第7話
エルザの作った豪華な上に美味しい夕食を食べ、デザートのケーキを食べている時、エルザがとうとう話を切り出した。
「ケーキ食いながらでいいから聞いてくれ。 今後のアタシの考えを話す。 みんなにもそれぞれの意見はあると思うが、とりあえずアタシの話を最後まで聞いてくれないか?」
エルザの発言に、皆同意する。
「特にルーナママだ。」
「なによ。 黙って聞いてあげるって言ってるでしょ?」
「多分お前は、絶対に口を挟みたくなると思うけど・・・意見は後で聞くから、くれぐれも口は出さないでくれよな。」
「しつこいわね。 分かったわよ。」
「んじゃ、始めるぜ。 アタシ等は、第7国に向かう。」
「ちょっと待ちなさいよエルザ! 第7国って!?」
「あのなぁカメリア・・・話が終わるまで待てって言っただろ? いきなり話を遮るなよな・・・」
「あ、ゴメン・・・」
「お前はコレ付けていろ。」
エルザは、バッテン印の描かれた三角巾を取り出すと、私の口を覆うようにして巻いた。
予めこんなものまで用意しているとは・・・コイツ、まさか未来が視えるのか!?
「じゃ、続けるけど・・・ホントに黙って聞いてくれよな。 で、第7国から第6国に入る。 クーのこともあるんでな、本当なら第7国は避けたいんだが、千剣山脈を超えるのは危険すぎるし、他のルートでは時間がかかりすぎだからやむを得ない選択だ。 第6国に向かう理由は、ブルグマンシアの件でホーリーオーダーに助力を乞うためだ。」
「・・・・・」
「第6国への入国手段は、なんとか伝手を伝って用意できた。 ただし、入国が出来るのは2人だけだ。 だから、アタシとパトリックの2人で行く。 残りは、第6国の手前で一旦お別れだ。 第6国からは、護衛・・・と言うよりは、監視か? ともかく迎えが来る手筈になっているから、道中の心配は無用だ。 カメリアも行きたいって言うんだろうけど、悪いが今回は諦めてくれ。 例の黒い剣を持つホーリーオーダーについては探りを入れてみるが、情報が得られるかは分からん。」
「・・・・・」
「アタシ等が戻って来るまでには・・・どうだろうな? 少し時間がかかると思う。 そう簡単にホーリーオーダーの助力が得られるとは思わないし、断られたとしても『はい、そうですか』と簡単に引き下がる訳にも行かん。 とりあえずは・・・別れた後、半年ほど経ったらこの屋敷に戻ってきてくれ。 それまでにアタシ等が戻って来れなくとも、何かしらの連絡は入るようにする。」
「・・・・・」
「アタシ等がいない間は、3人は好きに行動してもらって構わないが、できれば他の国の様子を探ってもらえるとありがたい。 第7国から北上して第8国とか、さらに北の第12国とかかな。 まあ、半年で動ける範囲なのでそんなには無理だろうが、良ければ頼みたい。 クエストで路銀を稼ぎながらで構わないので頼む。」
「・・・・・」
「で、次だが・・・アッパー・リブで捕らえたブルグマンシアの調書を手に入れられた。 まあ、首謀者が誰だとか、本拠地の場所なんかは結局吐かなかったんだが・・・まあ、下っ端だし知らなかったと言う所だろうな。 例の街道のアジトは吐いたので、突入はしたんだが、やはり既にもぬけの殻だったらしい。」
「・・・・・」
「連中が攫う対象は、女性・・・特に、獣人の女性は優先するように指示があったとのことだ。 何でかは聞かされてはいないようだがね。」
「・・・・・」
「ブルグマンシアの例のシンボルだが、クーの言っていた通り色が付いたのは上位の者らしい。 あの街道のアジトには、クーの言っていた、ガイコツに色の付いたヤツが数名、ラッパまで黄色く色がついていたのは1人はいたようだ。 ガイコツに色があるのが中隊長くらいか? ラッパに色があるのが拠点の長ってところだろう。 下っ端連中では、それ以上は知らされていないんだろうが、やはり、クーの言うとおり、もっと上のランクがあるんだと思う。 興味があるヤツは、後で自分でも調書の写しを読んでみてくれ。 くれぐれも口外は禁止で頼むよ。」
「・・・・・」
「皆・・・特にカメリアだが・・・よくガマンして聞いてくれた。 とりあえず、アタシからは以上だ。 何か言いたい奴はいるか?」
「色々言いたい事あるわよ。」
私は、発現許可が出たので、口の周りを覆っていた三角巾を外して、声を出す。
「どうぞ、言ってくれよ。」
「まず、第7国って・・・アンタの考えは分かったけど、私は反対だわ。 クーに万一の事があったらどうするつもりよ?」
「確かに、トラ獣人は危険視される可能性はあるかもしれんが、クーは髪の色も変わっているし、これからは寒い時期だ。 フードを被っていてもおかしくはないし、大丈夫だと踏んだんだが・・・」
「ダメよ。 万一って言ったでしょう? クーを危険な目に合わせられないわ。」
「それなら悪いが、クーにはどこか・・・ま、この家でも良いけどな・・・待機してもらうしかないな。 クーはどうしたいんだ?」
「私は行きます。 リア姉が一緒なら平気です。 お願いリア姉、私もリア姉と一緒に行きたい。」
「・・・・分かったわ。 クーを置いて行かないって決めたもの。 私がなんとかしてあげるわ。 何かあったとしても、私なら熊獣人ごときに遅れはとらないわ。」
「おい、それはクーの命を守るための最後の手段ってことにしてくれよな。 他はあるか?」
「あるわよ。」
「はい、どうぞカメリアさん・・・」
「第6国には2人行けるんでしょう? だったらパトリックでなく私を連れて行ってよ。」
「お前なあ・・・お前は頭が良いって設定なのに、なんでソレが無理だって分からないんだよ?」
「設定ってなによ。 それになんで無理なのよ?」
「アタシとお前で行くって・・・クーはどうするんだ? 今さっきクーを置いて行かないって言ったばかりだろ? だからって、お前とクーの2人で第6国にって話は無いからな。 入国するのは、フラムメウス王家からブルグマンシアに関する件について委任を受けた・・・大使・・・みたいなもんだからな。 アタシは絶対に外れられない。」
「う・・・」
ちなみに・・・フラムメウスとは、第9国の王族のことだ。 古い言葉で炎とかそんな意味だったと思う。 12勇者の1人サジタリウスは、炎の弓を持っていたと言う伝説から来ているんだと思われるが、フラムメウスの王族には、その名に違わない赤髪が多いらしい。 私の目の前にも赤髪の女がいて、その女は上級貴族だと思われるが、さすがに王族とは無縁だろう。 赤髪自体も、多いとまではいかなくても、そこまで珍しいってほどでもないし。 アローヘッドの・・・かなり上級の貴族ってところだろう。
「お前のそのすぐ頭に血が上る直情的なところは少し・・・いや、かなり治した方がいいぜ。 それにな・・・」
「それに? なによ?」
「そもそもお前に交渉事は任せられない。 理由は・・・今も言ったとおりだ。」
「・・・・」
「今回は、ホーリーオーダーの協力を得ることが目的だが、仮にそれが無理だったとしても、最悪でも繋がりを得たいと思っているんだ。 もしかしたら次に繋がるかもしれないだろう? それに、こっちが頭を下げてお願いする立場なんだ。 お前みたいに、ゼロか百か・・・敵か味方か・・・みたいなヤツには無理なんだよ さっきの話にもなるが、もっとその頭を使えよ。」
「ぐ・・・反論できないわ。」
「リア姉・・・エルザさんの言うとおりにしよう? 私と一緒にいてくれるって言ってくれたよね?」
「そうね。 今の私にとって、クーよりも大事なものはないわ。」
「そうそう。 それでいいんだよ。 他には?」
「俺も良いか?」
「おう、ゲオルグ言ってくれ。」
「エルザとパトリックがいない間は、俺たち3人でって話だったが、俺は1人の方が行動しやすいんだが・・・」
「いや、ダメだな。 カメリアには、嗜めるヤツと鎮めるヤツが必要なんだよ。 今まで見て来て分かんだろ?」
「俺が嗜める役か? 俺まだ死にたくねえんだが・・・」
「大丈夫ですゲオルグさん。 私がリア姉を甘やかしますから。」
「ゲオルグ・・・クーも何言っているのよ。」
「まあ、ゲオルグはその役割上1人で動く場合もあるとは思うが、必ず最後は3人で合流してくれよ。」
「分かったよエルザ・・・あと、調書を見せてくれよ。」
「おう、話が終わったらな。」
「他には? なんかあるか?」
「出発はいつになりますか?」
「急だが明日には発つ。 旅の準備はこの1月で進めていたから概ね出来ている。 クーもカメリアも大丈夫だな? 足りないものはアローヘッドを出る前に揃えてくれ。」
「分かったわ。」
「分かりました、エルザさん。」
「ゲオルグは、悪いけど朝になったら馬車取ってきてくれるか?」
「ああ、了解だ。」
「じゃあ、今日は早めに休んでくれよな。」
急に色々と決まってしまったが、あまりこの屋敷でダラダラ過ごしていてもしょうがないし、冒険者なんてそんなものだろうと思う。
今回は・・・一応エルザも私の事を考えて、話せることは出来る限り話してくれたのだと思う。 当の私は、以前エルザの秘密主義にキレかかったときと違って、今はクーと一緒に居続けることが大切なので、正直言って、秘密の事は大した問題とは思っていない。
後は、兄真鞘のことだが・・・さっきのエルザの話には反応はしたものの・・・それも今となっては、里長の娘としての義務感のようなもの・・・いや、里を出るための口実だったようにも思えたりもする。 どうでも良くなったって訳ではないが、今はクーよりも重要とは思えなくなってきている? じゃあ、未沙柄のことは?
自分でもよく分からない。
考え方が変わるって言うのは人には良くあることだろうけど、私の場合あまりにも刹那過ぎるようにも思える。
もしも、クーへの執着が薄らいでしまう時が来たとしたら、私はまたクーを見捨ててしまうのだろうか?
そんな時が来るのだとしたら・・・今はとても怖い。 そして、そんな風に考えている自分も同じくらい怖いと思った。




