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機械仕掛けの光の先へ  作者: 真栄田エイラ
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第3話・1


 夏休みが終わり新学期の朝、いつもの待ち

合わせ場所に現れた陽平は、肩から大きな紙

袋をさげていた。

「陽平。その荷物、パズルだろ?随分デカイの作ったんだな」

 トオルが感心したように言うと、気を良くした陽平は紙袋の中身をチラッと見せた。

「千ピースだ!スゴイだろう。しかも、今回はオレ一人」

 陽平は、そう言いながら右手の親指を立てて自分に向けると、自慢げに笑った。

「で?オマエのはどんなのだよ?もう見せてくれてもいいだろ?」

 そう言いながら、陽平はトオルの持っている紙袋の中身を見ようと手を伸ばしたが、トオルがそれをかわそうと紙袋をしっかりと両手で持ち直した為、空振りに終わってしまった。

「ヤダね。勿体なくてこんな所で見せられるか」

 そう言って出し惜しみしていたトオルの作品は、始業式が終わった後のホームルームでようやくお披露目される事になった。

しっかりとした木の箱に収められたトオルの作品は、陽平が容易に想像できるようなものではなかった。

 箱の蓋を開けると、光沢のある青いサテンの布が何かを覆っていた。

青い布を取り払うと、丸い木製の蓋が現れ、そこには紋章のようなものが細かな彫刻で現されていた。

「ちゃんと蓋も開くんだぜ」

 自慢げに言いながらトオルは、自らその厚さ二センチほどの丸い蓋を横に開いて見せた。

蝶番で取り付けられている蓋の下には、蓋と同じ大きさの丸いケースが隠れていた。ケースには、母親から貰った刺繍用の枠が使われていた。はさめた布をピッタリ張らせるためにある、枠の外側に付いているネジは上部に来るようになっていて、そこにはネジと同色の鎖が通されていた。

ケースの中には、時計の長針・短針の他に数個の歯車等もセットされていて、時計の内部が全て木製で再現されていた。懐中時計を模っていたのだ。

直径十二センチくらいと、本物の懐中時計と比べるとかなり大きかったが、蓋の彫刻と内部の部品の精巧さには小学生のレベルを超えているのは明らかで、皆が目を見張った。

 トオルの周りを囲んでいたクラスメイトからは、感嘆の声が上がっていたが、陽平は驚きのあまり、何も言えないでいた。

「なっ、スゴイって言っただろ?」

 と、トオルが陽平にニヤリと笑いかけた時も、

「ああ、ビックリした…」

 と、答えるのが精一杯のようだった。

 トオルの作品『木製懐中時計』は、生徒達だけではなく、先生方からも絶賛され、トオルの通う桜丘小、六年生代表作品として市内の作品展に出品される事が決まった。

 ある土曜日の午後。

 トオルは、自分の作品が展示されている、『小学生作品コンクール』の会場、文化会館に来ていた。

 このコンクールは、市内の小学校から学年ごとに選ばれた作品が集められ、『絵画』、『工作』、『芸術』のジャンル別に展示されていた。

 トオルの『木製懐中時計』は、工作の技術も高く評価されていたが、蓋部分の彫刻が美しいと審査員の目を惹き『芸術』部門に出品されていて、なんとそこで金賞に輝いていた。

 担任の先生から、金賞を貰った事は聞いていたが、実際に自分の目で確認すると違うものがある。作品の横に添えられた、審査員の批評カードに書かれている賞賛の言葉も、トオルの顔をほころばせていた。

 そんなトオルに、隣にいた男の子が話しかけてきた。

「ねえ」

 その子は、トオルと同じ歳くらいだが、見た事はない顔だったので、他校生だろうという事はすぐにわかった。

まだ夏も終わっていないというのに厚底ブーツを履いていて、全身黒一色。その暑苦しい黒が、少年のほっそりとした顔や腕の色白さをトオルに印象づけた。

下は半ズボンだが、腰から左右長さの違う二本のチェーンで釣った、プリーツの入った短いスカートが斜めに巻かれていた。上は、ノースリーブシャツで、何本ものジッパー使いの凝ったデザイン。襟元には、リボンのように締められた黒ネクタイ。

こんなビジュアル系ロックバンドのような格好をする子はトオルの友達にも、学校にもいなかったし、間近で見るのは初めてだった。

その格好と、知らない子から突然話しかけられた事にトオルはビックリして少し退いてしまったが、金賞を貰って機嫌が良かった事もあり、相手をする事にした。

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