神々の戦
神話より
この世界を創りし神、すなわち創造神は神々の星に三つのものを送り込んだ
一つは生命の樹、もう一つは神話の書
そしてもう一つは、一人の少女――
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終戦の地-エルサレム-
その日、まるで戦争のように轟く爆音が五万年ぶりにその地で響き渡る。
戦火の如く地を燃やす豪炎、空間を支配するように反響する衝撃波、一人一人の正義を掲げ彼等は立ち上がった。
「ディグス!! こっちももう持ちそうにない!!」
「持ち応えろ、そっちはアズラーに任せるんだ!!」
一方では死神同士の鎌の打ち合いが行われ、既にエルサレムはかつての戦場のように火花を散らす。
一方では炎で体を燃やし、大地を燃やすように火を放つ。
一方では水を放ち、一人の女に狙いを定め攻撃を当てようとする。
一方では十字架を持ち、この戦乱を信仰心で止めようとするかのように祈る。
____!!
「さすが死神家二十三代目当主……いや、候補だったかな?」
「……」
アズラーが死神と打ち合う中、ディグスは神々を集め彼女への対応策を伝える。
「ほ、本当にあれをやるの……?」
「仕方ないだろ、もはやこれしか対抗策はない」
「来るぞ……化け物が……」
燃え盛る豪炎の炎の中、ふと姿を現したのは桃色の髪色をした女だった。
「どうして分からぬ?何故わらわの言うことに耳を貸そうとしない?」
「あなたこそ、奴等と戦争なんてしたら何万人の犠牲者が出ると思ってるのですか!?」
「分かってないのは貴様達だ、いつまでも逃げていては何の解決にもならんぞ?」
すると六人の神々は広範囲の円形としてユピテルを包囲した。
そしてアズラーも死神の不意を突いて、神々が一定の間隔で並んでいる円形の陣に向け蹴りを入れる。
「っ……すいませんユピテル様……」
「さすがはG7じゃ、わらわをここまで押し通すとはな」
桃色の髪色が特徴的なユピテル、死神の鎌を持ったサリエルはお互いの背中を守る形で合計七人の神と対峙していた。
「あなた方は油断し過ぎです、自らの力を過信しているのが弱点だと思われますが」
「……御主、誰に向かって減らず口をたたいておるのじゃ?御主らが束になったところでわらわには敵わない」
「それなら、今から起こることを防いでくださいよ!!」
ディグスを筆頭に七人の神が手の構えを取ると、ユピテルとサリエルが立っている地面に術式が浮かび上がる。
『ロストエージ』
「な、何じゃ!?」
すると二人の体に電撃が襲い、何も出来ないまま発動した攻撃を受けるしかなかった。
「ああああ!!」
「そんな、わらわが……しくじったというのか……」
ユピテルとサリエルのG7からは見受けられなくなり、地面に衣服だけが残された。
「体ごと消滅したか」
「後処理が大変だな、この人天界でも重要人物だから」
少なくとも確保を望んだが、自分達が発動した攻撃がこれほどまでの威力を発するとはディグスは思ってもみなかった。
「取りあえず、あの御方達に連絡しておけ。全能神ユピテルは死亡したと」
「了解……」
その時、天界全土に地響きが伝わるほどの巨大な揺れが世界を包んだ。
________!!
「な、何事だ!?」
「ディグス!!大丈夫か!?」
ディグスは急いで状況を確認するが、一体何が起こったのか皆目見当がつかない様子だ。
「ガルシャ、貴様か?」
「……違う、上を見ろ」
「上だと……っ!?」
ディグスが上空を見上げると、そこには多くの漆黒が空を包む。
漂う雲は漆黒の中心から渦を巻くように回り、まさに人知を超越した出来事である。
「あれは……」
「空間が歪んでいる、これほどの技をできる者など神にもそうはいない……」
そして空間の歪みに一筋の光が天界の都市であるセントラルに差し込んだ。
「何なんだあれは……」
「戻るぞ、セントラルで何か起こったのかもしれない」
「ああ、分かった」
G7は光が差し込んだセントラルに急いで向かうのだった。
――「ユピテル」
G7の神々が去ったエルサレムの地に、黒のローブを着た怪しげな人物が立つ。
「お前にはまだ、利用価値があるのでな……」
するとローブの者は手の構えを取り、ユピテルの衣服に向けて術式を発動した。
『サーナ』
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