#008「メンテ不足」
@機械室
チアキ「出席は取らないし、座席指定も無くて、飲食も自由。おまけに宿題や提出物も無い。中学に比べれば、グッと自由度は増したっすけど、まだまだ束縛感があるのは、何でなんすかねぇ」
ダイチ「定期試験と、制作か論文の卒業課題があるからだろう?」
チアキ「それも、そうっすけど、自分としては、前期にしても後期にしても、あいだに祝日や短い休暇が挟まるせいで、どうも生活リズムが狂うんすよねぇ」
ダイチ「そうだな。ゆっくり羽根を伸ばせないよな」
チアキ「いっそのこと、三月一日から八月一日までを前期、八月三十一日から一月三十一日までが後期にして、ポコポコ休まない代わりに、二月と八月にまとめて休めることにするってのは、どうっすか?」
ダイチ「ホォ、なるほど。前期も後期も、ちょうど二十二週間、百五十四日だな。ウン。悪くない」
チアキ「それで、十回授業があったら十一回目に試験ってことにするんっす」
ダイチ「そうなると、だな」
――ダイチ、手帳を捲る。
ダイチ「前期の中間試験が、五月十日から十六日で、期末試験は、七月二十六日から八月一日。後期の中間試験が、十一月九日から十五日で、期末試験は、一月二十五日から三十一日になる訳か」
チアキ「長期休暇中は、教員も生徒も、何をして過ごしても構わないことにすれば、集中して勉強するようになると思うんすけどねぇ」
ダイチ「たしかに、半端に休むより良いかもな」
チアキ「早く終われば、たくさん遊べるとなれば、効率良くササッと片付ける努力をするようになるっすよ」
ダイチ「早く終わると、別の作業も手伝わなければならないせいで、もたもたノロノロと時間いっぱいまで掛けてするようになるより、断然マシだな」
チアキ「能率より、仕上がりを求める几帳面な人間もいるっすけどね。――まだ終わらないんすか、琢さん」
タクミ「もうチョッとだけ。これだけ片付けてくるよ」
ダイチ「掃除当番なんて、適当に済ませりゃいいのに。――何をゴソゴソやってるんだ、チアキ?」
――チアキ、頭に新品のモップを乗せる。
チアキ「一発芸。イメージチェンジ失敗」
ダイチ「アフロか、パーマか。それともドレッドヘアーなのか?」
チアキ「ご想像にお任せするっす」
ダイチ「いずれにしろ、理髪師の腕が悪すぎるな。オッ。終わったのか、琢己?」
タクミ「本音としては、もう少し整頓しておきたいところだけど、あんまり待たせるのも悪いから切り上げるよ。面白い格好になってるけど、二人で何をしてたの?」
チアキ「ハーイ、たくサン。マイネーミズ、ボブ・マティソン・マクドナルド・ジュニア」
ダイチ「そこのエセ英米人は、放置したままで良いぞ」
タクミ「フフッ。エム・シーか、ディー・ジェーか。あるいはストリートダンサーかな?」
チアキ「ヨウッ、ヨウッ。ヨーチェケラッチョッ。チェケナベイベー。フゥ!」
ダイチ「えぇい。俺を巻き込もうとするな。調子が狂う」
タクミ「おやおや。ボルトが緩んでるのやら、歯車が噛み合ってないのやら」