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#013「貴なる戯れ」

@美術室

チアキ「どこか長閑な田園地帯に、退屈な日常から逃避できるアトリエかロフトが欲しいっす」

ダイチ「発想が、小うるさい家族に悩む中年親父と同じだな」

タクミ「ビジネス雑誌すら読まないくせに、立派な本棚のある書斎が欲しいって言うんだよね」

チアキ「一緒にしないで欲しいっすよ。誰にも邪魔されずに、心置きなく好きなことに没頭できる空間があれば良いと思わないんすか、先輩?」

ダイチ「どんな趣味を持ってるか知らないけどよ。学芸の神しかり、美の女神しかり。魅力に取り憑かれて、さんざん貢いでも見返りは僅かだぞ?」

タクミ「相手は、底無し沼かブラックホールだからね」

チアキ「一つくらいは、のめり込める趣味があるべきっすよ。人生を衝き動かす原動力は、個人の欲望っす。未曾有の事態が連発して当初の計画通りに進行ないから、未知数で面白いんすよ?」

ダイチ「その個人の欲望に振り回される周囲の立場にもなってみろ」

タクミ「当事者意識に欠ける無責任な主導者ほど、タチの悪い存在は無いね」

チアキ「常に社会的責任を抱えてたら、ストレスで胃潰瘍になるっすよ。酒も煙草も女もやらず、百まで生きた馬鹿がいるって言うじゃないっすか」

ダイチ「江戸の都々逸か。身を持ち崩すような馬鹿は、始末に終えないけど憎めないよなぁ、とでも言うと思ったか。歯を食いしばれ。舌を噛まないようになっ!」

タクミ「拳を下ろしなよ、大地くん。最近、やけに沸点が低いよ?」

チアキ「低気圧が接近してるせいっすか? それとも、クリスマス商戦が気に入らないとか?」

ダイチ「苛立たせてるのは、誰だ。……なぁ、千晶。中学の体育で、武術は柔道選択よな? しっかり受け身を取れよ」

タクミ「えっ、大地くん。何をする気?」

チアキ「憎悪は愛情の裏返しっすよ、大さん。アァレェ」

――ダイチ、チアキを巴投げ。

ダイチ「毛布の上に着地するようにしたから、怪我は無いだろう」

タクミ「衝撃は吸収されてるだろうけど、大丈夫?」

チアキ「気が済んだっすか? もう、自分のライフはゼロっすよ。ウゥム。腐ったオレンジみたいな臭いがするっす。あと、粉っぽいっすね」

ダイチ「彫像やキャンバスを包むのに使うものだからな。どうだ? 他人に振り回された気分は?」

タクミ「どこか痛いところは無い?」

チアキ「心配ないっすよ、琢さん。一本取られて、もうコリゴリっす」


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