#011「おこた会議」
タクミ「早く上がりなよ。寒かったでしょう?」
ダイチ「お邪魔します。――使い捨てカイロは揉んでも温かくならねぇぞ、千晶」
チアキ「お邪魔するっす。――ラニーニャ現象のせいで、今年は猛暑と酷寒に見舞われたっすねぇ。うぅ、さんむい」
タクミ「統計史上、記録的な積雪らしいね。――電源、入れたよ。どうぞ」
ダイチ「まだ十一月なのに、すっかり冬景色だな。窓が結露してる。――先に上着を脱げよ、千晶」
チアキ「夏の暑さを、冬に御裾分けして欲しいっすよ。――ウォッ。パチッと来た」
タクミ「日本家屋は、夏を涼しく過ごせるような構造だから、冬は厳しいね」
ダイチ「窓、扉、屋根。家屋の構造には、お国柄が出るよな。――ようやく温まってきたか」
チアキ「気候だけじゃなくって、徴税役人と市民との駆け引きも関係してるっすけどね。――炬燵が嬉しい季節っすねぇ。うぅん。ポカポカぬくぬくっす」
タクミ「それで話を戻すけど、何鍋にしようか? 昨年は、水炊きにしたよね」
ダイチ「白菜が大量に収穫できたし、豚肉も安く手に入ったからなぁ。でも今年は青物野菜が不作だったから、根菜、穀物、茸類が中心の鍋だな」
チアキ「それなら練り物を足して、おでんにするってのは、どうっすか?」
タクミ「良いかもね。鶏団子や薩摩揚げを買っておくよ」
ダイチ「おでん、か。悪くねぇな」
チアキ「決まりっすね」
*
タクミ「冬になると、きな粉とか餡子とか、お餅を連想させるフレーバーのお菓子が増えるよね。――苺大福の味、だって」
チアキ「チョコレート風味も多いっすよ。――これは、ミルクココア味っす」
ダイチ「手土産も持たずに上がり込んでるのに、菓子や飲み物を御馳走になって良いのかなぁ。そこそこ値が張るんじゃねぇの、コレ?」
タクミ「気にしなくて良いよ。どれも、ご近所さんや両親の知り合いからの頂き物だし、僕ひとりでは食べ切れないから」
チアキ「そうっすよ。遠慮なく頂いとくべきっす。グオッ」
ダイチ「少しは遠慮しろ、千晶。厚かましすぎるぞ、このっ」
タクミ「窒息するから、その辺にしときなよ、大地くん」
チアキ「ギブ、ギブ。……フゥ。そうそう。寒い夜は、韓国料理も定番っすよね。キムチチゲとかスンドゥブチゲとか」
ダイチ「唐辛子には、身体が温める作用があるからなぁ」
タクミ「中華料理にも広く使われてるよね。豆板醤、甜麺醤、エックス・オー醤」
チアキ「コチュジャン、七味唐辛子、ペッパーソース。そうだ。罰ゲームを用意するのは、どうっすか?」
ダイチ「ハハァ。さては、千晶。テストで負けたのが、まだ悔しいんだな?」
タクミ「懲りないねぇ」
チアキ「今度こそ、二人を一泡吹かせるっすからね」




