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#010「イメージ像」

@音楽室

タクミ「お互いに対する愛情や信頼が存在しないから、虐待や差別と捉えられるんだよ」

チアキ「嫌いな相手にされたら、どんなことだってハラスメントっすよね」

ダイチ「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、って奴だな」

タクミ「掃除は、もうお終い?」

――チアキ、ピアノの上で指を滑らせる。

チアキ「グランドピアノには、まだこんなに埃が残ってるザマスよ。四角い部屋を丸く掃くとは、まさしく、このことですわ。オホホホホ」

ダイチ「どこの山の手マダムだよ」

タクミ「ペルシャ猫でも抱えてそうだね。麹町、麻布、赤坂、四谷、本郷あたりかな」

チアキ「神田、下谷、浅草、本所、深川界隈の下町に対してっすね」

ダイチ「さっきの千晶ほど底意地が悪くて嫌味な金持ちは、小説やドラマの中だけの存在だろうけどな」

タクミ「貧乏人の溜飲が下がるように作り上げられた、架空の人物像ってところだろうね」

  *

ダイチ「五十二拍で構成された一分程度の曲を、八百四十回も繰り返すのか」

タクミ「一回が一分ジャストなら、理論上は十四時間で演奏できるけど、実際には十八時間以上掛かるんだ」

チアキ「正真正銘の嫌がらせっすね」

ダイチ「この作曲者の曲名は、どこか中二病っぽい響きだな」

タクミ「漆黒のベクサシオンとか、呪われしジムノペディとかかな?」

チアキ「フハハハハ。吾輩は、堕天使と悪魔の混血児にして、かの禁断魔術、滅亡の呪文の正統継承の末裔である。血に塗れ、緋色に染まりしマントを纏い、刧罪を背負うて産み堕とされし鬼才児の真の力を思い知るが良いぞ」

ダイチ「最初の笑いは、暗黒微笑って奴だろうな。召喚魔法でも始める気か、千晶?」

タクミ「右眼を抑えてるのは、邪気眼が疼くからかな。封印された魔物を解放する気かも。守護者と書いてガーディアン、救世主と書いてメシア、神聖妖精と書いてホーリーエルフ。そんなモンスターが現れそうだね」

チアキ「鬼神、魔神、破壊と創造。ノストラダムスと預言の書。ハルマゲドンに黙示録。マヤ暦、世紀末、終末論に末法思想」

ダイチ「もはや、何でもありだな。俺たちの知らないところで、眼帯にマスクをして、包帯を巻いて、模造刀を携えてたり、ピアスをして、刺青を入れて、安物のシルバーアクセサリーをジャラジャラいわせながら闊歩したりしてないことを祈る」

タクミ「どう見ても、堅気の人間らしくないものね。変質者か犯罪者だと思われるよ。立派な職務質問対象だ」

チアキ「これから、このクーゲルシュナイバーを使って、華麗なる黒魔術をお眼に掛けよう」

ダイチ「はいはい。話は署で、とっくり聞かせてもらおう。十五時十七分、犯人確保」

タクミ「お茶の間の皆様。たった今、連続少女誘拐拉致監禁暴行殺人事件の容疑者が逮捕されました」

チアキ「クッ。さては組織の手先だな。我輩は無実だ。公権力に額づいたりせぬぞ!」

ダイチ「これは重症だな。精神鑑定が必要だ」

タクミ「まずは、現実に引き戻さないといけないね」


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