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#006「ナンマイダ」

@保健室

タクミ「養護教諭は不在、と」

チアキ「オー、ジーザス」

ダイチ「天を仰ぐな。まったく。膝を擦り剥いたくらい、唾か軟膏でもつければ治るってのに」

タクミ「さすがに、それは不衛生だよ、大地くん」

チアキ「そうっっすよ。ちゃんと消毒して絆創膏を貼らないと雑菌が繁殖するっす」

ダイチ「潔癖症め。傷痕は勲章だぞ?」

タクミ「名誉の負傷だとでも? 発想が古いよ。――はい。ちょっと染みるよ」

チアキ「富国強兵って感じっすね。――ギャッ」

ダイチ「いちいちリアクションの大きい奴だな。お笑い芸人か。ちょっとくらい我慢しやがれ」

タクミ「怒ることないのに。怪我人は労わらないと」

チアキ「うわぁん。パパが苛めるよぉ、ママァ」

ダイチ「クダラナイ小芝居をするな。養成所に入学させるぞ」

タクミ「おぉ、よしよし。パパには、あとで口紅のついたワイシャツとキャバレーのマッチを片手に問い質して、ウンと懲らしめてあげますからねぇ」

チアキ「やったぁ」

ダイチ「えげつねぇ浮気追及だな。てか、琢己の発想のほうが、よっぽど古いじゃねぇか」

タクミ「昼のサスペンスは、朝のワイドショー、夜のバラエティーと並ぶ、お茶の間の定番だよ」

チアキ「専業シュフの息抜きっすよ」

ダイチ「二人とも高校生だろうが。まぁ、いい。専業シュフか。長引く不況の中で、少数派になりつつある存在だな。家事に育児、介護に地域活動。こうした無償労働にも、本来は相応の対価が支払われるべきなんだよな?」

タクミ「アンペイドワーク問題のことだね。自営業の家庭の家事手伝いや、任意と言いながら半強制的に課されるサービス残業、災害時や祭典時のボランティアなんかも該当しそうだね」

チアキ「有志を募るのは良いことだと思うんすけど、企画当初からボランティアで大会運営人員を確保する算段で計画を進めたり、寄付だけで必要経費を賄うのは、善意を当てにしすぎだと思うっす」

ダイチ「たしかに、端から期待するのは、よろしくないな」

タクミ「でも、仮に、どんな些細な行為でも例外なく対価を支払わなければならないと法律や条例で明確に義務付けられたら、誰も他人に手を差し伸べず、また、誰も他人に頼るのを拒むようになりそうだね」

チアキ「代償目的だと思われたくないし、たとえ少額でも、出来れば支払いたくないものっすからねぇ」

ダイチ「もしも、今、それが校則で決まってたとしたら、琢己は千晶から治療代を受け取るか?」

タクミ「ウゥン。一度受け取って、あとでコッソリ返すかな」

チアキ「琢さんらしいっすね。でも、あとあとバレないっすか?」

ダイチ「教員が刑務官さながらの身体検査をしたり、刑事さながらの取調べを行なわない限りは、大丈夫だろう」

タクミ「もし、教員が生徒に、いま大地くんが言ったようなことをするようになったら、学校は監獄だね」

チアキ「オーマイガッ」

ダイチ「神も仏も無い人権蹂躙っぷりだな」


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