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めちゃ育った、謎。

お久しぶりです。

ごめんなさい。

相変わらずの亀更新ですが、よろしくお願いします。

 あれから5年たった。

 私はとっくに嫁き遅れとなり、桃太郎はすくすくと育った。



 ……すくすくと育った。



 桃を拾った川で、ここまでのことを思いかえし、思わず遠い目になった。


「あ、いた。母上ー!!」

「母上と呼ぶのはやめろって言ってるだろうが!」


 まだ母と呼ばれるような歳ではない。

 少なくとも、こんな大きい息子(・・・・・)がいるような歳ではない。

 私のことをふざけた呼び方で叫びながら駆け寄ってくる15歳ほどに見える青年に私は怒鳴りつけた。


「このようなところにいたのですね、母上」

「私の言ったことは無視か、おい」

「母上は母上です」


 悪びれることもなくにっこりと笑う奴を見て、私は大きく溜息をついた。



 ……さて、もうお分かりだろうか。

 私のことを「母上」と呼ぶこの青年。


 そう。

 こいつこそ、桃太郎だ。

 五年前、桃から生まれた赤ん坊だった桃太郎だ。



 ……桃太郎にかぐや姫レベルの成長速度が備わっていたなんて驚きだ。

 親になる覚悟はできていたが、こんなでかい男子に母と呼ばれる覚悟はできていなかった。

 ゆえに母と呼ぶのはやめろと言っているのだが、桃太郎は聞かない。

 なかなか良い性格に育った。

 

 しかも、めちゃくちゃ美形に育った。

 ご近所の若い娘さんの視線の鋭さといったら。

 さらにさらに、なぜか物凄く丁寧な言葉遣いになった。

 最大の謎だ。

 よく私を見て育ってこんな言葉遣いになったんだろう。

 子育てとは不思議だ。

 意味わからん。


 まあ、つまり。

 何が言いたいのかというと。


 桃太郎は物凄い好青年に育ったということだ。

 頭痛い。

 私が育ててなんでこうなった。

 ご近所さんからの縁談話をスルーするのにどれだけ私が苦労しているか…。


「どうかなさいましたか?母上」

「なんでもないよ、元凶」

「何のことでしょう?」


 私はもう一度溜息をついた。

 そして、桃太郎に手を差し出す。


「帰ろ」

「はい、母上」


 桃太郎ははにかんで私の手を握る。

 それを見て、不覚にも私はキュンとしてしまった。


 桃太郎は猫かぶりが得意な(一見)好青年。

 私はそう思っている。

 

 しかし時々見せる桃太郎の子供らしい表情を見るとこう思わずにはいられない。


 うちの子可愛い。世界で一番。


 ……この五年で世の中の親馬鹿の気持ちを理解した。



 まあ、そんな感じで私は桃太郎と幸せな生活を送っている。

 

 ……この日々が壊されるときはいつ来るのかと、おびえながら。




(母上?どうかなさいましたか?)

(……いーや?なんでもないよ。桃太郎は可愛いなあと思ってただけ)

(母上、私は男です)

(知ってるよ。でも親にとっては子は男だろうが女だろうが可愛いんだよ)

(…………)


 









ありがとうございました。

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