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#005「坊っちゃん」

@教室

ダイチ「重厚長大な古典文学や評論は退屈で、どうも抵抗感が拭えない」

タクミ「雑誌や短編小説とは違って、前置きが長いし、予備知識が必要だもんね」

ダイチ「それに、いまの当たり前が通用しないことを考えて読まなきゃいけないから、正直言って面倒くさい」

タクミ「異なる視点に立脚するためには、想像力を働かせる必要があるし、そうと解っていても、ついつい現代の常識という眼鏡で見てしまうよね」

ダイチ「時と場所が異なれば、英雄豪傑も犯罪者や病人扱いされる」

タクミ「それが書かれた当時の時代背景や文化や習慣の違いを加味して読み進めるのは、並の努力では難しいよね」

ダイチ「何か、手頃な本があれば良いんだけどなぁ」

タクミ「あっ、そうだ。この作品は読んだことある?」

  *

タクミ「たしかに、不良校ほど校則が細かいかもね」

ダイチ「そう思うだろう? 不良生徒に欠陥教員。破れ鍋に綴じ蓋だ」

チアキ「あっ、先輩。今日は琢さんのクラスなんすね」

タクミ「小説を返してもらったからね」

ダイチ「ジャージ姿だが、体育だったのか?」

チアキ「これからっすよ。着替えたところっす」

タクミ「そのジャージ、サイズが大きすぎない?」

ダイチ「言われてみれば、丈が余ってるな。借り物なのか?」

チアキ「そうなんすよ。苗字が同じだから分からないと思ったんすけど、気付くもんっすね」

  *

タクミ「制服や校則は、社会へ適応するための訓練というけれど」

ダイチ「生徒の管理を単純化したい教員たちの詭弁でしかないよな」

チアキ「体操着や作業着は、まだ分かるっすよ。でも、詰襟とスラックスに何の意味があるんすかねぇ?」

タクミ「フォーマルな場に相応しい身嗜みを学ぶため、かな?」

ダイチ「でもさ。卒業生の大半が旧帝大に進学して官僚になる某男子校は、制服や校則に縛られていないぜ?」

チアキ「怠け者の教員と、楽して儲けたい学用品業者との癒着が窺えそうっすね」

タクミ「貧富の差を気にしなくて済むように、という意味合いもあるらしいけど、学校指定品は決して安くないよねぇ」

ダイチ「それに、たとえ外見が同じでも、内面や人柄で育ちの善し悪しが判明するもんだ」

チアキ「無意味っすよね。上辺の体裁の良さを整えたところで、本質的な解決にはならないっす」

タクミ「日頃、見た目で他人を判断してはいけないって教育してるのにね」

ダイチ「自己欺瞞の塊だな。いい反面教師だ。おっ。予鈴が鳴ったから、自分のクラスに戻るわ」

チアキ「自分も、体育館に行かないといけないっすね。ところで琢さん。大さんに何の本を貸してたんすか?」

タクミ「有名な小説だよ。無鉄砲な江戸っ子気質の主人公が、愛媛に数学教師として赴任して、最終的に市電の技師になるまでを描いた痛快作さ」


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