第6話
今朝早くに、シザース高地に向かったパーティメンバーを見送った私は、図書館の開館時間に合わせて図書館に向かう。
出発の際、ミオは大げさに私との別れを悲しむ素振りをしていたけど、グスタフとシンシアは夫婦になったんだし、残る猫田さんとミオは2人になる機会も多いだろう・・・ミオも少しは猫田さんとの時間を期待していたのではないだろうか?
昨日の密約通りに、シンシアがあまり余計な手出しをしなければ良いけど、あまりに進展しない様だったら、ミオに少し力を貸して欲しいな、とも思う。
「レンさん、お早うございます。 今日もお邪魔させていただきます。」
「お早うございますクロエさん。 今日はなにかお探しのものはありますか?」
「いえ、昨日教えていただいた本がまだまだありますので、今日は大丈夫です。」
「そうですか。 お困りの際は、ぜひお声がけくださいね。」
「ありがとうございます。」
図書館司書のレンといつもの挨拶を交わした後、閉館時間までたっぷり本を読む日が数日続くが、グスタフたちがクエストに向かった日から4日目には、私の調べ物は一応区切りがつくことになる。
まずは、魔導帝国のこと
現在『魔導帝国』と呼ばれている国を造ったとされるのは、現在、我々が『古代高等人類』と呼んでいる者たちだ。
神話が事実で、現在の暦である『神暦』が正しくカウントされているのであれば、魔導帝国は今から3,173年前まで地上に君臨していた国家である。
古代高等人類は、神が自分の姿に似せて造ったのだという説が多い。
ついでに言うと、古代高等人類が自分の姿に似せて造ったのが人族だ。 つまり、神と古代高等人類と現在の人族は、外見上は似ているということになる。 神話は人が創ったものなのだから、神なども人の姿だったと言うのは当然なんだろうけど・・・
古代高等人類は、やせ型の色白金髪で、その瞳は金色であったとされる。
現在の人間には、色白や金髪の人間は沢山いるけど、なぜだか黄金の瞳を持つ人間はいない・・・らしい。 少なくとも記録にはない。
とにかく、一度地上に現れた古代高等人類は、あれよあれよと『魔導』の技術を発展させていき、地上を支配してしまう。
古代高等人類が発展させた魔導とは、現在我々が使用する『魔法』とは一線を画す強力なものであり、『古代魔法』とも呼ばれる。 その殆どは魔導帝国と共に消え去ってしまったが、いくつかは魔導帝国の施設跡『遺跡』から『遺物』と同様に発見されており、現代でも古代魔法は存在しているそうだ。 ただし、使用法が分かっている古代魔法でも、現在の人間の魔力では、何十人もの魔法使いの魔力を集めないと使用することはできないようであり、いくつか現存するという古代魔法は、オーディア教団が回収し秘匿しているため、どの様な効果のある古代魔法があるのかは一般には明らかにされていない。
急激な進化をしていく古代高等人類が、自らの手足として働く存在として、原生動物に手を加えて人族の祖先を造りだしたとされる。
いくら姿が似ていたのだとしても、神と古代高等人類が違うものであるように、古代高等人類と現在の人間は全く別の生き物なのであろう。
しかし、人族を創り出したことが、秩序神の不興を買う事になる。
元々、自分が定めた方向性に従い、ゆるやかに進化していくことを良しとしているのが秩序神だ。 恐らくは、自分の示したルールから外れて、しかも急速な進化をして行く古代高等人類は、秩序神にとっては面白くない存在であったことだろう。
逆に、混沌神は諸手を挙げて歓迎したに違いない。
神々同士の間では、世界が始まってからの地上での出来事には干渉しないという、暗黙のルールがあったようで、秩序神も一度はこのルールに従い、古代高等人類を見逃した。
古代高等人類は、その後自らが創造した『人族』を基に、様々な人間を争うように創り出す。
力が強い者、魔力が高い者、獣の力を持つ者、翼を持つ者など、本当に必要だったのか? と、疑問に思うくらい沢山の種類の人間を創り出した。
私の個人的意見を言わせてもらえれば、最初は・・・例えば、今の人族よりも力の強い種族が欲しいなどと、必要があって創ったものだったのだろうが、その内に「創ってみたい」とか「創れるはずだから」とか、そう言った趣味や好奇心によるものだったのではないかと思う。
それらが、現在では6種族に分類される人間である。 6種族の分類には、若干疑問がある部分もなくはないが、とにかく6種族にまとめた訳である。
人族、妖精族、獣人族、妖魔族、爬虫人族、翼人族とあるが、皆ベースは人族で、体の一部に獣や鳥などの特徴を持つ。
逆に、獣をベースにした人間のような姿の種族『ライカンスロープ』などもいるが、それらは『亜人』と呼ばれ、人間ではないとされている。
悪者の代名詞『ゴブリン』や『オーク』なんかも分類としては亜人だ。
亜人は、人間に対して危害を加える者が多いが、中には友好的な者もおり、そういった者たちを人間社会の中でも少数は見かけることがある。
神以外に、人為的に人間を創り出した古代高等人類は、その人間たちを使役して発展を続け、ついには神をも超える存在になろうとする。
一度は見逃した秩序神も、さすがに見逃すことはできなかったようで、古代高等人類を滅ぼすことに決める。 その際には、直接自らの手を下さずに、人間たちに力を与えるという間接的な方法を取ったのは、先にも触れた神々のルールがあったからだろうか?
秩序神が間接的に力を与えるといった方法が、神々のルールに抵触しなかったのかは疑問もあるが、秩序神自らが、秩序たるルールを破ったのでは元も子もないので、セーフと判定されたのだろうか?
実のところ、その神々のルールって言うのもいい加減で、魔導帝国が滅んだ後1,000年位までの伝説の中には、神さまと人間の子供が出てくる逸話は多数ある。 つまり、神さまが地上に住む人間との間に子供を作り、産んだり産ませたりしている訳だ。 そして、その半分神である子供は、強力な能力を持っていて『英雄』と呼ばれていたりする。
これについて、私に言わせてもらえれば「それって干渉していませんか?」って感じだけど、神さまの思惑は人間なんぞには推し量れないのだろう。
本当かは疑わしいけど、世界にはその伝説の英雄『神の子』を祖先に持つと主張している一族がいくつかある。 私の身近なところで言えば、私の生まれ故郷八州国の王に当たる『天子さま』がそうだ。 天子さまは、八州国における太陽神の血を持つ子供の子孫だと言う話になっている。
それらの中には、他に類を見ない特殊なスキルを保有していたりする一族もあるらしいので、もしかすると本物はいるのかもしれない。
とにもかくにも、そうして秩序神ほかがバックについた『光の12勇者』と、古代高等人類が混沌神から借りたか盗んだかして手に入れた力を与えられた『闇の12勇者』との戦いになっていく訳である。
すみません。 12勇者の話は、次回に続きます。




