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機械仕掛けの光の先へ  作者: 真栄田エイラ
9/19

第4話・2

「ああ、だからアイツ、あんな格好してたんだな」

 トオルは、初めて会った時のユウマの服装を思い出していた。デザイナーとかやってるんだったら、個性的な格好をしていても納得がいく。

 その時、姉の智里がトオルの背後から紙面を覗き込んだ。

「あれ?これって『装艶』の記事じゃない。へー。この子、デザイナーの息子だったんだ。そうよねー。そんな気もしてたのよねー。だって、まだ小学生じゃない。それなのに…って、アンタ、何でこんなの読んでるのよ?」

「別に。ただ、知り合いが載ってたから」

「えーっ!アンタ、この子と知り合いなの?

何で?どうして?どういう繋がり?」

 智里は少し興奮しているのか、トオルの体を揺らしながら質問攻めにした。それもそのはず、智里は、現在高校一年生なのだが、もう早、卒業後は東京の服飾専門学校へと進路を決めてしまっている。ファッション業界に興味津々なのだ。

図書委員の智里は、司書の先生を手伝って学校の図書室に置くための新刊雑誌を棚に並べていた。その時見つけた『装艶』の表紙。アイドルが表紙を飾るティーン雑誌とは大分違う趣。表紙のモデルも、パリコレとかに出ているような、独特のメイクをしたスーパーモデル風だった。そんな表紙に惹かれて中を開いたのがきっかけ。

毎月、誌面を彩るさまざまな服。女子高生や女子大生向けの、流行の服を載せたファッション雑誌とは違う。以来、『装艶』は彼女の愛読書になった。

『装艶』には毎号、デザイナーを目指す人達が投稿する、デザインコンクールのページがあった。

 そのページには、コンクールの予選通過者達のデザイン画と、縫製された服が載せられていた。

彼らに触発されて、次第に自分もデザイナーになりたいと思うようになった智里も、自己流で何枚かデザインをしてみてはいるが、投稿した事はなかった。

ただ、好き勝手にデザインして気軽に投稿は出来ない。そのくらい、『装艶』のデザインコンクールの作品は、どれをとっても個性とセンスが光っていて、レベルが高かった。

いつか、自分もこのページに載ってやる。そう決意していたので、このデザインコンクールにはいつも刺激を受けていた。だから、吉岡侑真の事は、予選通過で雑誌に載った時から知っていた。

年齢を見て驚いたのと、その年の子が描いたとはとても思えない、キレイなデザイン画。モデルが着用した縫製されたドレスも、とても美しかった。予選通過者は、毎回二、三人いて、一人ずつ同じように一ページ分を与えられているが、ユウマのページだけはぬきんでているように輝いていた。その為、注目していた一人でもあった。

予選で載った時の『装艶』では、年齢以外ユウマの詳しいプロフィールは載っていなかった。

しかし、新聞にはハッキリとデザイナー・吉岡朱理の長男という事まで書かれていた。

吉岡朱理。ブランド『シュリ』のデザイナー兼オーナー。新聞にも書かれているように、日本だけではなく、ヨーロッパでも彼女のデザインした洋服を求める女性が後を絶たない。

彼女自身もまだ三十七歳と若い為、ブランドの歴史は浅いが才能は大きく買われ、大変人気のあるデザイナーである。

デザイナーを目指す者にとって、または智里のように、今はまだ夢見るだけの者にとっても、若くして成功を収めた吉岡朱理の名前は大きく、また彼女はカリスマ的存在だった。

「会いたい!会いたい!会いたい!ねえ、会わせてよ!」

 智里にとっては、その息子ユウマも同様のようだ。もう、ミーハーでも何でもいいといった感じで、弟に頼み込む。

「うるせぇなー。ちょっと、一回会った事あるだけだよ」

 姉の手を、うっとうしそうにはねのけるトオルに対し、智里は新聞を握り締めて更に詰め寄った。

「これ、見て!来月、侑真くんのお披露目を兼ねたショーがあるって!行こう!」

 確かに、記事には下の欄にも続きがあった。

 そこには、吉岡朱理のもう一つのブランド、『シェリー』のファッションショーを開くとの事が書いてあった。

『シェリー』とは、吉岡朱理が駆け出しの頃、『シュリ』を立ち上げる前に興したブランド。現在、『シュリ』とは姉妹ブランドになる。世界をターゲットにし、若干高級ブランド志向の『シュリ』に対し、十代や二十代前半をターゲットにしたものが『シェリー』だ。『シェリー』は、日本中、主要な都市にはほとんど展開しているので、トオルの住むまちにもショップがある。デザイナーの拘りで凝ったデザインや生地が多い為、少々値が張るが人気のブランドだ。

ショーでは、『シェリー』の新作が中心だが、ユウマが今回グランプリを獲得したドレスも合わせて、ユウマのオリジナルも数点出展する事と、入場は無料だとも書いてあった。

無料と言われても、トオルは女物の服に興味が無い。まして、ファッションショーなんて真っ平だった。

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