リアーナの政略結婚
ランフォート王国
ハルト大陸の中央に位置する小国であり、周りを大国に囲まれていながらも
場所の利便性と周りを大国に囲まれていることを利用して商業で周りの大国を牽制している強かな国である。
その王宮の本来なら音を吸収する柔らかな赤い絨毯の上をバタバタを音を立てて早足で歩いて行く者がいる。
これが侍女でなどであったならその場でお叱りを受けるところだが、
音を立てて歩いている本人はランフォート王国のただ一人王子であり、
いつもは柔和な微笑みを浮かべていることが多い顔には不機嫌さをありありと出ているからか
眉を潜められることはあってもそれを咎めるものはいない。
むしろ、何か緊急の事態でも起きたのかと回りを不安にさせていた。
王子は、金のバラで縁どられた白いドアの前まで来るとノックもせずに勢い良くドアを開け、
目当ての人物を見つけるとその少しの距離さえも腹立たしいかというように間を詰めた。
目当ての人物である、金色のゆるいカーブをかいた腰までの髪の20才前後の女が
髪と同じ金色の睫毛に縁どられた零れそうなほど大きな瑠璃色の目を
これでもかと大きく開きながら入ってきた人物を見ていたが
入ってきたのが誰か分かるとゆっくりと肩の力を抜き
「行儀が悪いわよ、ミカエル。いくら兄弟だと言っても・・・・」
「姉上! 今は行儀だとかそんなことはいいのです。
“あの”極悪非道で冷酷卑劣な悪魔と噂されるキールライン王国のルイス王子とご結婚なさるのですか?!」
「えぇ、ミカエル。ずっと前から決まっていたことよ」
「そんな!なぜもっと早く教えてはくれなかったのですか?!
私ではそのような重大なことを話すには値しないということなのですか?」
それが本当の話であり、昨日今日決められた話ではないと突き付けられたミカエルは目を見開き
姉と同じ瑠璃色の瞳に涙を浮かべてリアーナに詰め寄った。
リアーナは必死の形相で縋りつくミカエルに悲しそうに微笑みながらあえて明るい声で
「ミカエル、私は大丈夫よ? 心配しないで?」
と言った。
「しかし!!」
食い下がるミカエルをリアーナは彼の栗色の前下がりショートボブの髪を撫でてなだめながら
幼い子にそして自分に言い聞かせるようにことさらゆっくりと優しく言う。
「ミカエルよく聞いてちょうだい。キールラインの王子の噂を耳にしただけでしょう?
ただの噂にすぎないのよ、彼と実際に会ってみなければ人柄を判断することはできないわ。
噂はあてにならないことをあなたは一番知っているでしょう?」
ミカエルもキールラインの王子のことは噂を耳にしただけで実際には見たことがない。
ミカエル自身リアーナの心の広さとおっとりしていながらも
肝心なところでは頭の回転が速い姉を尊敬していたし姉の言葉にも一理あると分かっていた。
そう。本当に噂というものはあてにならないものだ。それが、悪いものならばなおさら・・・。
ただ、噂というものはたまに真実か真実の一部を伝えていることも多いことも良く分かっていた。
もし何か誤字脱字がございまいしたらお知らせ下さい。
初投稿でまだ何もほとんど始まっていないという・・・。気長に見ていただければ幸いです。