2016.2
同じ中学に行くと思ってた。私立を受験するなんて知らなかった。バレンタインにチョコを渡そうと思ってたけど前倒しでお守りをあげた。気持ちは伝えなかった。
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「万能だなーこの御守。出産にも効き目あるとは」
夫が小さな娘を抱えて笑う。
御守も大変だ、20年近くこき使われて。
2016年2月1日 23:07
初めて会ったとき、彼は箸でポテトチップスを食べていた。
「だって指が汚れんだろ」
しかも割り箸とかではなくマイ箸。パスタもチャーハンもケーキも箸。カレーも箸。シチューはパンで皿を拭う。なるほど。
出会って1年経った頃、彼が私に朱色の箸をくれた。そうして私たちは。
2016年2月2日 21:19
暦上ではもう春だけど、春は嫌い。いくら木が芽吹こうが鳥が歌おうが蛙が顔を出そうが、暖かいと思えば寒いし目鼻は酷いことになるしもやっとして眠くなるし世間は何か浮かれるし。
「俺好きだけどな」先輩は笑うけど。
ぜんぶ春のせいだ。先輩が東京へ行ってしまうのも、春のせい。
2016年2月4日 23:13
アイロンかけは嫌い。なのに俺より上手いからといつもYシャツを押し付ける。お礼も言わないくせに!
「お礼ならちゃんと伝えてる」
はあ?いつですか!?
「タグ見てタグ。襟のとこの」
言われて見る、襟。ブランドネームの横にサイズを表す“39-82”
サンキュー、ハニー。
2016年2月7日 23:19
中学生の姉がくれた魔法の七色ペン。男子の名前を書くとその人と結ばれるって。人気者の彼の名前を書こうとしたらクラスの鼻たれ問題児が「おもしろいペン!」と奪って自分の名前をノートに書いた!わんわん泣いた私に慌てて謝った彼は。
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その後イケメンに成長し、今や見事私のBF。
2016年2月11日 22:28
今夜も私は部屋の電気を付けたままで寝る。
『あんまり入り浸ってもだらしないしケジメも必要だから』と中々来てくれない彼が、バイト帰りに「また付けっぱなしで寝て」と呆れながら部屋に来て消してくれるのを期待して。
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ガチャリと玄関の鍵が回される。私は彼の匂いを吸い込んだ。
2016年2月12日 23:13
嫌なことがあると彼女は大抵菓子を作り出す。そして泡立て器を回しながら笑って言うのだ、『これも人生のスパイス。波がなくっちゃ面白くない』。そう言いつつも決して傷ついてないわけじゃないんだけど。
奇しくも明日はバレンタインデー。嫌なことごと俺がそのチョコ食ってやるよ。
2016年2月13日 23:24
理系組の彼にチョコを渡して告白したら「俺も前から可愛いなと思ってた」とまさかのOK!もうふわっふわしちゃって無重力の宇宙ステーションにいるみたい!と笑顔の私に「そこ正確には重力あるから。すごい速度で落下し続けてるだけだから」と冷ややかな対応。でもそんなとこが好き!
2016年2月14日 16:01
さかあがりの練習をしてる。なんでできないのかなあ。
「おかあさんみたいにおしりが大きいのかな?」
「それおかあさんに言うなよ」
おとうさんがお手本を見せてくれる。おとうさんはわたしより大きいのにかるがる回る。
きっとおとうさんはその気になったら空も飛べるんだ。
2016年2月14日 16:11
※毎月14日はツイノベデー。今月のお題は「重力」でした
やさしいやさしいおかあさん。
「みーくんカバン持ってあげる」
「あいがと」
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優しい優しい母さん。
「みーくんカバン持ってあげる」
「いいって。てか母さんの持つよ」
「なあにいつもは寄越すのに彼女の前だからって」
「…」
ち、違う!渡さないと拗ねて面倒だから…!!
2016年2月15日 23:23
※↓「方向音痴」をテーマに4篇
当番で実験道具を片付けてるうちにチャイムが鳴る。
教室に戻ろうしたら、同クラの女子が廊下でうろうろしていた。半ベソで。
『迷って教室に戻れない』『同じような教室でわかるわけない』
…宇宙人を見る気分だ。
しかしその可愛さに、僕は彼女専属のナビゲーターを申し出た。
2016年2月20日 21:31
「彼の教室寄るから先に戻ってて」
友達の一言に私は戦慄した。制限時間は10分。たぶん大丈夫。大丈夫な筈。
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半ベソで廊下を彷徨っていた私を救ってくれたのは日直の彼。
「校舎で迷うって、どんだけ…」
笑ったお詫び、と彼は専属ナビゲーター契約をしてくれた。
…専属?
2016年2月20日 21:32
方向音痴の彼女。
「曲がる度に何か目印をつけろ」と練習がてらショッピングモールのトイレに行かせたが、本屋で待つこと30分。仕方ない、救出するか…
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「だって角に赤いバッグ持った人が立ってたのに立ってなかったから探して」
「目印は動かないモノにしろ」
道のりは長い。
2016年2月20日 21:33
今日は学校公開。『算数の時間に来るらしい』『うちは音楽が見たいって』みんなはそんな風に自分のママの話をしてるけど、うちは私とママでしっかり打ち合わせ済み。
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「3時間目ね、10:35に昇降口ね!」 真剣な顔のママ。迎えに行かないと私の教室までたどり着かないんだよね…
2016年2月20日 21:35
※↑想像を膨らませると全部繋がってみえるかも
ぎっこんばったん、おとうさんとシーソー。
でもおとうさんがぴょんってしないと私の足は地面につかないの。
うーんうーんとふんばってもういたまま。
「おかあさーん」
おかあさんが私の後ろにのる。
あれ?でも地面につかないよ。
おとうさんがわらった。
「体重かけろよー」
2016年2月21日 10:13
「れーんずぱんだいすき」
そういうとパパとママはニコニコとわたしにじぶんたちのぶんもくれるの。カワイイ♡っていいながら。
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小学生になった私はある日学校で喜び叫んだ。
「今日給食レーンズパンだ!」
それから私のあだ名はレーンズ。パパママ、何で直してくれなかったの…
2016年2月24日 22:21
こほんとマスクの中で小さく咳をして、隣の女子がのど飴の包み紙で何か折っている。てか器用だな。あんな小さいのに。あといま授業中なんですけど。
はい、と何故か完成品を次々渡される。鶴、手裏剣、騙し船。最後に渡されたのはハート型で。
…無言で筆箱の中にしまった。#包む日
2016年2月26日 21:58
毛布に包まれ眠っている小さな娘を受け取る。
「預かってくれてありがと」
「泊まってけば?」
「近いしまた今度」
実家から歩いて5分のアパートに帰る。
さて寝かせるかと布団の上で娘の毛布を剥くと。おくるみ。スリーパー。フリース。パジャマ。肌着2枚。
お母さん、包みすぎです。#包む日
2016年2月26日 22:10
※2(つ)2(つ)6(む)日、らしいです
「すきっ」
「だが断る」
そう来ると思った!だからこう切り返す。
「2/29に女の子から告られたら断っちゃダメなんだよっ」
彼はぽいっと100円玉を私に投げた。
「…なに」
「罰金払えばいいんだってよ」
ええっ
「こっこれ返す!」
「むーりー」
2016年2月29日 15:21
※昔のヨーロッパではそういう風習があったとか?
「えへへーでも100円もらっちゃったあ♪使わないで宝物にしようっと」