#018「極端な双者」
@田中家
ダイチ「食中毒の集団感染を予防するため、餅つき大会が中止」
チアキ「騒音問題で、火の用心の夜回りと除夜の鐘つきが中止」
タクミ「遊具の撤去された公園で、近所の迷惑にならないように、静かにゲームをする子供たち」
ダイチ「おかしな世の中だな」
チアキ「灯油販売や廃品回収のトラックも、そのうち禁止されるかもしれないっすね」
タクミ「そうなると、焼き芋、蕨餅、豆腐、竿竹も駄目だね」
ダイチ「こうして、昭和以前の季節の風物詩が、どんどん姿を消していく訳か」
チアキ「現代人は、音と臭いに過剰反応しすぎっすよ」
タクミ「それだけ、暮らしと気持ちに余裕が無くなってきてるんだよ」
ダイチ「音が鳴るものなんて、幾らでもあるのに。風鈴、自転車のベル、ハイヒールや革靴、スーツケースのキャスター」
チアキ「無生物だけじゃなくって、蝉や小鳥も駆除の対象になりそうっすね」
タクミ「生理現象も不潔扱いされすぎだよ」
ダイチ「おならやクシャミは、まだ理解できるが、このままエスカレートすれば、人前で欠伸やシャックリまで出来なくなるかもな」
チアキ「あと、日本では大人になるメリットが無いっすよね」
タクミ「お酒、煙草、ギャンブル。これまで大人の嗜みとされてきたことは、どれもこれも心身に不健全であるとされてるよね」
ダイチ「おまけに、戦後は長男としてのメリットもない」
チアキ「精神が子供のまま、肉体だけ大きくなった人間が増えるのも納得っすね」
タクミ「期待される責任や、果たすべき義務は変わってないからねぇ」
ダイチ「依存症だの恐怖症だの言うけどさ。調べれば、誰だって何らかの精神疾患に該当すると思わないか?」
チアキ「その通りっす」
タクミ「一億総精神病社会だね」
ダイチ「唯一クラス会で自慢することが、溜まった鬱憤の捌け口って寸法だな」
チアキ「二十代前半は、受験と進学先自慢で、後半は、就職と入社先自慢。三十代前半は、結婚と配偶者自慢で、後半は、育児と子供自慢」
タクミ「四十代は出世自慢で、五十代は孫自慢。六十代は健康自慢で、七十代は介護施設自慢」
ダイチ「八十代は墓自慢だな。どんどん視野が狭くなり、言動が頑なになる」
チアキ「これから十年も経てば、もう一年経ったのかと思うようになるんすね、きっと」
タクミ「今年もあっという間だったよねぇ」
ダイチ「少年老い易く、学成り難し。そろそろ勉強に戻る、ぞ。コラッ。逃げるな」
チアキ「光陰、矢の如し。命短し、恋せよチアキっす」
タクミ「おやおや。……どちらが正解なんですかねぇ」




