屋上
カッターが滴り落ちた血溜まりの上に落ちた。
倒れている里釘。
その場に立っている、五月雨。
拳を握り締めて。
「何で…こんなことを…まだ生きろよ…里釘」
涙を流し五月雨は里釘に言った。
里釘は倒れたまま言った。
「生徒会長…俺…やっと死ねそうだったんだ…」
里釘もまた、涙をこぼす。
「それなのに…余計なことしやがって…」
首から血が流れている。
「やっと…やっと、救われると…思ったのに」
涙と血が混じる。
五月雨がゆっくりとした口調で言った。
「これが…現実だよ、里釘くん」
落ち着きを取り戻した様子の五月雨。
「なにもかも上手くいくわけじゃない。むしろ上手くいくはずがないさ…生徒会長として、思う。色んな仕事を押し付けられ、僕のことなんか考えずにあれやれこれやれ期限、締め切り、散々だ」
「僕だってこの世には嫌気がさすし希望も持てない。自殺も考えた。君みたいにね」
里釘は鼻で笑って言った。
「会長は会長。俺は俺だ。勝手に重ね合わせんな」
五月雨は優しく語りかける。
「僕は気付いた。どれだけ辛くても、この世に生まれてきたことは、これ以上ないくらい幸せだったんだよ」
「じゃあ、俺は死ぬことがこれ以上ないくらいの幸せになる」
人と考えが一致するのって…。
「ねぇ、里釘くん。もうちょっと、もうちょっとだけ、精一杯抗って生きよう?」
里釘は笑って言った。
「精一杯…抗って…ねぇ、悪くはないかな」
五月雨の顔が明るくなった。
「それじゃあ…!」
「死ぬか…」




