表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/326

大番狂わせ

 現在雷神家の敷地内は混乱と化し、それぞれの場所でそれぞれが戦闘を始めていた。


「はぁ……はぁ……」


「どうしたぁ?そんなんじゃ時間稼ぎにも何ねえぞ?」

 アリサとロサは互いに背を向けて戦っていたが、序列入り二人の猛攻により防戦一方の様子であった。

 そしてアリサはついに地面に跪いてしまう、まだ電磁シールドも張ることすらできない彼女は電撃を電撃で相殺させる方法しか攻撃の防ぎようがなかったのだ。


「ロサ、そっちはどうにかなりそう……?」


「さあ、でも多分、私もあと一発でも食らえば今のアリサみたいになるかもね……」

 それはつまりロサも既に身体の限界を向かえており、このまま二人共やられてしまうのは時間の問題となっていたということだった。


「……そう、なら、電磁シールド使えない?」


「使えるけど、多分序列入りには通用しないよ。私達が使うそこらの雷とは質が違う、だから一つの神技でシールド張ったりする汎用性が高いのよ」

 序列入りの雷と通常の神技による雷は神技としての質が違い、威力や汎用性すら上位互換に位置する雷だからこそ彼等は一つの神技でシールドを張ったり造形をしたりすることができている。

 つまり二人にとってカミュラとラフィは格上どころか完全なる上位互換の相手であり、端から勝機など微塵もないも同然であったのだ。


「ロサ、無理を承知でお願いがあるの。数十秒だけ持ち堪えてくれないかな?」


「無茶言うよ、自分の背後も守れない私がもう一人抱え込んで耐えろって言うの?」


「だよね、でも勝機はまだ自身の力を過信している彼等の隙を突く瞬間しかないと思う。だからお願い、私に時間を頂戴」

 ロサは決して背後を振り向かずアリサと背中で語り合うと、彼女もまた決断するかのように大きく深呼吸をしてみせた。


「了解――その代わり食堂のデザート一つね!」


「ええ、今日の朝食が食べられたらの話だけど!」

 そしてカミュラとラフィによる両方向からの攻撃をロサは『エレキシールド』でシールドを張ることで防いだ。

 アリサもまたロサが構築したシールドの内部で神技の構えを取るが普段と違って発動までが異様に遅い、神技とは大技を発動しようとすればするほど時間を食うものなのだ。


「アレウス先輩から教えてもらった序列外最強の雷―――集え、全ての雷撃よ。今こそ天に渾名す神を討ち、万象を救済せよ――」


「――へえ、確かにそれは秘策だわ」

 アリサが唱え始めた詠唱にロサは勝利を確信したような笑いを浮かべ、尚も両者から飛び交う序列入りの雷撃を耐え忍んでいた。


「オラオラ!!大サービスだ!!耐えてみろ!!」


「っ……!!」

 電撃が貫かれてはシールドを張り、貫かれては張るの繰り返しにいよいよロサのゾオンエネルギーも尽きようとする。


「これで終いだ!!」


「うああ……!!」

 カミュラ達の猛攻にロサのシールドは破れ彼女の体内貯蓄率は底を尽きついに地面に倒れてしまうが、それとはすれ違う形でアリサが立ち上がってみせた。


「――後は、任せたよ……」


「うん、おかげで発動できたから」


「―――!?」

 直後に前方と後方に巨大な術式が二人を挟むように構築されると、カミュラ達は咄嗟にそれぞれの序列入りの雷で電磁シールドを自身を中心に半球状に張り突けアリサの攻撃を防ごうと防御を取る。


『エレキキャノン』


 術式から放たれた電磁砲が両方面のシールドに直撃して、アリサは序列入り二人に大して真っ向から対峙した____


 ―――……


「あ、あ……」

 だがしかし、ロサが守り託したアリサの攻撃は彼等のシールドを貫くことはなく消滅してしまう。

 これが序列入りと序列外の神技の質の違い、覆らないヒエラルキーに倒れ込んでいるロサも唖然としたがアリサを責めようとはしない。


「駄目だったね、アリサ……」


「諦めるのはまだ早いよ、ロサ!!」

 アリサが力強く啖呵を切った瞬間、誰も予想だにしなかった第二の刃が炸裂した。


「な、何だ!?」


「あなた達の足場に本命を仕込んだ、いくら序列入りのシールドが強力でも足場は盲点だよね!」

 アリサはカミュラ達がシールドを張る際には必ずと言ってもいいほどに自身を中央に置いた半球型のシールドを張っていたことに気付いていた。

 だからこそ最初の『エレキキャノン』による攻撃はフェイクであり、彼等に隙を生じさせる為の囮の弾であったのだ。


「それじゃあ失礼します。先輩方――」


「まずい、早くシールドを……!」

 しかし時既に遅く、両者同時にシールドの内部から雷光が光輝いた。


 ――『神雷滅殺(エレキスレッド)


 地面から勢いよく雷撃が天井に向けて放たれると、いずれその攻撃はシールドを破り天高く上空にまで雷音を轟かせる。


「あ、ああ……」


「こんなの、想定外だよ……」

 雷撃が直撃したカミュラとラフィは強烈なアリサの攻撃に背中を地面に着けた。第一階級の二人が序列という圧倒的な壁を壊した瞬間だ。


「全く、この一ヶ月間でシールドの練習もせずにこんな隠し玉を持っていたなんて……」


「は、はは、やったよロサ、序列入り二人を倒し……」

『エレキキャノン』を二発、『神雷滅殺(エレキスレッド)』を二発ずつ、合計四発もの大技の発動にアリサのゾオンエネルギーは既に尽きており彼女もまた倒れてしまう。

 体内の貯蓄されたゾオンエネルギーが尽きると体にも倦怠感を及ぼす、序列九位と十位の激しい攻撃を受け続けた二人は身体的にもかなり疲弊しており、暫くは体が動かせない状況となっていたのだ。


「そ、そんな……カミュラ様とラフィ様が倒されただと……?」


「いや、でも新当主派の二人は瀕死だ。ダグラス様の指示通りに始末すれば俺達の手柄になるぞ」


「それもそうだな、それじゃあ早速殺っちまうか」

 しかしながら現実はそこまで甘くない、先程まで激戦を傍観していた大人達が次第に二人の元に近付いて来ようしていたのだ。



「ごめん、ロサ……約束、守れそうにないよ……」


「……もういいよ。あんなの、何でもないからさ……」

 アリサはゆっくり目を閉ざし始め、静かに接近する足音だけを感じることができた。

 一歩、二歩とバラバラの歩調が床を振動させいずれ音が途切れてしまう。


 _____!!


 雷撃が空間を迸る音が反響した感覚が伝うと、アリサとロサは自然に閉じ掛けていた視界に再び光を灯した。



「――そいつ等は殺させないぞ、お前達」


「全くもって同感です。何せ彼女達はこの家を変える新たなる風なのですから」

 今だ霞む視界の中アリサの視点からは自分達を取り囲んでいた大人達が雷撃を受け、半分以上の敵が先程の攻撃でバタバタと倒れ始めた光景が見えていた。

 その様子にアリサも驚きを隠せないでいて、急いで雷撃が飛んできたと思われる方向に目をやると一人の男と麗しい和服を着込んだ女が立っていたことに気付かされる。


「ジ、ジョセフ様にアリシア様だ!!現当主派の敗退者が何故ここに!?」


「現当主派なんて肩書きはもうやめろ、俺はもうどこの派閥ににも所属してない無派閥(フリー)だ。お前達のトップにボロクソに叩かれた挙句捨てられたな」


「わ、私はただアレウスに良い条件を提示されたので加勢しただけですわよ。決してそこには個人的感情は含まれていませんわ」

 突如として乱入してきた二人の序列入りに残りの敵もたじろいでしまうが、アリシアは持ち味の神技の高速発動で自身の雷撃を受けさせることで仕留めるのだった。


「これで全部ですね、仮にも役職階級ならもう少し粘って欲しい物です」


「あの、助けてくれたことは嬉しいのですが、どうしてこんなにも来るのが遅かったんですか……?」

 どうせ来るなら早く来てくれれば良かったのにと心中に抱いてしまったアリサは思い切って彼等が遅れた理由について聞くと、ジョセフは少しばかり口を濁したかのような顔つきに変わり申し訳なさそうな表情を浮かべた。


「あーその事に関して何だが、今回の現当主派が引き起こした混乱に加担した雷神家の入家者達の倒してたのと無関係の奴等を避難させてたら時間が食われてしまってな、中々こちら側に辿り着けなかったってことだ」


「でもまさかカミュラとラフィを倒すとは、これは大番狂わせですね」


「ああ、そうに違いない」

 するとジョセフとアリシアはぐったりと倒れる二人の腹部に手を置くと、僅かながら自身が貯蓄していたゾオンエネルギーを供給して精力を付けさせた。


「あれ、元気になった……」


「少しだけだがゾオンエネルギーを供給した。これである程度は動ける」

 自然と体の倦怠感が無くなったアリサが上半身を自力で起こすと、ロサも同様に体を動かせるほどに活力を取り戻してみせた。

 しかし状況が状況なので、アリサが一つだけ助けに来た二人に聞いておきたいことがあったのは必然である。


「確認しますが、二人は味方なんですよね?」


「まあそうなるな、あの腐れ当主の下についておいて今更味方に回るのもどうかと思うが」

 元々敵として新当主派の結達と対立していた二人、しかし今となっては雷神家の為にこの混乱を止めようと自ずから行動し始めた。

 それもこれもアレウスが捨て行かれる運命の彼等を見捨てることをせずに心の傷を癒したおかげであり、この瞬間は全て次期当主と成り得る男が成し遂げた奇跡に違いなかったのだ。


「――やっぱり、あの人は凄いよ」


「あの人というのは、アレウスの事でございますの?」


「はい、先輩のやり方は他から見れば非効率的かもしれませんが、それでも他人を引き付けようとする何かを持っている。アリシアさんもそれでここに来たんですよね?」


「べ、別にあの若僧になど惹かれておりませんわ!私はただ新当主派に協力しておけば得れる物が大きいと判断したまでです!」

 何やらアリシアは疾しい事でもあるかのように目を逸らし始めたところから窺うに、アリサはそれが建前だということに気付きもっと感情的な部分で行動していたのだろうと推測を飛ばし楽しんでみせた。


「それで、二人はこれからどうするつもりなんだ?」


「決まってるじゃないですか、結に加勢する為に現当主に会いに行く魂胆です。どうやら大柱は現当主派に身柄拘束されているらしいですからね」

 ロサは新当主派の代表であるアレウスが現当主派に拘束されているという情報を二人に伝えると、アリシアは自身の持っていた扇子を折り徒ならぬ雰囲気で殺気立った表情を見せるのだった。

 その様子を見ていたアリサは自分は今恐怖という感情を抱いていると自覚していたが、どうやらそれは周りも同様だったみたいでジョセフまでもが彼女の怒り狂った振る舞いに顔が青ざめていたことに気付かされる。


「アレウスを拘束したですって……?誰が?何の為に?許さない許さない許さない許さない……!」


「……」


「……」


「……」

 するとアリシアは勢いよく廊下を走りアレウスを探しに疾走していく。その様子にアリシアも和服で体を拘束しているのにどうしてあんなに早く走れるのだろうか、と心底どうでもいい疑問を浮かべてしまう。


「……ま、まあ、俺達は俺達のペースで探すか。お前等怪我してるし」

 当主選の開幕式に初めて会った時は印象最悪だったジョセフも意外にも怪我人を気遣う優しさのような部分が垣間見えた。実のところ彼に至ってはこの当主選は強制的に現当主側として参加させられたらしいので性格自体は悪いわけではなかったのだろうとアリサは推測してみせる。


 そして雷神家内で繰り広げられる一つの戦いに終止符が打たれ、現当主派の主戦力はこれで三人となるのであった。



 ________



 ――物心付いた時から父親に正しくあれと教わった。


 正しさとは何だろう?自分は何をすればいいのだろう?最初に父親から告げられた時はそう考えた。


 それ以来自分は極力力を使うのは避け、正しさの正体を確信できた時に開放しようと誓った。


 正しさとは何なのか、当時六歳だった頃から早六年経つが結局今もイマイチピンとこないものがある。


 だが、正しくあろうとする者達なら確かにこの目で見えた――




 __ふと重たくなった目蓋を再び開くと、そこには息一つ荒げていないキャメロットの姿が視界に入った。



「もう終わりか?見当違いだったか……お前には少しだけ強者の匂いがしたんだがな……」


「はぁ……はぁ……」

 ジェリカの体は既にボロボロであり息を荒げた状態で限界を向かえようとしていた。

 だが彼女には負けるつもりなど毛頭なく、そこには確かに確固とした意志を露にしていたのである。


「分からんな、どうして貴様がそこまで必死になるのか」


「私には、意志があるから――」

 その確固とした意志は正しくあろうと決めた父親の言葉が根源となっていた。

 だがその意志は結達と過ごしている間に少しだけ変化を遂げたのだ。

 正しさを貫こうとする者、正しさを導こうとする者、それについて来ようとする者、何の奇跡か彼等は集まり目的を一つにしようとしていた光景を見た。

 そして彼等は己の身を削ってまでも現状を打破しようとしている。だからこそ自分だけが諦めるわけにはいかなかったのだ。


「私は私の意志でこの家を変えたいと思った。それが正しい事かなんて分からない、でも、私は新当主派の為に勝利を捧げたいと思った――!」


「……そうか、それは立派な事だが無理な話だ。大人しくくたばってろ」


 そしてキャメロットは『エレキトリック』を発動し、ジェリカに向け雷撃を放とうとした。が




 _______!!



 次の瞬間、キャメロットにより放たれた『エレキトリック』の雷撃は一瞬で掻き消され、ジェリカの周りには漆黒の雷光を放つ雷が放電していた。


「――え?」


「数分ぐらいしか使えないけど、その程度の威力なら十分みたい」

 あまりの光景にキャメロットも数秒間思考を停止してしまうが、何とか目の前の光景を必死に整理しようする様子で頭を掻き毟り始めた。


「え、は、ちょ、どうして?どうしてその雷が使えるんだ……?」


「私の正式な名前はアンジェリカ・S・ハーメル。Sは――シャウトって意味」


「―――!?嘘だろ、シャウトってあの……四代目神神ムーン・シャウトのことなのか……!?」

 ジェリカのフルネームを聞いたキャメロットはあからさまに驚いてみせるがそれは無理もなく、彼女は雷神家最強の神と称えられたムーンの血を継いでいるという事実は誰も知り得なかった事柄だったからだ。


「ならその漆黒の雷は、神雷級階序列一位『ネオプラズマ』だとでも言うのか!?」


「勝手に思えばいい。まだお父様ほど威力も出せないし発動時間も続かないけど、今この場であなたに勝つことぐらいはできる――」


「っ……クソが……!!」

 キャメロットは再び『エレキトリック』を発動し自身の全力の電撃をジェリカに受けさせようとするが、その雷撃は彼女から一定距離内に入った瞬間に見えない壁にでも衝突したかのように進行が止まった。


「電圧が強すぎて空間そのものを捻じ曲げているのか!?」


「温いよ、オジサン」

 すると進行が止まった雷撃は次第に漆黒の色に侵食され始め、電子レベルに一度分解させられるとジェリカの周りを漂う電流の大きさが一回り大きくなったように見えた。


「『ネオプラズマ』は雷の攻撃を受ければ受けるほど自身の電気量とする。こうしている今も空気中の電荷を吸収し続けて肥大化しているの」


「嘘だろ……そんなの……」

 キャメロットは圧倒的な力の差にすっかり絶望しきった顔をすると、ジェリカもまた彼を殺さないようにと最小限の力加減で勝負を終わらせようとした。


「勝てないよ――」


 ____!!


 ジェリカによって放たれた黒の稲妻はキャメロットの急所を避けるように直撃するが、序列一位の雷をまともに受けてた彼は即効気絶をしてしまい倒れてしまうのだった。


 ドクン___



「――!!はぁ……相変わらずこの神技エネルギー消費が激しい……」

 ジェリカは術式が解除すると、一瞬心臓を鷲掴みにされたように呼吸を荒げてしまう。

 序列一位の神技を使おうとすればやはりそれなりのゾオンエネルギーの消費は激しく、たった数分間の使用で体内貯蓄率が一気に枯渇してしまったジェリカは倦怠感と共に千鳥足でゆっくり床に腰を着く。



「うおおお待ってなさいアレウス!!今私が直々に助けに行ってあげますから♪……あ」


「あ」

 アリサ達がいた方から和服を着込んでいるにも関わらず走り込んでいたアリシアは、廊下に腰を掛けるジェリカを発見すると床を数メートルずるずると滑りピタッと彼女の元へと静止した。


「まあ可愛いお嬢さんだこと♪あなた私の人形にならない?可愛い浴衣があるのよ♪」


「いや、あの」

 アリシアは目をキラつかせて彼女に自身の着せ替え人形になることを提案するが、ジェリカここまでの変人と対面した事がなかったので対応に困っていた。


「あれ、でもあなたどこかでお見受けしたことがある気が……」


「新当主派のアンジェリカ・ハーメル。皆からはジェリカって呼ばれてたりする」


「ああそういえば!開幕式の時に一際目立って若かったあの子ね!でも間近で見たらやっぱり麗しいですわ♪」


「あ、あの……」

 膝に手を置き前屈みとなった状態でアリシアがジェリカに向かいデレデレし始めると、彼女もまた体をモジモジとさせ上目遣いでこう言った。


「そんなに褒められると、照れる……」


「―――」

 その時、アリシアの理性の糸が切れる音がする。

 その瞬間にアリシアはジェリカの肩を掴み、欲望丸出しの表情を露にして彼女へと詰め寄った。


「やだ!!何この生き物可愛過ぎます!!こうなったら無理矢理にでも私の部屋へと連れ込んで浴衣を着させ、ちょっと淫らな要求をして顔を紅潮させたところを写真に――」


「テメエは何しに来たんだよ!!」


「ぬへ!!」

 横から勢いよく走ってきたジョセフは現状を忘れて掛けていたアリシアに向け顔面を蹴り上げると、彼女は妙な悲鳴を上げてジェリカの左側に倒れ込んだ。


「せめて現状ぐらい考えろよ!!今雷神家存亡の危機!!お前の妙な趣味を出すのは明日雷神家が在ってからにしろ!!」


「お、女を蹴るとは何事ですの!?この人でなし!」


「いやさっきまで少女に欲望丸出しにしてた人に言われたくないわ。てか大柱の座を取引に現当主派に協力してたお前が言うか?」


「麗しいは正義ですの!!正義の名の下ならどのような愚行でも許されるのがこの世界の原理なのですよ!!」

 そんな意図が読めない口論が続く中アリサとロサが続け様に到着すると、一体この状況は何なのだと言わんばかりの置いてけぼり感を出していた。


「あの二人共、それよりもあそこに倒れているのって……?」


「あ、あーキャメロットだな……ってキャメロット!?」

 先程までぐったりと白目を向いて気絶をしている大柱の一角を無視していたアリシアとジョセフはロサが指摘した瞬間に急激に驚いてみせる。恐らくこの当主選で一番の被害者は彼なのだろう。


「そんな、大柱の一角が破れましたの!?」


「これを誰が……?」

 するとこの場にいたジェリカに全員の目線が集まり、彼女は嘘をついている時に出る無表情のまま身震いをした状態で何とか話の辻褄を合わせようとする。


「そ、そ、それはユイが倒してくれた。私は走り尽かれたから休んでいただけ」


「何かジェリカちゃん、声震えてない?」


「そそそんな事ない、私はただ本当に休んでいただけ」

 だがしかし彼女の無表情ながら身震いをしている光景に誰もが怪しんだような目線を送っていた。

 もうどうしようもできなかったので、ジェリカは結に教えてもらったある策を実行するのだった。


「てへ☆子どもだからよく分かんない☆」

 結に自身の秘密を伝えていたジェリカは数時間前にもしも他人に秘密がバレそうになった場合の最終手段として、自身で頭を小槌ち甲高い声と笑顔でそう言えば乗り越えられると思う!多分!と聞いてたのですぐさま実行してみせた。


「……」


「……」


「……」


「……」


「……あの、皆」

 すると時間差で全員が胸の辺りを押さえつけ苦しみ始めたかのように悲鳴のようなものを上げていたことにジェリカは驚かされてしまう。


「な、何だ、この胸を貫く甘い衝動は……!!堪えろ!!何だかよく分からんが堪えるんだ俺……!!」


「あはは♪さっきの照れもいいですが、こっちのわざとらしい感じも私的には好みですわ♪」


「そっか、やっぱりユイは凄いな♪大柱も倒しちゃうんだから♪」

 その後彼等はすっかりジェリカに洗脳されてしまい、彼女もまた自分の秘密をバラすことなく誰にも迷惑を掛けずに済んだので取り敢えずは良しとしたのだった。




 ___________

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ