#000「にわか信者」
@中庭
チアキ「実業高校の男子生徒には、聖夜に彼女がいない問題について」
ダイチ「運次第」
タクミ「右に同じ」
チアキ「冷たいっすよ、先輩」
ダイチ「俺ら男三人で話し合って、建設的な答えが出ると思ってるのか?」
タクミ「そうそう」
チアキ「そこを一つ、頼みますよ。これから日本産業の屋台骨を支える、大事な金の卵なのに、不遇すぎるっすよ」
ダイチ「だったら、女の尻を追っかけてないで、真面目に専門知識を勉強しろ」
タクミ「それが一番だよ。結論が出たね」
チアキ「話は終わってないっすよ。先輩は、彼女が欲しくないんすか?」
ダイチ「俺は農業科に入学した時点で諦めた」
タクミ「僕も工業科を受験した時点で諦めたよ」
チアキ「諦めが早いっすよ。なんで彼女をつくる努力を放棄しちゃうかなぁ」
ダイチ「つくりたければ、つくれば良いじゃないか。窒素とリンとカルシウムで」
タクミ「もしくは銑鉄かな」
チアキ「畑で収穫も出来なければ、工場で製造も出来ないっすよ」
ダイチ「人体錬成は、ちょっと現実離れしすぎか」
タクミ「チョッとだけね。ウゥン。現実路線で考えるなら、経済力かな。商業科なら、その方面に強いでしょう?」
チアキ「身も蓋も無いことを言うんすね。でも、どっちにしても元手が無いっすよ?」
ダイチ「なら、アルバイトしろ」
タクミ「その通りだね。地道に稼ぐのが手っ取り早いよ。うまくいけば、仕事先で彼女が出来る、かもしれない」
チアキ「かもしれない、なんすね」
ダイチ「不確実性の時代って奴だ。中身は、よく知らねぇけど」
タクミ「ガルブレイスだっけ? ゆたかな社会って本もあったよね」
チアキ「そうっす。いやいや、話をそらさないでくださいよ」
ダイチ「何の話をしてたっけ?」
タクミ「キャベツ畑かコウノトリかって話だよ」
チアキ「違うっすよ。来月までに彼女が欲しいって話っす」
ダイチ「どうしても彼女が欲しいのか?」
タクミ「残念だなぁ。仏教徒三人で鍋パーティーしようと思ってたのに」
チアキ「えっ?」
ダイチ「コタツで暖まりながら、一年を振り返ろうと思ってたのに。なっ、琢己」
タクミ「ねっ、大地くん。仕方ないから、二人で」
チアキ「それを早く言ってくださいよ。自分も参加するっす」
ダイチ「無理に予定を空けなくて良いんだぞ、千晶」
タクミ「そうだよ、千晶くん。彼女と充実した聖夜を過ごすと良い」
チアキ「前言撤回するっすよ。不確実な未来より、確実な将来を選ぶっす」