屋上。
「放せよっ!俺に触んな!」
里釘は茶髪の男子生徒の手を振り払う。
茶髪の男子生徒は少し吃驚した様子だった。
「全く…里釘くんなにをしてる…自殺でもするつもりかい?」
何故か茶髪の男子生徒は里釘の名前を知っていた。それは勿論制服についた名札を見たからだが里釘は名札の存在など完全に忘れてるために気付かない。
「な、なんでお前…俺の名前を…?」
里釘は心底驚いた。という表情で問い掛ける。
「いやいや、何でって…それは僕がこの学校の生徒会長だからさ」
沈黙。
そして茶髪の生徒会長は口を開く。
「え?まさか僕のこと知らない?」
「知らん」
即答だった。
「え?ほら僕五月雨みきりって言うんだけど聞き覚えとか…」
「ない」
またしても即答。
そこで、里釘が口を開く。
「いや待て、生徒会長って俺の記憶が正しければ黒髪で眼鏡で糞真面目な口調だった気がするが」
「それは、前生徒会長だよ。この間変わったじゃん」
「あぁ、俺はそのとき精神的にきつかったから休んだ日だな。じゃあ、知るわけない。と言うわけでさっさと帰れ生徒会長の…五月雨みきりさんよ」
里釘は掌を振って校内に戻るよう促す。
しかし五月雨は一ミリも動かなかったわけでは無いがその場からは一寸たりとも動かなかった。
「いや、早く戻れよ生徒会長。生徒会長がこんな屋上でこんな俺みたいな奴と油売ってる暇なんかないだろう」
五月雨は考えるように目を閉じ、上を向く。
「上を向いて歩こう。涙が零れないように。君は自殺しようとしてたよね。何があったかは知らないが自殺はするな」
最初に言ったとある曲のフレーズは何にせよ五月雨はそう言った。里釘にしてみればいい迷惑だ。自分を干渉するな。と。
「自殺何かそんなおっかないものするか馬鹿。例え自殺しようとしてたとしてもいちいち他人のお前が口出しすんな」
「自殺じゃないなら何してたのさ」
里釘の嘘に質問をする五月雨に里釘は怒りをほんの少しだが感じる。そのまま流してくれればいいのに。
「高所恐怖症の治療みたいなもんだ」
勿論出任せでしかない。
「そうかそれはまた大変な嘘だ」
沈黙が里釘と五月雨の間をゆっくり歩いていった。
里釘願。黒髪。自殺志願者。死にたがり。
五月雨みきり。
生徒会長。茶髪。生存志願者。生きたがり。