第10話
私は、お店に置いてもらうために造った鍛冶製品を持ち、商店の立ち並ぶ地区に来ている。
まずは、主に食器や調理道具なんかを扱っているレンブラント商会にやってきた。
「こんにちは~。」
「いっらっしゃいま・・・これは!! クロエさんではありませんか!?」
「え? はい、クロエです。 ご無沙汰しています、デールさん。」
「少々お待ちください、すぐにレンブラントを呼んで参りますので・・・」
店番をしていた従業員のデールは、挨拶もそこそこに慌てた様子で店主のレンブラントを呼びに行ってしまった・・・
「レンブラントさん、いらっしゃるみたいで良かった・・・けど、なにをそんなに慌てていたんだろう・・・?」
店先で少し待っていると、これまた慌てた様子のレンブラントがやって来た。
「クロエさん! お待ちしておりました!! 今日は何本卸していただけますか!?」
「え? どうかしたんですかレンブラントさん、まずは落ち着いてくださいませんか?」
「いえいえ、それよりもすぐに商談を!! さあ、早く奥へどうぞ!!」
「いやいや・・・レンブラントさん、ちょっとコワイです。」
「はっ・・・!! そ、そうですね・・・私としたことが、焦りすぎてしまいました。」
落ち着きを取り戻した店主のレンブラントに連れられて、お店の奥にある商談部屋に入る。
レンブラントの話によると、以前に卸した包丁を購入してくれた人から、私の包丁が凄く切れ味が良いと言う話を聞いた人が、私の包丁を求めてお店に来てくれているらしい。
また、既に購入済みの人の中にも、2本目がほしいと言ってくれている人がいるようで、予約したいと言う声がかなりあると言う。
私の納品ペースが非常に不安定なので、予約はお断りしているという事だが、レンブラント商会を贔屓にしてくれている客の中には、どうしても断ることができない客もおり既に5本の予約があると言う。
そんな話を聞かされて、私は感激してしまった。
初めて包丁を売り込みに商店街を回った時には、中々応じてくれるお店がなかったものだ。
レンブラント商会にも一旦は断られたのだが、拝み倒してなんとか置いてもらえることになった。
無名の鍛冶師が造った包丁は、当初は中々売れなかったが、レンブラントやデールのお陰で1本、2本と売れ・・・今では、予約してまでほしいという要望があるなんて、鍛冶師冥利に尽きるというものだ。
私は、持ってきた9本の包丁をレンブラント商会に卸した後、冒険者用の武器防具を扱うガルシア商会に向かった。
突然の訪問にもかかわらず、ガルシア商会でも歓迎された。
私が以前に卸しているのは、ショートソードが数本と、ダガーが10数本程度で、包丁よりもなお少ない。
ガルシア商会がメインに扱っているのは槍だが、サブウエポンとして、また獲物の解体用としてなど、ダガーなどにも需要はあるようだ。
「クロエさんの造ったものは、切れ味が良いと評判なんです。 今度は是非、槍も納品していただけませんか?」
「槍ですかぁ・・・」
「ええ、是非お願いします。」
「槍ですと・・・どんな形状のものが需要がありますかね?」
「そうですね・・・1番はやはりスピアでしょうかね。 最近はハルバードなんかも欲しがる冒険者が増えたような気がしますね。 見た目重視の若い冒険者に好まれているようですが、スピアよりも重量がありますし、出来る事も多いですが、素人向けではないと思いますけどね。」
「ハルバードは、ちょっと私向きじゃないかなぁ・・・グレイブなんて欲しがる人いますかねぇ?」
「グレイブですか・・・そうですね、グレイブはあまり需要があるとは言えませんが、クロエさんの作であれば、欲しがる人はいると思いますよ。 しかし、まあ・・・そんなに何本もって訳には行かないかと思いますね。」
「分かりました。 ちょっとスグには無理かもですが、前向きに検討して見ますね。」
「よろしくお願いします。」
「スピアなんですけど、スピアヘッドだけの納品って可能ですか?」
「構いませんよ、当店の職人で穂先に合わせたベストな柄を作成します。 当店は槍には特に力を入れていますから。」
「ありがとうございます。 あ、そうだ! 良質な魔晄石が少し手に入ったんですが、魔晄石を使ったショートソードとかって買う人いますかね?」
「魔晄石ですか・・・属性付与の魔法を使える冒険者は少ないですからね。 かなり限定はされると思いますが・・・2~3本なら店頭にあっても良いかと思いますね。」
「そうですか? じゃあ、うまく造れたら持ち込みます。 ただ、どうしても鋼のものよりは強度が落ちるので・・・」
「ええ、それは承知しています。 お客さまにはお売りする前によく説明しますよ。」
「その際には、よろしくお願いします。」
無事に納品を終えた私は、保存食を作るための食材を購入してホームに戻る。
今日の納品では、どちらのお店でも非常に歓迎されたので、ホームに戻ってからの干し肉作りも気分よくできた。
「使ってくれる人がいるのなら、もう少し造りたいなぁ・・・」
その夜も、最近寝る前恒例のクーニャとの会話をしてしまう。
「今は、素材が切れちゃっているからなぁ・・・魔晄石以外だと・・・神鉄・・・は、無理だし・・・黒鉄鉱が少し残っている程度かな? やっぱりグスタフたちとクエストに行けばよかったかな? クーニャさんはどう思う?」
「・・・・・」
「うん、グスタフたちのクエスト内容を聞いていないからね。 鉱石採取できたか分からないね。 次は鉱石採取クエスト請けようってお願いしてみようか?」
「・・・・・」
「そうなんだよね。 またあの遺跡に行ければいいんだけど・・・あそこは行くもの大変だし、モンスターも強いから、そう簡単には行かないよね。 普通の鉄鉱石なら買うのも手なんだけどな。」
「・・・・・」
「そうだね。 もうすぐみんな帰ってくるはずだから、みんなに相談してみようか。 クーニャさん、いつも私の話を聞いてくれてありがとう。 それじゃあ、お休みなさい。」
もう1~2日もすれば帰って来ると思っていたパーティメンバーは、5日経っても戻って来なかった。
~第7章 クロエとミオ4 終わり~




