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対神戦

 


 ________!!


 神技の発動とともに猛烈な爆音が轟き、強烈な爆風が敵の雑魚達を吹き飛ばしていく。

 ユピテルは先程から神技『エクリクス』で辺りの敵を吹き飛ばしているが、味方である結は爆風の餌食にならないようにと腕を掴んで猛烈な速さで煙の中を駆け抜けていた。


「あああ……何だこれ……」

 しかしこの強襲作戦の首謀者である結は完全に放心状態になっており、完全にユピテルが一人走りしていた為にアトラクション状態となっていたのだ。


「あの、ユピテルちゃん?そんなにどんどん神技使って大丈夫なの?」


「安心せい、御主等が自己供給してくれたおかげで以前より余裕があるんじゃ」

 そう言いながら湧いてきた敵を一掃すると、ユピテルは通路の果てにあった扉の手前で止まると先程まで重力を無視して地面に足を付けてなかった結も尻餅をついて静止した。


「ふむ、雑魚は一通り片付けたな」


「これ私の出番無くない?」


「本番はこれからじゃ、こんな雑魚共しかこの厳重な施設に置いているとは到底思えないからのう」

 ユピテルは眼前の扉に手をかざすと神技を発動して破壊する、すると施設のさらに奥には牢獄が壁に配置されている通路が広がっていた。


「何これ、何の為の施設なの?」


「……どうやらここは敵の工房のような場所らしいな、随分と獣臭い」


 _____________!!


「きゃあ!!」

 横から鉄格子が高鳴る音が響き渡り思わず驚いた結だが、よく中を吟味してみるとそこにはおぞましい姿をした獣が姿を現してた。


「え、何あの生き物……?」


「……魔獣か、恐らくここにある牢獄全てが彼等を保管する為の設備という訳じゃな」

 辺りを見渡すと牢獄の中に入っている魔獣は全員食料に飢えた目つきでこちらを向いていた、その事に結が気付くと怖い物知らずだった彼女も思わず顔が青ざめてしまう。


「……ま、まずいよ。これが一組織が可能な事なの……?」


「それが失われた称号(ロストシンボル)じゃ、御主の時のように平然と誘拐などしようとする奴等じゃからのう」

 向けられる巨大な敵意に結は一度言葉を失いかけるが、それでも兄を助けるという確固たる意志を何とか呼び戻し現実から目を逸らすことをしなかった。

 そんな事を考えていると、吹き抜けになっている二階の端から一人の男が姿を現したことをユピテルと結は確認する。


「これはこれは!全能神ユピテル様がわざわざ私の城にお越しなさるとは何たる感激!イッツアメージング!これもまた運命だというのか!」


「……ねえユピテルちゃん、知り合い?」


「冗談でもそんなことは言うものではないぞ、わらわにあんな変態の同胞はいないわ」

 だが彼は少女の姿になったユピテルの正体を知っていた、少なくとも失われた称号(ロストシンボル)の一部には現在のユピテルの姿について知ってる者がいるということだ。


「やはり既に情報は渡っていたか、その様子からするにそこら辺の雑魚ではなさそうじゃな」


「ええ、私は失われた称号(ロストシンボル)第七支部支部長、シャーロット・ビスカネル……純愛の求道者ですよ!」

 先程から理解に苦しむ発言を連発するシャーロットにユピテルは珍しく動揺するが、結にとってはそれより何故彼がベネチアンマスクを被っているかの方が気になっていた様子だった。


「ああ、まさか本当にこんな日が来るとは……私は、私はこの日の為に墜天したというのですね!やはりサタン様は偉大な御方だ……!」


「一人盛り上がってるところ悪いのじゃが、わらわ達は新介とサリエルを助けに来た。御主等が攫ったのじゃろう?」


「……ああ、彼等ですか。悪いですがどちらもあなた方に返すことはできません、何せ我々の計画にはどちらも必要になりますから」


「馬鹿か御主、そんな理屈わらわに通じると思うな?」

 ユピテルは気迫の風圧で髪を靡かせると、先程まで二人に向け吼え続けていた魔獣達は一瞬で静寂と化した。

 しかしシャーロットも冷静に新介達の返還を拒否したとしても、そう言われてユピテル達が引き下がるはずもないことなど想定の範疇である様子だ。


「ユ、ユピテルちゃん……?」

 怒っていた、神の怒りとはこれ程までに恐怖を感じるものなのかと思わず結も数歩後ろに後退してしまう。


「……んふふ、やはり怒ったあなたも美しい」


「……は?」


「やはりあなたはそうでなくては……!強く気高く美しい……!それでこそ私の愛した神だ!」

 突然の彼の告白にユピテルも唖然とするしかない、何せ先程敵意を示した相手に愛の告白をするなど常軌を逸した行動としか思えなかったからだ。


「もう我慢できません!私と結婚してくださいませユピテル様!」


「な……っ!!」

 張り詰めた空気が一瞬で溶け始める、ユピテル自身敵である彼がここでプロポーズをするなど予想していなかった為にシャーロットの奇行に翻弄されてばかりでいる様子だった。

 しかし背後の結は意外とこの状況を楽しんでいる様子であり、日頃から自分の恋路をネタにされていた鬱憤が溜まっていたのか戸惑うユピテルを見てニヤついている姿を晒していた。


「い、嫌に決まってるじゃろうが!御主頭がおかしいのか!?」


「ああ何と冷たい……いや、それも恥じらいの行動だというのか……」


「うう……何かもうわらわは疲れたぞ……」

 先程から何を言ってもシャーロットのペースに流されるユピテルは既に精神的な疲労が溜まっており、彼の話を聞くことすらやめようとすらしてみせる。


「支部長、そろそろ仕事に戻ってくださいよ。侵入者であるあいつらを始末するのは俺達の仕事でしょ」


「それは違うぞディアス、正確には俺達二人の仕事だ。不完全体に素人など敵ではない」

 シャーロットがいる二階の通路の両サイドから現れたのは新介を捕らえたディアスとローであり、彼等はそのまま一階に着地してユピテル達の目の前に立ち塞がる。

 ディアスは素手で神技を今でも発動しようと構えを取り、ローは黒色の棍棒を両手で持ちいつでも襲いそうな程に殺気立ってみせる、しかしユピテルにとっては彼等など先程の雑魚と何ら変わりのない存在だった。


「死ね!全能神ユピテル!」



 _____!!



 先手にローがユピテルに向け棍棒を振り翳すが、瞬時に背後にいた結が『握力強化(ハンドオーバー)』でゾオンエネルギーを付加した腕でその攻撃を防いでみせた。


「何……!?」


「誰が素人って?私だって少しは戦えるけど?」

 そのまま結はローの腹部を蹴り上げて後ろに後退させると、今度はディアスが神技を発動して結を仕留めようとする。


『エスキャノ』



 ______!!



「っ……!?」


「誰が不完全体じゃと?御主等を仕留めるのに完全でいる必要はないわ」

 ディアスの散弾攻撃にユピテルも神技で防ぐと、先程まで大きく出ていたディアス達はユピテル達を格下と思っていたからか思わず気が動揺していた雰囲気を覗かせた。


「そんな、こいつはG7が力をほとんど封印したんじゃなかったのかよ!」


「……御主達は色々とわらわ達のことについて何か知っているようじゃな。生け捕りにして吐かせるか」


「それならこの二人は私に任せてよ!ユピテルちゃんは二階の奴をお願い!」

 結はユピテルの前に立ちディアス達と対峙するが、いくら彼等が自分にとって雑魚だからといって結一人に託すのはユピテルも気が引けた様子であった。


「結、あいつらはわらわにとっては雑魚だが神技も使える。まだ神技が覚醒していない御主が戦うのは身が重いと思うのだが」


「良いじゃない、格上と戦う時こそ武道ってのは興奮するもんだよ!」

 どうやら今の彼女は静止を呼びかけても止まらない状態となっている程感情が高ぶっており、いくらユピテルでも結がこうなると止めることができなかった。


「……そうか、なら命の危険を感じたらわらわを呼べ。御主に死なれては困るからのう」


「うん、そっちこそ頑張ってね!」

 ユピテルはそう言い残すと二階まで一気に跳躍してシャーロットの方へと向かうと、結は実力者二人を目の前に大胆にも脱力し始めた。


「精神統一か、だが俺達は待たんぞ!」


「っ……!!」

 深呼吸をした結は瞬時に目を開きローの棍棒による攻撃をゾオンエネルギーを付加した腕で防ごうとするが、彼が振り翳した一撃は初手とは比べ物にならない程重く足が地面に抉れているのが伝わった。



「うおりゃああああ……!!」


「な、何だこの力は……!?」

 結はそのまま押し上げると、ローは放物線を描きながら後ろに着地して一度彼女から距離を取った。


「悪いな娘、俺もここにいることを忘れるな!」


「っ……!?」

 結が気付いた時には既にディアスが術式を構築し神技を発動しようとしていた為に、かわすよりも先に全身をゾオンエネルギーで覆いダメージを軽減しようとする。


『エルレア』


 猛烈なエネルギーの砲弾が結に直撃すると、何とか助かったがあまりの威力に無傷とはいかなかった。



「はあ……はあ……」


「おいおいこんなもんかよ、それともユピテルちゃんに助けでも呼ぶか?」


「っ……」

 だが彼女は例え体がボロボロになろうとも助けを求めようとは微塵も思わないでいる、それは結自身にとってまた誰かに助けてもらうということだったからだ。


「……はっ!!誰が助けなんか求めるか、あんた達なんて私一人で十分よ!!」


「……テメエどこまでも、なら倒してみろよ!!」

 ディアスは間髪入れずに神技を発動しようとする、正直結はこれ以上の攻撃に耐えるのは体が持ちそうになかった。

 だからこそ、今この瞬間に己の意識の最奥に問い掛けた。



 ____「「……そうだね、一緒に強くなろうよ、そしたら私もお兄ちゃんを助けれるかな?」」



 もう二度とあんな思いなどしたくなかった、それは結にとって今も昔も変わらない。


 もう二度と自分のことで兄を傷付けたくなかった、それは彼女にとって今も昔も変わらない。


 そして今度こそは自分が兄を助けると決めた、その意志は確かにそこにある___



「私は――お兄ちゃんを助ける―――!!」



 _______!!


 猛風とともに結の周りは極光に照り始めると彼女の足場に突如として術式が構築される、それはつまり新介の時と同様に神技の覚醒を意味した。


「な、何だ!?急に様子が変わったぞ!?」


「あれは、雷……?」

 結の体には青の雷が漂い常に放電している状態になっており、二人はおいそれと彼女に近付くのは危険だと判断し攻撃を一度やめた。


「――出来た、神技の覚醒!」

 ようやくこの境地に達することができた。そう思うと結は今までの自分の努力が報われたことに感激に浸っていた。


「ふざけるな!!てめえみたいな素人が覚醒なんてするわけねえだろ!!そんなものは偽物だ!!」


「……それじゃあ、試してみる?」


「上等だ!!」

 ディアスは結に向かい神技『エスキャノ』を発動し散弾の攻撃を当てたが、結の体には一発も当ることなく物理法則を無視してエネルギー弾が彼女の周りを避けていたのだ。


「嘘だろ……!?」


「電磁シールドだディアス!!奴には普通の攻撃が通用しない!!」

 結自身ただ無鉄砲に放電しているだけだったが、結果的にそれが電磁シールドの役割を果たしある程度の攻撃は自分に当らないような効果を生み出していた。

 明らかに形勢が結の方へ傾くと、先程まで防御に徹していた彼女がいよいよ相手に攻撃を仕掛けようとする。


「行くよ……!!今度は私の番だ!!」


「逃げろロー!!近距離での彼奴(あいつ)の相手は無理だ!!」

 しかし結はローの逃げ道を塞ぐべく『レギオン』で通路上のシールドを張り彼を逃げ道を前方と後方だけにさせる。

 しかし前方には結が走ってローの下に向かっており、彼自身このまま彼女を迎え撃つしかなかったのだ。


「来い……!!このままお前を迎え撃つ!!」

 結に自分の攻撃可能範囲まで入り込まれたローは叩き潰すように棍棒を振り翳すが、そこには彼女の姿はなく一瞬の内に飛んで回避していた。


「何……!?」


「おりゃああああ!!」


 ____!!


「がは……っ!!」

 顔面を蹴り上げられたローはそのまま倒れてしまい、彼女の空手初段キックのおかげで戦闘不能となるのだった。

 それと同時に結は辺りのシールドを解除すると、影に隠れていたディアスが不意打ちで彼女の足場に術式を構築する。


『ディムーシェ』


「っ……!?何よ……これ……」


「ははは!攻撃が効かないなら状態異常ならどうだ!?お前の仲間もこれで無様に倒れたよ!!」

 結は激しい頭痛に見舞われ意識が朦朧とすると、完全に意識が喪失する前に放電をすることで自らの体を刺激させた。


「な、そんな馬鹿な!!無理矢理意識を戻したのか!?」


「……頭に気を付けて」


「っ……!?」

 ディアスが構築した術式の外に出ると、結は『レギオン』の構えを取り彼の頭を狙い撃つが間一髪かわされる。


「馬鹿がお前!!敵に情けとは良い度胸だな!!」

 どこに当てるかを告げた結の攻撃をかわしたディアスは次の神技の構えを取ろうとした、その時__



 _____!!



「っ……!!え……?」

 ディアスは自分の後頭部に何か強い衝撃が脳に直接伝わると、そのあまりの衝撃に思考を停止して腑抜けた声を出すしかないかった様子だった。


「な、んで……扉が……」


「だから言ったじゃん、頭に気を付けてって……」

 結はここに来た時にユピテルが破壊した鉄製の扉の残骸がディアスの後ろにあったことを見越して、わざと初手を外させることにより電気でドアを掴んだのだ。

 いくら神技での攻撃は避けたとはいえ鉄の残骸を後頭部に受けたディアスはそのままうつ伏せで倒れてしまう、直後に結も死んでないか心配になり彼が呼吸をしていることを確認すると安堵をした。


「捕獲成功~!!やった~♪」

 戦闘を終えた結は何かが吹っ切れたように喜び始める、何せ敵との対決の初戦が白星で終わったことは少しでも兄の為に働けている気がしたからだ。


 そして結と敵二人との戦闘が終わった頃、ユピテルも二階で攻防を繰り広げていたのだった。



 _____



「ああ愛おしい、やはりあなたは私が崇拝し寵愛した神だ!!そんな体になっても尚も際立つその美貌!!」


「気分を害すことを言うな、わらわはさっきから御主のせいで気分が悪いぞ」

 吹き抜けになった二階の手摺に立ってみせるユピテルはよほどシャーロットの性格が気に食わなかったのか、戦闘前に既に彼に向けゴミを見るような目付きをしていた。


「おや、それは失礼。てっきりもう勝負はついているものかと思ったもので――」


「っ……!?」

 ユピテルは突如として視界が霞み右腕に激しい痛みが生じているのを察すると、自分の腕が無数の槍で串刺しにされていた光景を見据えた。



 ______!!


 しかし気迫とともにゾオンエネルギーを周辺に放出すると、若干息を荒げながらも自分の右腕は傷一つ付いてないことに気付く。



「はあ……なるほど、随分と変わった神技を使うようじゃの……」


「これはこれは、まさか私の幻影系の神技を一瞬で見破るとはさすがですね!」

 ユピテルは霞んだ瞳を擦り術式を構築していたシャーロットを見据えると、自分も術式を構築して眼前の術式を無効化する神技を発動する。


『インエフェクト』


「っ……無効化しましたか、だが残念、あなたを仕留める神技はもう発動している!」


「何……!?」

 ユピテルは彼の幻影により気を取られていたせいか、シャーロットが天井に構築していた術式発動に気付いた時には自分の体に異常を来たしていたことを自覚した。


「ゾオンエネルギーの強制放出、私の幻影で注意を逸らしてなければ発動できなかった神技ですよ。残念ですがあなたの負けです」


「っ……」

 ユピテルは体内のゾオンエネルギーが強制的に放出される神技を受けてしまい、そのままシャーロットが立つ通路で跪いてしまう。


「ああ、やはりサタン様は偉大だ!神だった時はあんなに遠かった彼女も、今となっては私の手元に届く程に近い存在なのだから!」


「……まさかわらわはここまで、無力となっていたとはな」

 ユピテルは己の無力さを恥じシャーロットの目の前で地面に手をつけていると、彼はユピテルに止めを刺すかのように再度幻影系の神技を発動しようとした、その時だった



 ______!!



「……!?」


「本当に屈辱じゃよ、御主にこの姿を晒すことがのう」

 ユピテルの体には回路のような模様が浮かび上がると、大気中のゾオンエネルギーが彼女に収束されていきシャーロットの術式すら解体し吸収し始めた。


「な、何ですか……このありえないゾオンエネルギーの吸収率は!?」


「生憎わらわの体はゾオンエネルギーに好かれる体質でな、完全に枯渇すれば瞬間的に満タンになるのじゃ」


「な、なら!その体の模様は何だというのですか!?」


「ああ、これは本気を出せないわらわが僅かにリミッターを外すことができるように考案した方法じゃ。一時的に体内に掛けられた呪いの一部を無効化している」

 その影響で体中にゾオンエネルギーの模様が一時的に浮かび上がった状態が今に当たる、そしてユピテルも僅かにリミッターを外すことができるが長くは持たない代物だったのだ。


「悪いがさっさと終わらせてもらう、このモードは長く持たんからのう」


「あ、ああ……!!何故だ!!何故私はあなたを愛しているというのに、あなたは私を拒もうとする!!私ほど神の最奥であるあなたの偉大さを知ってる者はいないはずなのに!!」


「御主の純愛は酷く歪んで見えるのう、後わらわは御主のような輩はタイプじゃない」

 それだけを言い残し、ユピテルは神技を発動した__


 ____『アギレウス』


 爆風がシャーロットに襲い掛かるとそのまま壁を抉り、奥にある鉄格子にぶつかりようやく静止した。

 しかし彼の体はユピテルの神技でボロボロになってはいたが、シャーロット自身まだ戦意は喪失してはいない様子だったことにユピテルも呆れ顔をしてしまう。


「……まだだ、こうなったら力尽くであなたを私のものにしてやる……!!」


「呆れたの、純愛の求道者がどこへやら。これでは偏愛を極めるストーカーじゃ」


「愛してる者に振り向いて欲しいという感情は純愛ですよ!!少しだけ痛い目みてもらいますがね!!」

 するとシャーロットは懐に隠し持っていたボタンを押すと、彼の背後の鉄格子が上に持ち上げり中から巨大な魔獣が姿を現した。


「出て来なさい!我が研究所(しろ)の最高傑作、魔獣合成獣(キメラ)よ!!」

 ライオンの頭に山羊の胴体、そして尻尾が蛇で体が構成されていた合成獣(キメラ)は体長10mを優に超える巨大生物であり、その怒号が入り混じった叫びも研究所内に響き渡る。


「……全く、御主も救えないというのか」

 ユピテルは片手を前に出し、神技を発動する。


 ___『ヘルスキア』



「……え?」

 ユピテルの神技が発動すると、合成獣はピタリと全身を止め徐々にその体から斬り込みが浮かび上がり血が床に浸ってくることがシャーロットにも伝わった。


「悪いな、御主もわらわにとっては救えない部類だったようじゃ」


「ああ、が……!!」

 ついに合成獣(キメラ)の体が両断されると、シャーロットも自分の体が中心を沿うように斬り込みが入り血が噴出し始めているのが伝わってくる。


「そんな、そんなああああ!!」


 グシャ____


 シャーロットはユピテルに無惨に殺され、その体は原型を止めることなく一刀両断されていた。



「ユピテルちゃん!こっちは片付いたよ!」


「おお、今そっちに向かう」

 するとユピテルは結のいる一階まで飛び降りると、縄で拘束された二人が結に引っ張られているという異様な光景を目の辺りにして思わず驚嘆してしまう。


「結、御主は意外と良い働きをするな。神技の覚醒に成功したのか?」


「うん!ユピテルちゃんに教えてもらった『レギオン』を使えるようになったよ!」


「ほう、それで実際に失われた称号(ロストシンボル)の構成員を確保するとは大した奴じゃな」


「そ、そうかな……えへへ……」

 功績を褒められた結は嬉しさを抑えきれないかのようにその表情を顔に出してしまうが、一度褒めたユピテルはすぐさま捕らえた二人の方に注目してみせる。


「おい御主等、新介達はどこにいる?」


「……チッ、この先を進んだ最奥の牢獄だ」

 ユピテルが尋問をするとボロボロだったディアスは観念して新介達の居場所をすぐ吐いた、どうやら彼自身ユピテルを下手に刺激して支部長のようにはなりたくなかったようだ。


「結、御主は先に進め。わらわはまだこいつらに聞かなければならないことがある」


「……分かった!ユピテルちゃんも後で来てね!」


「ああ、それと、あくまでこれから先は新介達の救出を優先するのじゃ。まだ敵がいるかもしれんからのう」

 ユピテルは確実にまだ敵がいることを知っていた。何故ならサリエルを攫ったガイゼルの姿がどこにも見受けられなかったからだ。

 それを聞いた結は敵がいる可能性があることなどお構いなしに新介達の方角へと突っ走るのだった。



 ________


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