因縁の対決
前代未聞の開幕会場での当主選初戦は初回からビッグマッチを組む結果となっていた。
__『初戦 新当主派雷神家大柱 アレウス・ヒストリーク vs 現当主派雷神家大柱 ジョセフ・エルガン』
序列三位と序列六位の対決は立ち会っていた雷神家関係者と記者達を釘付けにして、誰もが雷神家の未来が掛かった勝負を固唾を飲んで見守っていたのだ。
「__試合開始!」
二人の横に立っていたメフィストは勢いよく上空に上げた手を振り下ろして試合開始の合図の掛け声を告げ、両者は一斉に距離を取り神技を発動する。
アレウスは早速『インビジブル』を発動すると、不可視の雷光を生かした見えない攻撃でジョセフの四方を囲む形で雷撃を放つ。
「ほう、早速お得意の『インビジブル』を繰り出したか。だが甘い」
「何!?」
ジョセフは足元にゾオンエネルギーを付加させることで上空に飛び見事に雷を避けてみせる。
そしてそれを追う形でアレウスは再び『インビジブル』を発動して滞空している彼に見えない電撃を当てようとするが、ジョセフは空気を圧縮する効果を持つ神技を足元に発動することで空中を跳ねる様に移動して何とか躱わし切るのだった。
「か、雷以外の神技も扱えるんだ……」
「当然よ、あっちは今も現役の神官。特にあれは風神家が得意とする風属性の神技だわ、空間に漂う空気を圧縮して足場を作り跳ねると共に突風の勢いと付ける強化系の効果を持つね」
ロサの的確な説明のおかげで結は何とか現在展開されている戦いの状況を理解するが、何故アレウスの不可視の雷撃が躱わされてしまったのかは今も分からずにいた。
「正直この戦いは大柱がかなり不利だわ」
「え、どうして?」
「だから言ったでしょ、向こうは今もバリバリの神官で経験も場数も大柱と桁違いなの。私達の大柱は序列三位を使う若き天才とは言われているけど、それとは逆光して二十歳という若さで大柱にスピード出世しちゃったわけだからまだまだ戦闘の経験は浅い方面ってこと」
現在アレウスは今年で神の称号を取得したのでまだ神官の座にも就いていなかったことから、若き天才とは称されているものの上から見れば大した実績も残してないただの若手という印象であったのだ。
だからこそロサはこの当主選は誰がどこでいつ戦おうと新当主派が勝負に不利になることを確信していた、現当主派は実力も経験も場数も雷神家きっての実力であったからだ。
「現当主派は完全に記者達にアピールしているわね、まるでこれじゃあ本当にパフォーマンスだよ。やっぱり私達には勝てる見込みなんて……」
「勝てるよ、アレウスは絶対に勝つ」
「……ユイ?」
結はロサの弱気になった発言を跳ね除けて活気付いた声質を豪語し始める、そしてそれはアレウスを心の底から信頼しているからこそ為せる行為だったことには違いなかった。
「だって、あの人は次期当主になる人だから、こんなところでは絶対に負けたりしないよ」
「――そうだったわね、私達はあの人を当主にしたくてここに立っているんだから」
例えどれだけ実力差があろうと今も懸命に戦い抜こうとする彼の横顔はどこまでも先を見据えており、どこまでも多くの事を背負って巨大な壁を壊そうと努力をしていることが窺えた。
だからこそ結は彼が勝利することを心の底から望み、新当主派は確かに一丸岩となっていたのだ。
「負けるなアレウス!そんな奴ぶっ飛ばせ!」
「……ああ、言われなくてもそうするよ!!」
結の掛け声と共に気合を入れたアレウスは『インビジブル』でジョセフの足元を狙い攻撃をすると、彼は動揺した声を上げ塵の煙に覆われたことから技がようやく届いたと確信する。が
「……!?何、だと……」
次第に塵が払い退けられ激突した地面が露になると、そこにはアレウスの『インビジブル』を防いだかのように向かい合う方向に電撃の壁が立ち塞がっていた。
そしてそれに気付いた会場の人々は終始どよめき始めると、これがジョセフ・エルガンが使用する『ライキリ』だということをようやく察し始めるのだった。
「悪かったなアレウス、その攻撃は呼んでいた」
「っ……どうして……」
「どうして?それはどうして俺がお前の攻撃を読めるのか?と聞きたいのか?」
まるで次の彼の言動すらも見通していたかのようにジョセフは先手を打つと、アレウスは図星を突かれ動揺を隠せない表情をこの場にいる観戦者達に見せ付けてしまう。
「まあ長年の経験ってところかな、今のお前の実力なら例え目を瞑ってても躱わせる」
「……そんな馬鹿な」
「何なら試してみるか?貴様の攻撃を避けれるか」
するとジョセフは本当に目を瞑り明らかな挑発を噛ましてくると、アレウスも先程からの彼の行動に業を煮やしたのか再び『インビジブル』を放った。
「ここか」
「……!?」
しかしアレウスの放った攻撃は自ら司会を奪ったジョセフに再び躱され、本当に第六感でもあるのではないかと疑いかけてしまう。
だがアレウスは彼が攻撃を避ける前の現象に注意を向けていた、それは透過しているはずの電撃がジョセフから一定の距離に入った瞬間に妙な電流が空中に流れていたということだ。
「いや、待て……」
そして彼は一つの仮説をすると、それは次第にジョセフが先程から攻撃を必然的に躱わせることができるのかの種を見極める決定的な物へと変貌した。
「なるほど、全て分かりましたよ。あなたのその回避技術は経験からのものでも第六感でも何でもないことが」
「何……?」
「その正体は、これです!」
するとアレウスは上空を見上げ天井に発動していた術式をゾオンエネルギーを発散する神技によって解除してみせると、ジョセフは先程まで余裕を飛ばしていた顔から一変して種を見破られたことに対する焦りを思い浮かべていたかのように表情を曇らせる。
「電磁レーダー、自分を中心に一定の空間に電子を充満させることで僅かな電流の乱れで相手の攻撃を読んでいた。違いますか?」
「何故分かった!?」
「最初は俺の攻撃を放った際に僅かに電流が見えたことですかね。恐らくジョセフさんは『インビジブル』の対策をして初戦で俺に試合を申し込んだ。確かに微弱な電流を一定空間に流しておけば不可視の雷撃も避けられるかもしれない、だがそれと同時に俺の電撃に触発され放電された電流はくっきりと姿を現すのが最大のデメリットだった訳です」
ジョセフは迫り来る攻撃を察知する為に激しい戦いから生まれた盲点を突いて術式を天井に発動し、一定空間に微弱な電流を漂わせてレーダーの役割をすることにより攻撃を躱わしていた。
これで不可視の攻撃は攻略したつもりだったが、それは同時に最大のヒントを与える結果となってしまいジョセフの作戦は撃沈する結果となったのだ。
「相手の盲点を突くのはまさに奇術師の戦法、だがもうその手は通用しませんがね」
「へえ、なら正真正銘の真剣勝負と行きますか」
ジョセフは作戦を見破られた以上防御に徹していても意味がないことを察したのか、いよいよ攻めの一手に行動傾向を変化させようとした。
「俺は勝つ、絶対に勝つ、勝たなければ潰されるのみ……」
「……?」
アレウスは小声で独白を始めた彼に思わず意識をそちらに向けてしまう最中、ジョセフはその隙を突き自身の真骨頂となる神技を発動する。
『ライキリ』
神雷級階序列六位『ライキリ』は汎用性や造形に長けた雷の神技であり、先程の電流の壁も造形能力が優れている『ライキリ』ならではの使用例であったのだ。
そしてジョセフは雷撃の槍を造形すると、その槍は一直線にアレウスの方向へと超高速で飛んでいき彼の頬を僅かに擦れる。
「っ……!?」
「無駄だ、その槍は荷電子が帯電している方へと向かう言わば追撃式。先程から矢鱈滅多ら電撃を放っていたお前には嫌でも荷電子量が通常の倍異常あるってわけだ」
ジョセフの言う通り先程躱わしたはずの槍の電撃は運動量のベクトルを一瞬で逆転したようにアレウスの背後を貫こうとする。
『インビジブル』
しかしアレウスは反射的に電磁シールドを張ることで槍の動きを止めると、『インビジブル』の強力な電撃により電気量を相殺させることで防いでみせた。
「……いい加減にしろよ、何なんだよお前は」
「ジョセフさん……?」
「そもそもお前が当主選なんて立案しなければ俺は地位を危ぶまれることはなかったんだ。なのに、何で神に成り立てのお前が出しゃばってんだよ!!」
ジョセフの逆ギレとも取れる発言を耳にして、アレウスは今彼が背負っている全てのことに察しがついていた。
ジョセフ・エルガンが当主選に言当主派として参加した理由、それは恐らく現当主ダグラマに地位降格を脅迫されての行為だったのだ。
つまりは権力者である現当主の不当な圧力、規定違反とまではいかないものの相当グレーなゾーンを攻めた行為には違いなかった。
「お前達に勝ち目なんて微塵もない。なのに、どうしてお前はそれでもこの家を変えたいと思うんだ!?」
「それが俺の使命だからだ!!ジョセフさん、あなたが立ち塞がるというのなら退かすまでです!!」
「チッ……!!生意気言うんじゃねえよガキが!!どうせ新当主派は敗北してお前は大柱の地位を落とされるのがオチだ!!」
痺れを切らしたジョセフは空中に複数の術式を発動する。
それは言わば神技の同時発動であり、神の称号を持つ者でも神官クラスでないと使いこなすことができない高等技術であったのだ。
「決着を着けてやる、三流が!!」
「まずい……」
同時発動での攻撃に嫌な予感を感じたアレウスは瞬時に電磁シールドを張り防御に徹する、そしてその様子を窺ったジョセフは不気味に笑みを浮かべ『ライキリ』による三連続放電を彼のシールドへと直撃させたのだ。
「おおお!!」
「っ……!!」
勝負はまさに一進一退、二人の雷によるエネルギー衝突の突風で遠く離れている結達の元までその迸る電流の刺激が伝わって来たのだ。
そして放たれた衝撃と共に爆音が広がり会場の中心は一気に塵の煙に包まれる、観戦者達は一度散乱した埃や塵により咳き込んでしまうが熾烈な攻防戦の末を見届けようと無理矢理視線を二人の方へと向ける。
「はぁ……はぁ……」
「がは……!!」
「そんな……」
煙幕が開けた先に見えた光景に結は思わず絶句するしかない、何せ真っ先に見えたアレウスの姿はジョセフの雷を完璧には躱わしきれなかった様子で吐血しながら千鳥足をついていたからだ。
「はは、はははは……!!ざまあみろ、俺にも敵わない奴が当主なんて言葉通り百年早いんだよ!!」
「――まだ、終わらねえ……」
「……あ?」
神技の同時発動によるジョセフの攻撃を避け切れなかったアレウスは攻撃をまとも受けてしまい、完全に気迫のみで立ち上がっている様子から観戦者の誰もが彼の敗北を確信していた。
___だがしかし、そんな逆境に立たされたアレウスに今だ勝利を信じている四人がいた。
「倒れたら駄目だよアレウス!あなたは、この家を変える存在なんでしょ!?」
「……!?」
背後からの結の声援に耳を傾け、アレウスはそのよろめいた足取りを再び建て直す。
その男の背中はどこまでも偉大で、その体を支える足は大地に突き刺さるように決して自ら地面に背中を付けることを許さない佇まいを見せていた。
そして、どこまでも先を見据えたその目はまだ死ぬことなく、今も彼は当主になることだけを考えていた――
「――分かっているよ。もう……」
「……何だか知らないが、殺さない程度に止めを刺してやるよ!!」
ジョセフは瀕死状態のアレウスに止めを刺そうと神技の構えを取り『ライキリ』を発動しようとする、が
_____!!
「っ……な……!?」
「勝利は、見えてる――」
直後、ジョセフは一瞬の間に自身の脳から脊髄にかけて痺れるような痛みを感じたかのように言葉すらも発せれなくなってしまう。
「これが俺の奥の手、神経支配。ようやく発動してくれたよ」
「な……んで……」
体の適応能力でようやく言葉を発することが可能になったジョセフは、一体何故自分は体の自由が利かなくなったのかアレウスに説明を求めた。
「俺が『インビジブル』を発動している最中、攻撃と見せかけて少しずつ微弱な電流を送りつけてたんです。勿論ジョセフさんのレーダーに感知されないほど微弱な電流をね。そして無意識の内に体内に吸収させ雷発生の要領で電子と電子を衝突させ合い電圧を大きくさせたというわけです。まあもっとも時間差で発動するのがデメリットなんですけどね」
そしてアレウスの電流は神経器官へと辿り着き体の自由を支配させる、これが彼の隠し持っていた奥の手であり以前結にも行っていた自然回避がほぼ不可能な初見殺しの技であったのだ。
「今のジョセフさんは体内の荷電子量が臨界点に達している雷が落ちてきたら真っ先に電撃を受ける体質になっています。そんな状態のまま今この場で俺が電気量増幅の神技を発動したらどうなりますかね?」
「や、やめろ……俺は、負けるわけには……」
「すいませんジョセフさん、あなたを踏み台にしてでも俺はこの家を変えます――」
そしてアレウスはジョセフの足元に術式を構築して、電気量を増幅させる神技を発動した。
『ボレージ』
_____!!
ジョセフの体は直接電流が流され、ギリギリ意識は保ってはいたがそのまま床へと迎え入れられてしまう。
そして審判であるメフィストが彼の様態を見て、試合の続行が不可能だということを確認するとアレウス側に手を上げてみせる。
「勝者、新当主側、アレウス・ヒストリーク」
初戦は新当主側陣営の軍配が上がり、結達は貴重な白星スタートを切ることに成功したのだ。
「やったよアレウス!!もう途中本当に駄目だと思ったじゃん♪カッコつける前に心配させないでよね馬鹿♪」
「ちょ、腹を殴るな……一応電撃まともに食らった身だからな?」
そして観戦者として紛れていた四人はアレウスの元へと駆け寄り彼の勝利を称えようとすると、早速結が笑顔で怪我人に容赦のない腹パンを受けさせたことで彼を悶絶させる結果となった。
「ああごめん、ついいつもの感じのノリが出ちゃった。まあそんなこんなでアレウスはよく頑張ったよ」
「何だよそれ、どの立場からの言葉だよ」
何故か上から目線の結の褒め言葉にアレウスも調子を狂わされたように反応に困った様子を見せる最中、無事初戦に勝利したアレウスに記者達が一斉に彼を囲むのだった。
「新当主派代表のアレウスさん、良かったら一言コメントをくれませんか!?」
「新当主派は雷神家をより良くする為に戦い抜くことをここに誓います。ただそれだけです」
その後もアレウスは記者の取材に万遍なく答えると、暫くして彼等は満足したように会場を後にして中立側の神官と雷神家関係者だけが残り、現当主派代表であるダグラマが今も倒れているジョセフの元へとゆっくりと近付いてくる。
「すいません、負けてしまいました……」
「……そうか」
するとダグラマは現当主派として仲間である彼に手を伸ばし、ジョセフはその差し伸べられた手を掴もうとする、が__
____!!
「ああ……!!」
ダグラマは彼の手を取ることをせず、ジョセフが伸ばした手を上から潰すかのように踏みつけた。
そこにはもう仲間としての信頼関係など微塵も感じられず、それを見ていた結は思わず体が動きそうになるがアレウスにより静止させられ何とか怒りの感情を抑えた。
「ご苦労だったな、降格決定だ。二度と顔を見せるな役立たず」
最後に罵声を吐き捨ててダグラマは稽古場を後にすると、それに続くかのように現当主派の構成員達も次々とその場を後にした。
そしてその時誰も心身ともに傷付いたジョセフの顔を見ようとはしなかった、相当悪質な行為だが仲間割れは規定には印されていないので中立側も見て見ぬ振りをを通していたのだ。
「酷い、こんなのあんまりだよ……」
「これで分かっただろ、現当主ダグラマは非情な性格だ。そしてこの当主選に現当主派を勝たせれば俺達は間違いなく消される、もう引けないってことだよ」
もし現当主派が勝利すれば再び彼の絶対王政が始まる、役職階級達を絶対的な権力で支配して統帥するダグラマのやり口は後にこの雷神家を破滅される危険人物だということを結やアリサ、ロサやジェリカ達は身に染みて痛感したのだ。
そしてただ一人未だに心身ともにボロボロにされ倒れているジョセフにアレウスは歩み寄ると、彼の隣に跪き様子を窺ってみせた。
「……何だよ、お前も負け犬を馬鹿にしに来たのか?」
「いいえ、試合後の挨拶がまだでしたので、健闘を称えに来ました」
アレウスが顔を覗かせに来るとジョセフは急いで手を顔を覆う、恐らく自分より断然年下の彼に情けない顔を見せたくなかったからだろう。
「情けなんていらねえ、俺は自分の地位守る為に現当主派に就いたんだ。自業自得だよ……」
「違います。ジョセフさんは現当主に脅迫されて仕方なく協力してたに過ぎない、こんなの権力の横暴です」
ダグラマは恐らく最初は『当主選に勝てば希望の役職に昇進させる』と言った甘い誘いをして序列入りの神技を使う者達を呼び寄せていたが、現階級に満足していたジョセフが返答を渋っているのを気に入らなかったのか彼に向け参加を強制したとアレウスは憶測を飛ばす。当主という絶対的な権力を使った降格処分を口実にして。
「――何で、何でお前は、俺よりも十分の一も生きてねえのに、そうやって立ち向かえる程の勇気があるんだよ……」
「俺も、ある人に勇気を貰ったからです。俺の最も尊敬する神、イグニス・ヒストリアから」
「っ……それって、前の世代の……」
するとジョセフはアレウスのその言葉を聞き、全てに察しがついたかのような振る舞いをしてみせる。
「……そうかよ、ヒストリークってそういうことかよ……もっとマシな名前付けやがれ……」
ジョセフは評し抜けしたかのように体の力を緩めると、それ以降はアレウスについて言及しようとしなかった。
「ああ、本当にしょうもない人生だった……どの道俺も消されるんだな……」
「いいえ、絶対に新当主派が勝って、俺がジョセフさんを助けます」
「……馬鹿かよお前、本当どこまでお人好しなんだよ」
アレウスから差し伸べられた救いの手に、先程まで散々罵倒されたジョセフの声は僅かに霞んできているのが伝わった。
「ああうぜえ、どいつもこいつも本当に鬱陶しい。あの腐れ当主もお前も、俺だってそうだ……こんなのクソダサえよな……」
「ジョセフさんはこれで敗退となりますが、盤外からでも俺達のことを応援して下さい。だから、まだ自分にも希望を持ってください、あなたをこの家から失わせることなんて絶対にしませんから」
そしてジョセフは自らの手で目を覆い確かに大粒の涙を垂らし、その涙には様々な思いと痛みから溢れ出した涙にも窺えた___
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当主選一日目、初戦のシングルマッチの結果は新当主派の白星で幕を下ろした。
現在の当主選の進行具合は以下の通りだ。
現当主派 残り六名 脱落者:ジョセフ・エルガン
新当主派 残り五名 脱落者なし
そして圧倒的有利だと思われていた現当主派のまさかの黒星スタートは既に雷神家関係者の間では広まっており、明日の新聞の一面に載るのも避けれない状況になっていたことをよく思わない人物が一名いたのだ。
-当主室-
「クソ!!アレウスの彼奴め、まさか本当に勝ちよるとは……!!」
「完全にしてやられましたね、我々がパフォーマンスとして本気で新当主派を潰そうとしているように、奴等もまた本気で私達を潰そうとしています」
「そんなこと承知しておるわ!!説明をする前に対策を考えろ!!」
ダグラマは肝心の初戦を落としてしまったことを気に入らない様子でいると、物に当たり人に当ったりでとても当主とは思えないほど分かりやすく防衛機制を無意識にこなしていた。
「当主、アレウスは強いです。ここは一旦周りの連中を片付けて奴を追い込むべきだと思います」
「そうそれ、俺も言おうとしてた。見た感じ向こうはアレウス以外女のガキばっかみたいですし、先にアイツ等を片付けた方がいいっしょ」
「ふん、確かにそうじゃな。確か向こうは仮入家者もいたようじゃからな、アレウス以外は雑魚と推測できるわけか」
するとダグラマはアレウス以外の新当主派を潰していくという作戦をまるで自分が考え出したかのように満足気な表情をすると、実際に提案を発案した人である女に指を指して命令をする。
「アリシア、今度はお前が相手だ」
「了解」
二回戦に指名されたのは神雷級階序列七位『ハクライ』使いのアリシア・ディスパーナであり、彼女は雷神家第四位役職階級『中柱筆頭』を務める実力者であった。
雷神家第六十五回当主選は、まさかの開幕式直後の初戦と圧倒的不利と思われていた新当主派の白星スタートで勝負は既に分からないものとなった。
だがしかし、それでも両者の陰謀は混ざり合い衝突し合うことは変わることはなく、両陣営共に二回戦の勝利を掴もうとする___
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