その1 とある日民家の晩ご飯
とりあえず、おはようございます。
ネコの翔太だよ。
なんか外は暗くて時計は午後十時を示しているけど、目が覚めたらとりあえずおはようだよね。
今まで僕は、和室と呼ばれる部屋の窓際で気持ちよく寝てたんだ。
今までは・・・ね。
「あ、翔太、こんなところで寝てたのか!見つかんないわけだ!」
うん、どちらかというと、見つからないためにここで寝たんだけどね。
今、歩く騒音公害と化している男の子は、日民智貴(小六)。
僕がこの家で一番苦手とする人物なんだ。
とにかくうるさいんだよね。
寝てるとき以外で、黙ってるの見たこと無いかも。
「翔太、晩ご飯だぞ!」
いちいち叫ばないでよ、聞こえてるからさ。
それにもうちょっと寝たいし・・・・・・
「今日は煮干しなんだぞ!」
今行くよ〜
やっぱり煮干しっておいしいぜ!
煮干しサイコー!!
ん?いきなり訳の分からないこと言うなって?
ごめんごめん、煮干しを食べるとつい・・・
今僕は、日民家の居間の机の下の隅っこで晩ご飯(煮干し)を食べている。
ついでに、日民家の面々も遅い晩ご飯を食べている。
もちろん、智貴も一緒に食べている。
こんな時間まで起きてて、明日朝起きれるのかな?
あとそれと、よくしゃべりながらご飯食べれるよね。
さっきからずっとしゃべってるんだけど?
そんなふうに、智貴を観察していると・・・僕の煮干しの方へ、そろりと手が伸びてきた。
もちろんひっかいて撃退。
「きゃっ!!お母さん、翔太がひっかいた!」
「あんたが翔太の煮干し取ろうとするからやろ!何やってんのよ?」
今僕にひっかかれたのが、あの日記を書いた智奈ちゃん。
僕と同じくらいの煮干し好き。
でもさすがに、ネコの煮干しを取ろうとするのは・・・人としてどうかとは思うよね。
そしてそれを見て呆れているのが、われらが日民家の母である、日民英恵さん。
関西に実家があるとかで、いまだに関西弁を話すこの家の大黒柱であり、日民家の人間の中では唯一の通常人間。
ネコも含めれば僕もいるけどね。
え、何言ってるんだって?
当たり前のことを言ってるだけだけど?
これで日民家の人間は全部だよ。
父親はどうしたって?
お父さんはいないみたいなんだ。
僕が拾われてきた頃にはすでに居なかったし、英恵さんもそのことに触れようとしないから、僕もよく知らないんだよ。
なんか結構長い間話してたんだけど。
・・・まだしゃべってるよ、智貴。
いったい何をそんなに話すことがあるんだろうね?
・・・また手が伸びてきたよ、智奈ちゃん。
何でわざわざ僕から取ろうとするの?
・・・また呆れてるね、英恵さん。
ごくろうさん。
それと、智貴の話も少しは聞いてあげようね。
・・・・・・
ホント、この人たちは見てて飽きないよ。
やっぱり人間観察って楽しいね♪