言った。

 




『私はアザルスの事を殺したいくらい、憎いけれど……死にたいくらい……愛しているの…』







 その言葉を言った後、今までよりも大きな音が当たりを響かせ…遂に本格的に崩壊を始めた。



 私の言葉が、届いたのかは分からない…だけど、伝えられて良かったと思った。


 私は、あの手を取れば保護されてきっと良くしてくれるのだろう。何せ、リラ王女がいるところだから


 でも、その手をとる気はなかった


 だって、私は裏切り者だ。



 アザルスはいろんな人々から次々と奪っていった、許されない人…だから、そんな彼を憎みながらも愛してしまった私も彼の共犯者のようなもの。そう、想うことにした。


 私は、アザルスの方へ振り返れば未だに呆然としている彼の唇に、



そっと、口付けた




 私が離れようとすると、頭に手で抑えつけられ私がした口付けよりも、長く激しく口付けた…。



 息継ぎが出来なくて、苦しさに服を引っ張れば離され思いっきり、抱き締められた


 強く、優しく抱きしめられた私は、荒い息を起てながらも、彼の胸に甘えるように頭を擦り付けた。


「……お前というやつは」


 呆れたように、苦笑した彼に私は、


「…今まで、貴方に奪われてばかりだったから…私から、最期に一つだけ、奪っても良いと思ったんです…」


「…そうか…」


 特に、何も言わない私達は、もう、まもなく崩れ落ちる玉座の間で永遠のようで、刹那の時を過ごした。



 私達はもうすぐ死ぬのに、こんなに穏やかで怖くないのは彼がいるからだろう。



「憎い故に愛しているか……今まで一番心が揺さぶられたな…嫌っているのかと思ったが…」

「…好きだからこそ……愛しているからこそ貴方が今までやって来たことが憎いんです…だから、許せないんです…最初は、確かに嫌っていましたが…」



 だろうなと、彼は笑う。私は、最後に気に掛かった事を訪ねた。


「…何故、貴方は時々悲しそうな、顔をしていたんですか?」


 あの日から私の手を握りしめた後の顔を私は今でも思い出す。その言葉に、彼は、


「俺には、愛という物が理解できない……ある日、あの男…カケルに聞いたんだ…何故、其処までしてあの王女を救おうとすると。そう聞いたら、あの男は堂々と言ったんだ…好きだから、愛しているからと」

「………」

「そして、それが分からないお前は可哀想だといわれたな……だからこそ、苛立ったあの日、そのような顔をしていたのならばお前のせいだな…お前の答えが俺への答だった」


 そういって、私の腕を取って優しく口付けた。私は、されるがままに眼を閉じた。




 アザルスは、私から離れないように…キツく抱きしめた…。


 きっと、時間なんだろう……私も、離れないように彼に抱き付いた。


 私達は、もう一度、キスをした後、お互いから離れないように強く、抱きしめ会った。



「アザルス…私は、貴方を……」

「トワ…俺はお前を……」




  愛している



 そして、崩れる城ともに、私達は運命を共にした…。















その後、ギャラクシス帝国は滅びに向かい、翔留達の勝利に終わります……。


今回は、ずっと考えていた話を投稿しました。


実は、あるゲームをやった時からもし、銀河を全て支配する帝国の皇帝がいつも苦戦している側の地球人の…それも一般人の子と恋に落ちたら?と考えたら、止まりませんでした。元から、この話は悲恋にする予定だったのでなんとか書けましたが……私の中では割とハッピーエンドかな?と……今までの短編では割と救いが無かったと……


此処からは雰囲気を壊されたくない人は申し訳ございませんがバックしてください。


因みに、皇帝にはそのゲームでのモデルにした人がいて見てからこれだ!と直感しました。後、他の三人も勿論モデルにした人がいます。…しかし、皇帝のモデルにした人が割と沢山の人に罵倒されてたのは可哀想面白かった。一回ゲーム機置いて爆笑しました。多分、他の三人も分かる方は分かるかと……。


それでは!


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