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七章

 鋼鉄の箱の中で、猫が眠たげに欠伸をしている。


「ふにゃあ。ハンロンとはねえ、なかなか気が利いているじゃないか」

「私にはいまいちピンと来ないんだけど」

「単純な話さ。ユーモアセンスが足りないんだよ、君は。もう少し勉強した方がいい。ちょっとくらいは成長しないと、いつまでも哀れなハリネズミのままだよ」

「ハリネズミって、誰のことよ。私は人間よ」


 少女が日中の出来事を事細かに教えてやると、猫は大層興味深そうな素振りで、また小難しい話をいくつか繰り出してきた。

 特に、帰宅間際の悪魔とのやりとりは、かなり猫の好みと合致したらしく、彼は訳知り顔で少女をからかうのであった。


「昔どっかの哲学者が言ったのさ。凍えた二匹のヤマアラシは、互いに身を寄せて暖め合おうとするけれど、全身を覆う針のために、温もりを与えることができない、ってね。『ヤマアラシのジレンマ』なんて言うんだけど、君はヤマアラシというほどビックじゃないというか、幼いというか、精々ハリネズミがいいところだからさ。知っているかい? ヤマアラシは攻撃のために針を使うんだけどね、ハリネズミの針は護身のためにあるんだよ」

「知らないわよ……」


 猫は相変わらず面倒臭かった。理屈っぽく、お喋りで、話が長い。

 人が理解できない話題を好むくせに、人の内情に首を突っ込むのが趣味なのだ。


「まあ、悪くない一日だったろう? 幸せで楽しい人生を目指して、精進するといいよ」


 少女が箱を去るまで、猫のお喋りは止まらない。

 幸福についての言及はやめておくことにした。


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