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古代の神技

 神技の修得、この課題に直面することになった二人は間違いなくこれからが正念場であった。


 新介はかつて一回、結はまだ発動したことがない上に覚醒のトリガーとなる部分も判明していないという状態であった為に持久戦になることは明白だ。


「質問なんだけど、自己供給が出来なくても本当に大丈夫なの?」


「なら結、今この場でゾオンエネルギーを収束してみるのじゃ」


「別にいいけど」

 結は自分の手のひらにゾオンエネルギーを収束させると、先程幹を抉った木に再度エネルギーの収束体をぶつけた。新介は何故毎回物にぶつけたがるのかイマイチ分からなかったが、それもまた武道の精神などだろうと強制的に納得した。


「御主、先程ゾオンエネルギーが空間にあることを意識したか?」


「いや、何というか手にエネルギーが集まることを意識したっていうか……そう言えばしてないかも……」


「自己供給の本質はそこにある、例え完璧ではなくても何度か成功すれば必ず体が慣れてくる。すると自然にゾオンエネルギーが体内に供給されるというわけじゃ」

 その説明を聞いた新介は自分にも当てはまっていたことに気付かされる。

 あのウォーミングアップでの戦闘の際、彼自身もそれほど空間意識をすることなく簡単に身体強化ができたのも裏付けることができた。


「だから完璧じゃなくてもそのうち完璧になるというわけじゃ、御主にも神技を修得する為の修行を受ける権利は十分にある」


「そっか、なら良かった」

 結は胸を撫で下ろし安堵の表情を見せた。


「そう言えば、私が修得する神技って結局何なの?」

 実際結は何の神技を修得するのか昨日から楽しみにしていて、彼女の御所望である属性系かつ強い神技という条件をユピテルがどれだけ再現しているのかが気になっていた。


「ああ、御主には『レギオン』という神技を身に付けてもらおうと思う」


「レギオン?」


「雷を放電する神技じゃ、神技としては強力じゃぞ」


「な、何それ何それ!凄い強そう!早く私に教えてよ!」

 すると結は目をキラキラと輝かせ早く教えてくれるように懇願する、彼女自身能力の愛らしさなどは関係なく単純な強さで惹かれているところを見ると心はかなり少年地味ている。


「お、おい、興奮し過ぎだろ」


「だって雷だよ!?絶対強いし相手とかすぐ気絶させられそうじゃん!!」

 彼女は稀に危ない発言をする上に、妙な拘りを持っている為に新介はたまに妹のことが心配になることがある。しかし学校では友達はいるらしいので新介は彼女達の心の広さに尊敬の意を込めることもあった。


「ならまずは結から教える、『レギオン』の構え方はこうじゃ。後は腕の先にゾオンエネルギーを収束させるように集中するのじゃ」


「えっと、こうかな……?」

 結はユピテルの指示通りに正確な神技の構えをとったが、ただ目の前でゾオンエネルギーが収束するだけで術式すら発動することはなかった。


「ちょっと、何で神技発動しないの!?私の雷!!」


「……やはりな、御主にはまだ決定的な何かが足りない」

 ユピテルにとってこの程度の事は想定の範疇ではあった様子だが、少なくとも結本人には神技の覚醒が起こらない原因に心当たりはなかった。


「どういうこと?」


「神技の覚醒には必ず各々のトリガーとなり得る要因がある、代償とも言えるがな」

 新介の時の事例で例えるならば、あの時新介は実の妹を失った『代償』とヴァンパイアが彼の逆鱗に触れたという『要因』があったからこそ神技の覚醒に成功した。

 結にはまだ双方のどちらかの条件をクリアしていない状態である、例えそれが嘗て王の器の所有者だとしても簡単な問題ではなかった。


「……お兄ちゃん、どういうこと?」


「ほんっと理解力無いな、要するにお前にはまだ何かが足りないってことだよ。神技を使いこなすにはちょっとしたきっかけみたいなのが必要ってことだ」


「じゃあお兄ちゃんは何かきっかけがあったの?」


「……さ、さあな。多分あったんだろうけど忘れた」

 結にそう問われた新介は彼女があの時自分の戦いを見ていないことを思い出した。

 思えば自分が神技を覚醒した要因が妹にあり、それを目の前にいる本人に公言することは随分と気恥ずかしい思いに駆り立てられた。


「次に新介じゃが、御主には廃墟の館で使った神技を習得してもらう」


「ああ、あの神技か」

 正直記憶も曖昧だった新介はあれがどういう神技だったのかよく分からない部分もあり、一度使用はしているものの自覚はほとんどないという状態であった。


「御主が使った神技は『ラグオス』、あらゆる物体の状態を変化する神技じゃ」


「おお、使い方によっては強そうだな」

 結が扱うことになるだろう『レギオン』に敵うものかは分からないが、使い方次第では強力なものになるし汎用性も高いだろうと想像を膨らませた。


「以上じゃ」


「……は?」


「助言すべきことは以上じゃ、と言ったのじゃ」

 一瞬ユピテルの言ってることが理解できなかった、何せまだ彼女からはどういった構えをとるのかとかその際にあたってのコツなど聞かなければならないことがたくさんあるからだ。


「いや、どういう構えをとったらいいんだよ?」


「知らん」


「知らんって……」

 ユピテルが知らないなら新介自身が知るはずもない、第一全能神である彼女が知らないというのもかなりおかしな話でもある。


「御主の神技は『古代の神技』と呼ばれていてな、その発動方法が書かれた伝書は既に消滅しておるのじゃ。唯一持っていた所有者も使用方法を誰にも伝えずにこの世を去ってしまっての、いくら全能神のわらわでも二つの神技だけは習得出来ずにいる」


「二つ?」


「ああ、正確に言うならその人物が生み出した二つの神技はわらわも扱えぬ。最もどちらも公式な術式ではないがな」

 ユピテルの言い分では『ラグオス』を製作した人物はその術式を公式に発表する前に死んでしまい、伝書もどこかに紛失してしまったというかなり厄介な状況だった。


 よってそれらの神技は『古代の神技』として後世に遺すというより消していい記憶として扱われるようになり、長年存在しないはずの神技として放置されていた代物であった。


「じゃあ、どうしろって言うんだよ?」


「はっきりとは分からぬが、まだ御主に戦う意志があるのなら、神技が自ずから問い掛けてくれるはずじゃ」


「神技が?そんな馬鹿な……」

 新介はいくらなんでもそれは言い過ぎだと思うが、もはやそれを否定したところで何がどうなるわけでもないことに気付かされる。


「御主はその神技に選ばれたんじゃ、力を望めば必ず神技が答えてくれる」


「……乗り越えてみせるさ、こんな所で止まってるわけにもいかねえからな」

 自分達が元の世界に戻るにはユピテルの計画を遂行し、もう一つの個人的な目的も果たさなければならない為にこの程度で足踏みしている場合でもなかった。


「そう言えば、御主には探し人がいたんじゃったな。名前は何と言うのじゃ?」


「美織だ、多分召喚に俺も巻き込まれたってことはあいつも巻き込まれてると思う。そいつも探さないとな……」

 しかしそれは想像以上に困難なことであり、ましてや彼女が生存している可能性を考慮すると再会できる確率は相当低確率だった。


「それって、お兄ちゃんがあの夏祭りで一緒にいた人のこと?」


「うん……って、何でお前がそのことを?」

 しかし疑問に抱いたそのことは瞬時に解け、新介の脳内で嘗て分からなかった部分が点と点が繋がり線となる感覚が広がる。


「え、いや、それは何というか……」


「……お前、あの夏祭りに来てたろ?」


「べ、別にお兄ちゃんを追ってきたわけじゃないから!これは本当に!」

 長年の付き合いから彼女は嘘をつけるほど器用でないことを知っていたが、少なくともあの展望台の近くに結が居た事を考慮すると素直に遊んでいたという訳でもなさそうだった。


「でも、あの展望台に居たのは事実だろ?」


「う、うん……ごめんね?何かさ……」

 新介の声質から少し怒っているのを察した結は珍しく素直に謝ると、直後に妹の頭を垂れた姿を見た新介はゆっくりと溜め息をつき彼女の頭をポンポンと叩いた。


「まあ、少なからずこうなってたわけだし。お前が近くに居てくれただけでも良かったよ、じゃないと俺何も出来なかっただろうからな」


「……本当、お兄ちゃんってずるい!」


「はあ?」

 一体何のことを咎められているのかイマイチよく分からなかったが、結本人は怒りながらもどこかで喜びを噛み殺している表情で頬を膨らせていた。


「じゃあお兄ちゃん、今度はどっちが早く神技を習得できるか勝負ね♪」


「いいぜ、今度こそは負けないからな!」

 互いに強くなることを誓った二人は、今日もその約束を果たす為に修行に励むのであった。


 ______






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