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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第1章 クロエとミオ1

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第8話

 

 第9国サジタリウスには、お風呂文化がある。中央大陸の12王国の中でお風呂文化があるところは意外と少ない。

 私の故郷、八州国ではお風呂は当たり前だったので、最初に中央大陸に来た時には驚いた。


 私がサジタリウスに来たのは、姉らしき人物の情報があったためで、決してお風呂目的ではない。

 ・・・が、思えば姉もお風呂を求めてサジタリウスに? なんてこともあったりして?

 まぁ、家にお風呂を持つのはよほどのお金持ちくらいで、一般の人は基本的には市中に何か所か設置されている公衆浴場に行くことになる。

 私の工房がある工業地区には、街につながる出口の近くに公衆浴場がある。1日汗を流して働いた労働者達が、街に入る前にさっぱりできる仕組みだ。

 かなり大きいし、ちゃんと男女別で、市中の浴場よりも安く入れる。サジタリウスの行政府はちゃんとしているね。


 ついでに言うと、中央大陸の主要な都市には下水が整備されている。八州国にはなかったものなので、衝撃を受けた。これは、12王家成立の頃からあるらしい。

 家庭用排水や工業用排水を、市街の下に通っている排水路(匂い防止等のため簡単な浄化魔法が施されている)に集めて、最後は強力な浄化魔法がかかっている浄水施設まで流すのだ。浄水施設で浄化された水は、飲めるまでにきれいになっているとのことだが、飲み水には使用されていない。一部農業用水等に使用されるほかは、川に放水され海に流れる。

 でも、サジタリウスより上流にある第7国リブラとかでも同じ仕組みで川に流しているんだから、サジタリウスの川の水って結局・・・いや、止めよう。とにかくすごいシステムだ。

 もちろん、新興地帯である工業地区にも下水は通されている。が、城塞都市が造られた時代の技術はかなり失われており、排水路には浄化作用がないので、風向きによって臭う日もある。


 ミオと一緒に大きなお風呂に入る・・・っと、湯船に入る前に、まずかけ湯をしないとだね。

 ミオに臭い臭い言われていたので、少し念入りに体を流して、いざ入浴だ。

 まだ昼過ぎなので、工業地区の浴場は空いており、広々とした浴槽を堪能できる。

 私は、左手をくるむようにして持っていたタオルを、お湯に入ると同時に頭の上にのせ変えて、まったりしていた。ミオも最初は鼻歌を歌ったりご機嫌な様子で浸かっていたが、お湯に長時間入っていられないようで、早々に上がって髪を洗っている。


 ところで、ミオはモテる。獣人族の男性からのアプローチは数知れないが、人族にもファンは多い。

 生粋のトラ種獣人でありながら珍しいくらいに小柄で、日焼けした健康そうな体には、筋肉がちゃんとついていながらも細い。それでいて、出るところはそこそこ出ている。さらに加えて、顔はとても愛らしいと来ている。

 となれば人気が出ないわけがない。


 でも、ミオが男性とお付き合いしているとか言った話は聞いたことがない。私よりもずっと付き合いの長いシンシアも聞いたことがないって言っていた。

 以前、彼氏を作らないのか?と、ミオに聞いてみたことがあったけど「ミオより強い男がいないからナ。」と笑ってごまかされた。

 実際の所はどうなんだろう?私の2番目のお姉ちゃんはその辺ナゾが多い。

 あれ?強さってことで言えば、猫田さんは合格なんだろうか? 少し年の差はあるように思えるけど、どうなんだろう? 機会があれば、少し突っ込んでみようか。


 私が湯船から出て洗い場にいるミオの隣に座ると、ミオは『お姉ちゃん力』が抑えきれないようで、私の髪を洗ってくれた。ちょっと力が強かったけどね。

 頭と体を洗い終えた後、併設された洗濯場で、鍛冶仕事の時に着ていた作業服を洗って浴場を後にする。


 一度工房に戻る道すがら

「今日は、ホームに泊まるんだナ。」

 と、ミオが言った。

「そうします。」

 私がそう答えると、ミオは満足そうに頷いた。


 工房に到着し洗濯物を干した後、完成したばかりの槍とショートソード、あと興が乗って造った投げナイフ5本。後は、例の槍の穂先を持って工房を出る。もちろん、小窓は開けておいた。籠った空気を入れ替えるためだ。


 まだ夕刻には早い時間。ミオと2人、ゆっくりした足取りでホームに向かう。

 途中、屋台で買い食いしたり、ミオのお気に入りの雑貨屋さんに寄ったりした。

 大好きなミオと一緒で楽しかったけど、なによりミオがとても楽しそうにしてくれていたのが嬉しかった。

 (鍔姫姉さんは、どうしているんだろう・・・。)

 いつの間にか、誰にも何も告げずに1人里を出て行った実姉のこと考えていた。


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