その12 4匹と海
「野球はどこのファン?」って聞かれたら、迷わず「南海キャンディーズ」って即答する翔太だよ〜。
あ、ちなみに、サッカーはよく知らないけど、確かパープルサンマとかいうチームがあったよね。
紫色のサンマってどんなのだろ。
おいしいのかなぁ?
そういうことで、今僕は車に乗っている。
え、さっきの話とどういう関係があるんだ、って?
フッフッフ、関係ないよ、全く。
・・・そんなことより、今日は珍しく日民家全員でお出かけすることになったんだ。
海辺の辺りに行くんだとさ。
僕も一回海に行きたかったから、車の荷台に忍び込んでくっついてきたってわけだよ。
って、まぁ、そこまでは良かったんだけど・・・
『翔太、海ってどんなところやねん。』
『あ、兄貴・・・なんかすごく気持ち悪いんすけど・・・』
『わ、私も・・・吐きそう・・・』
なんでこの三匹がここに居るんだろうね。
トラ吉とフーちゃん、見事に酔っちゃってるし。
・・・初めて車(しかも周りの見えないトランクの中)に乗って、全く酔ってないタママ君もすごいけど。
『海って泳げるところやねんてな。銭湯みたいなところかいな?』
なんで、泳げる=銭湯なのさ。
それに今は冬だから泳げないよ。
『・・・あ、兄貴、どこに吐いたらいいですか・・・?』
『ご、ゴミ箱ってないの?』
絶対吐かないでね、二匹とも。
あと、ゴミ箱はマズいんじゃないのかな?
『楽しみやな〜♪』
はぁ、まぁいっか、ついてきても困る訳じゃないし。
それに、元とは言えば僕のせいだからね。
僕が昨日口を滑らせたから、海を見たことがない三匹がついて行くって言いだしたんだもん。
しょうがないや。
『しょ、翔ちゃん、ゴミ箱無いなら隅っこで吐いてもいい?』
・・・でも吐くのはやめて、お願いだから。
・・・約一時間後・・・
やっと車が止まったよ。
海に着いたようなので、鍵を開けて外に出てみた。
どうやら、英恵さんたちはもうどこかに行っちゃったみたい。
『これが海ですか、兄貴!』
早速復活したトラ吉が感動して叫んでいる。
が、しかし・・・
『トラ吉、それはただの水たまりだよ。海はこっち。』
トラ吉は見ている方向が違った。
『ほへ〜、これが海かいな。えらいでかいねんな。』
タママ君も感動している・・・が、
『あれ、フーちゃんは?』
フーちゃんの姿が見当たらない。
『ああ、兄貴、フーならそこにいますよ。』
トラ吉が指した方を見ると・・・
『○※☆××〜』
あんまり見るべきじゃない光景が繰り広げられていた。
フーちゃんはすぐには復活できないみたいだね。
『とりあえず、フーちゃんが回復するまで待ってよっか。』
・・・三十分程経過・・・
『みんな、待たせちゃった?なんかものすごく気持ち悪くて・・・』
『別にそんな待ってないよ。暇で退屈で死にそうだったけど。』
『ご、ごめん』
『翔太・・・お前ってさりげなく酷いやつやな。』
やっとフーちゃんが回復したので、海の方へ行ってみることにした。
・・・・・・
ザッパーン!
『うわっ、なんやこれ!?』
『た、確かこれは波って・・・』
ドッパーン!!!
『どわっ!』
『な、流され・・・』
ジャッパーン!!!
『きゃっ!』
・・・
うんうん、良い光景だね。
波打ち際で遊ぶ三匹のネコ、絵になりそうだよ。
『しょ、翔ちゃん、最後に私を海に突き落としたでしょ!?』
『ふふっ、細かいことは気にしない。』
『細かくな・・・』
ザパーン!
『きゃあぁぁ・・・』
フーちゃんはそのまま流されていった。
『あ、流されちゃった。』
『ほっといていいんかいな。』
『大丈夫、だってフーちゃんだもん。』
『なんですかその理由は。』
『でもなんか説得力有るなぁ。なんでやろ?』
『タママ、なんで説得力有るのかな・・・!?』
タママ君の後ろにフーちゃんがいた。
いつの間に帰ってきたんだろう?
『す、すんまへん・・・え、なんで俺だけ!?理不尽やろ、それは!』
タママ君、ご愁傷様。
『こら、逃げるな翔太!ちょい待ち、なんでトラ吉までこっそり逃げ出してんねん!?』
退散〜♪
『ぎゃあぁぁぁ!!』
・・・・・・
そんな感じで今日1日が過ぎた。
え、帰りはどうしたんだって?
そういえば言ってなかったね。
実は英恵さんたち、二泊三日の泊まりがけできてるんだよ。
だから僕たちもお泊まりなんだ。
『お泊まりって・・・何歳やねんな。』
『三歳だよ〜』
『ネコですからね。』
『いや、そうやなくて・・・』
ふふっ、明日は何して遊ぼっかな?