その19 にゃんだふるな異常気象
・・・ん?
ここは・・・?
なんか白い・・・
「狼よ!・・・あ、じゃなくて、おお神よ!目覚められましたか!」
ごめん、今頭がボ〜っとしてるから、ボケに反応できないんだ。
それで・・・
「君、誰?」
今なんかボケてたおっさんに、話しかけてみる。
「おお、私は、神の補佐をしておりま・・・」
「ふーん。へー。あっそ。」
「ひどっ!!」
あ、なんかこのおっさん楽しいや。
・・・あれ?
そういえば、僕が話してるの、ネコ語じゃないね。
・・・ちょっと確認中・・・
あ、やっぱり。
体が人間みたいになってるや。
背中に羽が生えてるあたり、ちょっと人外気味だけど。
「神よ、あなたは転生の儀を済ませ、晴れてこの神の座に戻られました。私は感激・・・」
「ちょっと黙ってて。」
「グバァ!?」
ちなみに今、僕は玉座に座ってるんだよ。
・・・で、状況を整理してみよう。
どうやら、僕は本当に神様になっちゃったみたい。
夢じゃなさそうだし、これは確実。
・・・でも確か僕は、崎中の人たちに捕まって・・・
あ、そっか。
そういうことだったんだね。
それじゃ、確認してみよっかな。
「ええと、僕を迎えに来た天使さん・・・でしょ?そこにいるの。」
「よく分かったな。流石はガンド様。あと、私にはヘルメルという立派な名前がある。」
玉座のそばの柱の影から、あの天使がでてきた。
あっちこっちにばんそうこ貼ってあるのが痛々しい。
すごいね、フーちゃん。
・・・じゃなくて。
「じゃあヘルちゃん、崎中興信所に僕探しの依頼をしたの、君でしょ?」
「(ヘ、ヘルちゃん・・・)そ、その通りだ。あくまで保険のつもりだったが、しっかりと役に立ってくれた。」
「ヘルメル、貴様、我らが神になんという言葉遣いを・・・」
「それで、僕は何をしたらいいの?」
「・・・我らが神は、こんな方ではなかった・・・」
「確かに、人格(ネコ格(?)が残るというのは予想外だったな。」
うわぁ、この天使さん、(?)とか使っちゃったよ。
「まぁよい。ガンド様は、地上を見守り、運を分け与えることで、人々の幸福のバランスを調整するのが仕事だ。」
「りょーかい♪それじゃ早速・・・」
それじゃ早速・・・♪
「「早速・・・?」」
・・・・・・
『翔太のヤツ、ホンマどこ行ってんや・・・!?』
『兄貴・・・』
『翔ちゃん・・・』
例の空き地で、三匹のネコがそろってうなだれている。
『翔太さん、一体どこにいるんだ・・・』
『翔太さん・・・』
回りには、無数のネコたち。
ペロ(たまにでてくる黒猫)やモモの姿も見える。
翔太は、とても慕われていた。
喧嘩は強くて頭も良く、上がり症だけどみんなに優しい。
最高のリーダーだったのだ。
・・・その人徳(ネコ徳)のおかげで、本当に翔太がネコなのかという疑いは生まれなかったんだとか。
今日も一日翔太捜索隊が組まれ、隣町まで虱潰しに探したが、見つからなかった。
皆、疲れきっている。
そんな時。
一匹のネコが、空がおかしいということに気がついた。
『あれ?空が・・・黒い・・・?』
『『は?』』
今は夜なのだから、空が黒いのは当たり前である。
しかし。
『あれ?月が無い?』
『それに、このゴーって音はなんだろう?』
ネコたちは、異変に気づき始める。
それは・・・
・・・・・・
ここは、日民家の食卓。
「はぁ・・・翔太、どこ行ったんだろ。」
「ホンマやな。今まで姿消すことはあっても、しっかりと書き置き残しとったのに。」
「せっかく、また新しい粉を調合したのに〜」
「あんたがそんなことばっかりするから、愛想尽かして逃げたんとちゃうんか。」
・・・この人たちは、ネコが書き置きを残すということに、いっさい疑問を感じないようだ。
ピンポーン!
誰かがやって来た。
「はーい!」
智奈が、よそ行きの声で対応する。
「すいません、K&T探偵事務所です。探し人について、お聞きしたいことが・・・」
「(最近行方不明が多いわね〜)どんな人ですか?」
「いえ、人じゃなくて、ネコでして・・・翔太さんはいらっしゃるでしょうか?神野が来たと言えば分かるはずですが・・・」
「(翔太、人気者ね・・・)いえ、今はいません。」
他にもっと突っ込みどころはあったはずだ。
「そうですか・・・他を当たってみます。それでは。」
神野 隆文は立ち去ろうとした。
コツン・・・パラパラパラ・・・
何かが、屋根の上に降り注ぐ音がした。
「あれ、何かな?」
「なんでしょうか?」
智奈と隆文が空を見上げたとき、それは本格的に降り始めた。
バラバラバラ・・・
「「!!?」」
・・・・・・
ここは、とある港。
肉屋の主である大垣 大地は、友人であるサラリーマンに会いに来ていた。
しかし彼は、その友人がどこに住んでいるのか知らないのだ。
どうやって会うつもりだったのだろうか?
・・・とそこで、犬の散歩をしている女の子がやって来た。
「ちょっとお嬢さん、緒曾井っていう人知らねぇかい?」
モロ不審人物だ。
あと、そのサラリーマンの名前は、緒曾井 浩孝というんだとか。
「緒曾井さん?知らないですね。ジロ、知ってる?」
『あ、緒曾井って名字のヤツなら、家の近くの・・・』
「知らないんだって。」
「はぁ、そうですかい。(なんで犬に聞くんだろうか?)」
『いや待て、知ってるって!!』
相変わらず話が通じていない。
「すいませんね。」
話を終わらせ、適当に歩いてゆく。
すると、なんか黒づくめの女の子を発見した。
「あなたも○△□教に入りませんか!?」
なんか、変な女の人から、宗教の勧誘を受けているようだ。
「いや、私は宗教って・・・」
困った顔をしている。
「姉さん!またやってるのかい!?」
次は男の人がやってきた。
「なによ佐軒。今いいところなんだから。」
「いいところって・・・あ、それより姉さん、実は仕事で一千万円ほど手に入ったんだ。それで旅行にでも行かないかい?」
「あ、いいわね・・・宗教勧誘の次くらいに。」
価値観にかなりの疑問を感じる。
・・・で、そのまま歩いていくと・・・
「あ、大垣じゃないか!久しぶりだな!」
声をかけられた。
捜していた緒曾井だ。
「おお緒曾井、おまえ捜してたんだ。実はな・・・」
緒曾井と大垣は話し始める。
その横の家の屋根の上を、二人の子供たちが駆けていった。
少し離れた場所で、呆然とそれを見る女性。
彼女は今日、勤め先の所長さんについてきたのだが、先ほどはぐれてしまってのだ。
しばし、薄暗い空を眺める。
そして、彼女は気づいた。
何かが、降ってくることに。
・・・・・・
その時、日本各地で、あるものが降った。
それは・・・
「「「『『『煮干し!!??』』』」」」
そう、大量の、空を埋め尽くさんばかりの煮干しであった。