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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第8章 カメリアとクー4

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第2話

 皆で朝食をとりおえて、私とクーで後片付けをしている時だった。


「おい、カメリア、クー。」

「なに?」

「はい、エルザさん。」

「昨日ちょっと話したと思うが、アタシ等は今日これから用事があって出かけて来る。 悪いが、誰と会うかは教えられねぇ・・・」

「そうだったわね。 行ってらっしゃい。」

「あれ? また突っ掛ってくるかと思ったのに・・・」

「あなたの秘密主義にいちいち反応していたら疲れちゃうでしょ? 間違って殺してしまうかもしれないし。 私とクーに害が及ばない限りは・・・まあ・・・今はどうでもいいわ。 いずれ話してくれるんでしょう?」

「あ・・・ああ、そうだな。 もの言いは、相変わらず物騒だけど・・・」

「クーに感謝しておきなさいよ?」

「ああ、そうだな。 クー、お前のお陰でアタシを含めて何人もの命が救われている。 本当にありがとうな。」

「あの・・・リア姉、エルザさん・・・この手のやり取り、何度か聞きましたけど・・・何なんですか?」

「いいのよクー、エルザの言っている事は、まるきり間違っているという訳でもないわ。」

「そうだぞクー、お前はそのままでいてくれ・・・この()()()()()の殺戮衝動を押しとどめられるのは、お前だけなんだからな。」

「もー。 エルザさん、わざわざリア姉を挑発するようなこと言わない。」

「はい、すみません()()()()・・・っと、冗談(?)はさておいて・・・アタシとパトリックは、ヘタすると数日は戻れないかもしれない。 ゲオルグにも別件で動いてもらうから、お前ら2人になるけど良いよな?」

「あら、そうなの? ありがとうエルザ。」

「ちっ、ありがとうってなんだよ・・・家のカギは預けておくから、出かけるんなら戸締り忘れるなよ?」


「じゃあ、準備してくるわ。」と、エルザたちが2階に上がって行ってから、そこそこの時間が経っていた。

 その間に、ゲオルグは既に出かけてしまった。


「エルザたち、随分時間かかっているわね? 何をやっているのかしら?」

「そうだねー。」

「何日かはクーと2人きりになりそうだから、ご飯は外で食べようか?」

「え? 私、作るよ?」

「色々な種類のお料理を食べに行かない? クーのレパートリーも広がるかもでしょ?」

「あー、うん。 でもお店で出て来るようなお料理は、私には無理だよ。」

「いいのよ、凝った料理じゃなくって・・・味付けとか、ヒントになるようなモノはあるかもでしょ?」

「そうだね。 じゃあ、そうする。」


「おう、お前等まだいたか、アタシ等も行って来るからよ。」


 エルザの声に振り向く・・・と!!

 エルザは、(まさ)しく高級貴族といった出で立ちをしていた。 ドレスではなく、男の貴族のような格好だが、女性らしさは損なわれてはいない。

 パトリックも、貴族の従者というようなスーツ姿だった。


「な・・・アンタ、本当に何者なのよ。」

「エルザさん、とっても素敵です。 パトリックさんもカッコいいです。」

「おう、ありがとうな。 そんじゃあ行ってくる。 くれぐれも問題は起こさないでくれよな。」

「あんたにだけは言われたくないわ。」

「そうかよ。 じゃあクー、毎度お前に頼りっぱなしで悪いが、ママの面倒見ておいてくれよな。」

「はい。 任せてください。」



 エルザとパトリックを見送った後


「クー? お昼には大分早いけど・・・なにしよっか? クーはなにか買いたいものとかあるかしら?」

「そうだなあ・・・グローブを買換えたいかな?」

「そう。 それじゃあ見に行きましょうか。 クーの剣も結構くたびれて来たわよね。 剣も探してみようか?」

「剣は、まだいいよ。」

「どうしてなの?」

「だって・・・この剣は、ツバキお姉ちゃんに初めて買ってもらったものだもの。 私にとって宝物なんだよ。 もちろん、グローブだって大切だけど、さすがにこっちはもうダメっぽいし。」

「クー、あなたって本当に可愛いわ。 でもね、大事にしてくれるのは嬉しいけど、もし戦いの最中に折れちゃったりしたら・・・それでクーに何かあったら、お姉ちゃん悲しいわ。 別に捨てなきゃいけない訳じゃないし、新しいの買ったっていいんじゃない?」

「・・・・」

「クーは身長も伸びたし、力もついたから、もっと長い剣でもいいかなって思うけど。」

「はい。」

「まあ、とりあえず行ってみて、気に入ったのがあったら買えばいいじゃない。」

「そうだね。 じゃあ、一緒に行ってくれる?」

「もちろんよ。 お姉ちゃんに任せて頂戴。」


 そして、私はいつものように、クーと手を繋いで商店街に向かう。

 お屋敷でクーと話している内に、お昼近くになっていたので、先にお昼を食べることにする。 お昼は、なんとかクーを口説き落として、野菜中心の食事にすることができた。

 これで、クーの野菜レパートリーが増えるといいんだけど・・・


「ごめんリア姉、ちょっとお手洗い行ってきてもいい?」

「私も行こうか?」

「もー、リア姉はここで待っててよ。」

「はーい。 いってらっしゃい。」

 クーが席を立った後、私は食後の紅茶を飲みながら、窓から外を眺めていた。


「あら? あの娘・・・」


 私の眼に止まったのは、エルフの女性と一緒に歩くトラ獣人の娘だった。

 少しくすんだ金色のハネまくった髪の毛、大きな瞳の愛くるしい顔立ち、日に焼けた健康そうな肌、背は結構低く見えた。

 大きな身振り手振りをしながら、エルフ女性に話をしている様から、とても元気が良いのであろうことが見て取れた。


 ほんの10数秒だったけど、彼女が見えなくなるまで目で追ってしまった。


「クーと同い年くらいかしら? クーとは違った感じだったけど、可愛らしい娘だったわね・・・トラ獣人って、皆可愛いのかしら?」


「リア姉、お待たせしました。 もうお店出る?」

「そうだね。 行きましょうか。」

「はいっ!」


 私は、クーには先程見たトラ娘のことは言わなかった。

 別に隠すことでもないけど、取り立てて言う程のことでもないと思ったから・・・いや、違うな。 

 万が一にでも、クーの行方不明の姉だったら・・・って思ってしまったからだ。

 クーと同年代か、むしろクーよりも若いのではないかとも感じたあの娘が、クーの姉であるはずはないと分かっていたが、わずかでもクーがいなくなる可能性を考えたら怖くなってしまった。


(クーだったら、こんな風には考えないんだろうな・・・)


「どのお店がいいかな?」

「そうだね、でも何件行ってもいいのよ?」

「なんだか、ちょっとワクワクして来ちゃった。」

「そう? それなら良かったわ。」

「どうしたの? リア姉、なんか元気ない?」

「ん? そんなことないわよ。 じゃあ、まずは1件目に入っちゃおうか。」

「はいっ!」


 何件かお店をまわって、無事に買い物を終える。

 グローブは、ただのグローブではなく、ガントレットを買った。


 剣は、クーが片刃の剣を希望したので、前と同じようなもの(カトラスと言うらしい)を探すが、見つけられなかった。 その代わりにサーベルと呼ばれる片刃の剣は、そこそこ数があったのでそれにした。

 サーベルは、カトラスよりもさらに刀に近い形状に見えた。 クーは、サーベルの持ち手に付いているナックルガードが気に入らなかったようで、鍔のタイプのサーベルを探して買った。


 最初は剣の買い替えを渋っていたクーであったが、やはり気に入ったものを手に入れたことは嬉しかったのだろう。

 帰り道は、その剣を大事そうに抱えて、ニコニコしていた。


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