その18 郵便と手紙とマタタビと
さて、今日は色々とふざけたことしてられない翔太だよ〜
え、そんなこと言って、余裕じゃないか、って?
そんなことないよ。
フーちゃんのおかげで、あの羽生えた人(思い出した、アレって天使ってヤツだね)の足止めには成功してるけど、あの人、あんな状態のフーちゃんと互角に戦ってるしね。
あ、今向こうの方で、火柱が二本上がって・・・いや、気にしない気にしない。
とりあえず、家に入って今後の対策をたてよう。
・・・・・・
特に何事も無く家にたどり着き、屋根を登っていると・・・
『翔太さん・・・ですね?』
と呼びかけられた。
見ると、すぐ後ろに、ちょっと白が多めの三毛猫がいる。
尻尾に茶色い紐が巻いてあって、ちょっとかわいい。
あ、なるほどね。
『郵便ネコさんですか。いつもご苦労さん。』
尻尾に茶色い紐は、郵便ネコの証。
郵便ネコとは、様々なネコ同士の届け物を届けることを生き甲斐とする、少し変わったネコたち。
ネコの社会は、このネコたち無しでは成り立たないと言っても過言ではないから、郵便ネコはみんなに尊敬を受けてるんだ。
それで、さっき僕は敬語を使ったの。
だからさ、こいつがあんな丁寧な言葉遣いするなんて!みたいな顔しないで。
誰?今、明日吹雪かも、って言ったのは。
・・・えーと、とりあえず話を進めるよ。
『ありがとうございます。で、用件ですが、神野 隆文様から手紙を預かっております。』
そう言って、郵便ネコは手紙を取り出した。
え、どこから出したんだ、って?
それは聞かない約束だよ?
『あ、ありがとございます。』
『私は次の届け物があるので、これで失礼させてもらいます。それでは。』
そう言うと、郵便ネコはシュタッという音を残して、視界から消えた。
・・・たまに思うんだけど、アレってホントにネコなのかなぁ?
向こうの火柱をいっさい気にしないという、大物っぷりを発揮してたし。
まぁいっか、とりあえず読もっと。
・・・以下、手紙の内容ね。
・・・・・・
翔太へ
拝啓、お元気ですか。
俺は死んでます。
目が死んでます。
金欠です。
そろそろ、このアパートも追い出されるかもしれません。
・・・で、挨拶は終わりにして、本題にはいるとしようか。
簡潔に言うと、崎中が動き出した。
翔太の捕獲に向かったのは、崎中 佐軒(名前の通り、崎中興信所の所長)というヤツと、寺澄 希田世(助手A)という女だ。
ヤツら、前お前の家に行ったときに写真を撮ったとかで、お前の顔は知っている。
それで、これからが重要だ。
崎中興信所で、ネコ探知機とかいうものを開発したんだとか。
そいつは、ネコの毛を入れれば、、そのネコの居場所を随時検索できるという、どういう仕組みか全く分からない代物だ。
で、どうやったか知らないが、ヤツらお前の毛を入手していてな。
要するに、お前の居場所はバレているということだ。
気をつけろよ。
それじゃぁな。
神野 隆文
・・・・・・
・・・とりあえず、大まかな内容は真剣なものだしね。
だから、特になにも言わないよ、僕は。
挨拶長すぎ&おかしい、とか。
どうやって調べたんだ、とか。
他にも気になることはあるんだけど。
・・・それは置いといて、と。
どうしようかな。
この手紙についてる写真を見る限りじゃ、さっきからあの電柱の影でこちらを窺っているのが、寺澄っていう人だね。
崎中所長は、前に家に来た人だよ。
多分、そこらへんにいるんじゃないかな。
さて、どうやって逃げ・・・
ヒュルルルル・・・
向こうから何かが飛んできた。
パンッ!!
それは、僕よりだいぶ上のところで炸裂。
そして、何かの粉が・・・降り始めて・・・
あ、思い出した・・・これって、マタタビっていうやつだよね・・・
・・・・・・
そこで、僕の意識はブラックアウトしたってワケだよ。
「にゃんだふる」を読んでくださり、ありがとうございます。
見ての通り、そろそろ終わります。
いえ、終わらせます。
後2話です。
多分。
それでは、また。
久乃 銑泉