その14 翔太の日記
お出かけ三日目。
朝、多分八時くらいに起床。
一旦朝御飯を食べに港へ向かい、良心的な漁師さんに魚を分けてもらう。
あくまで“分けてもらった”だけ。
無断ではない・・・ので。
・・・・・・
今日はみんな、一匹でどこかへ遊びに行ってしまっているんだ。
暇だよ〜。
えっ、最初のはいったい何なんだ、って?
実は、日記でも書こうかな、なんて思ってさ。
なになに、ネコは日記を書けないんじゃなかったのか、だって?
・・・・・・
・・・・・・
さ、さーてと、僕も久しぶりに人間観察でもしようかな〜♪
・・・・・・
朝方、この公園の前を通った一人のサラリーマン。
朝方といっても、もう通勤時間帯じゃないよ。
それなのに、すごくゆっくりと歩いてるんだ。
出勤時間が遅いのかなぁ?
「や、やばい、急がないと遅れる〜!!」
・・・どうやら、遅刻寸前で走ってたけど、とてつもなく遅かっただけみたいだね。
カタツムリもびっくりだよ
「お、遅れたら・・・」
遅れたら、クビとか?
「尻たたき一万回だ〜!!」
・・・尻たたき!?
しかも一万回・・・誰が叩くのさ!?
「遅れる〜!!!」
サラリーマンは走っていった。
えーと・・・お仕事、頑張ってね。
・・・・・・
昼頃、10歳ぐらいの子供が駆け抜けていった。
子供Aって呼ぶことにしよう。
その後を追いかける、同じくらいの年代の子供がもう一人。
こっちは子供B。
「おーにさんこーちら!」
このセリフから察するに、鬼ごっこをしているみたいだね。
ちなみに、今のは子供Bの言葉だったりするけど気にしない。
あっ、もうちょっとで捕まりそう!
「よっしゃ!タッチ・・・」
「つ、捕まるかっ!トウッ!!」
・・・子供Aの後ろ回し蹴りが炸裂。
「甘いっ!!」
子供Bは素早くしゃがみ、手を添えてキックの軌道をずらす。
そのまま両者距離をとり・・・
「10秒かぞえろよ〜!」
「いーち!にーい!さーん!・・・」
鬼ごっこが再開された。
子供Bが受け流すときに子供Aの足に触れたので、鬼が交代したみたい。
10かぞえ終わって、走り始める子供A。
わざとそこらへんで待っていて、鬼にあわせて走り出す子供B。
二人の子供は走り去っていった。
うんうん、平和な日常の光景だね。
・・・・・・
「もうジロ〜、あんまり引っ張らないでよね〜」
一人の女の子が、犬の散歩にやってきた。
犬(服を着せられてるけど、似合わないなぁ)はかなり紐を引っ張っている。
それにしても、ジローって変わった名前だね。
「ジロ、分かったから。早く公園に行きたいんでしょ。」
『なんだこの服!?犬は服なんて着ねーよ!早く脱がしやがれ!!』
全然分かってなかったりする。
あと、名前はジロでした。
「公園到着〜」
『だから、服脱がせろってば。』
女の子とジロが公園に入ってきた。
『ん?ネコの臭い?・・・こっちか!!』
ジロがいきなり走り出そうとする。
でも残念、それはさっきカモフラージュ用に置いておいた、僕の毛玉の臭いだよ。
「ジロ、待ちなさい!」
『がっ!?』
女の子が急に紐を引っ張った。
『クラッ!!何するんだっ!!?』
「ほら、ネコはあっちよ。」
こっちを指さしてる女の子。
なんでバレてるのさ?
『ネコ風情が、俺の縄張りに入ってくるなぁっ!!』
ジロが猛スピードでこっちへ駆けてくる。
めんどくさいなぁ、もう。
・・・にーげよっと。
・・・・・・
『今日一日の日記だよ。どう?』
今はもう辺りも真っ暗な時間。
ま、ネコには関係ないけどね♪
『どう?って兄貴・・・』
ちなみに今、三匹に僕の日記(今日だけ)を見せてあげてるんだ。
『なんちゅうか、なぁ・・・』
『なんで翔ちゃんの周りには、こう変人ばっかり集まってくるの?』
『変人じゃないよ、犬もいたもん。』
『『いや、違うって・・・』』
何が違うのかなぁ?
あ、そういえば。
『ねぇ、今日って三日目だよね。』
『そやけど?』
『英恵さんたち帰る日だよね。』
『そういえばそうですね。』
『九時くらいに帰るって言ってたよ。』
えーと、今は・・・
『八時半ね。』
ちなみに、車の置いてある場所まで走って三十分。
・・・・・・
『みんな、全力で走るよっ!!』
『『了解っ!!』』
・・・珍しく、四匹が一致団結した瞬間でした。