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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第7章 クロエとミオ4

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第5話

「それじゃあ、今日も図書館に行ってくるね。」

 朝食を終えた私は、早速出かけようとする。


「あ、クローエちょっと待って、私も出かけるから途中まで一緒に行きましょう。」

 と、シンシアが声を掛けて来た。 特に断る理由もないので、シンシアと一緒に出掛ける。


 ホームを出て、しばらく会話もないまま並んで歩いていたが、突如シンシアが話しかけて来た。

「どう? クローエの調べ物は・・・まだ結構かかりそうなの?」

「うーん。 もう2~3日で終わりそうかなって思っているけど。」

「そうなのね。」

「うん。 シンシアはどこに行くの?」

「えーとね・・・あ、あそこの喫茶店に少し付き合ってくれない?」

「え? ご飯食べたばかりだよ? それに私は調べ物が・・・」

「いいから、ちょっとだけ・・・いいでしょ?」

「う・・・うん。」

 私には、シンシアの思惑が見えていた。 恐らくミオの件で、なにか私に釘を刺そうというのだろう。


 お店に入ると、コーヒーの良い香りがする。

 朝食には遅く、昼食には早い時間であるためか、店内に客はあまりいない。


「ここにしましょうか。」

 シンシアは、お店の奥にある他のテーブルから少し離れた場所にあるテーブルに座る。 私は、シンシアの向かいに座る。


「クローエは、コーヒー大丈夫だったかしら?」

「うん。 飲めなくはないよ。」

「じゃ、ミルクとかにする?」

「ううん。 眠くならないように私もコーヒーにする。」

「そう? じゃあ・・・コーヒー2つお願いしま~す。」


 少しして運ばれてきたコーヒーを前に、シンシアが話し出す。

「クローエ・・・実は、ミオのことなんだけどね。」

「あー・・・ミオさんが猫田さんを好きかもってことでしょ?」

「え? クローエ気付いていたの!?」

「私は、結構前からそう思っていたよ。」

「あらあら・・・そうだったのね。 じゃあ話は早いわ。」

「・・・・」

「クローエ、ミオの恋のために、あなたにも協力してほしいのよ。」

「シンシアはさ・・・攻めの姿勢だよね? シンシアはグスタフの時に、その姿勢で成功したんだものね?」

「え? ま、まあその通りだわね。」

「でも、ミオさんの場合は・・・まだ、その段階ではないって私は思っているよ。」

「どういう事? 猫田はあんな感じだし、ミオから動かないと進展はしないんじゃないかしら?」

「それは、その通りだと思うけどね。 私やシンシアからみたら、ミオさんは、多分猫田さんの事が好きなんだろうって見えるけど、ミオさんはまだ自分の気持ちに気付いていない・・・っていうか、気付かない振りをしているように思うんだ。」

「クローエ・・・」

「今、変に周りが余計な事をすると、ミオさんは猫田さんへの気持ちを閉ざしてしまうんじゃないかって・・・私は思うんだよね。」

「・・・・」

「だからさ、ミオさんが自分の気持ちを認めるまでは、少しだけ力になってあげるってことが良いんじゃないかな? ミオさんが本当に自覚した後でなら、全力で応援するから。」

「・・・そうね。 あなたの言うとおりかもね。 私、少し先走りすぎていたのかもね。 グスタフと違って、ミオも猫田もまだ若いしね。 そこまで焦ることはないかしらね。」

「シンシア、今は少し見守りましょう。 ただ、猫田さんは相当手強そうだから、ミオさんが気持ちを固めたら、3人がかりで落としに行きましょう。」

「そうね。 分かったわクローエ、少し様子を見ながらにしましょう。」

「お願いねシンシア。 それじゃ、私は図書館に行くから。」

「ええ、行ってらっしゃい。 なるべく早くに帰っていらっしゃいね。」


 私はシンシアと別れ、1人図書館に向かう。

 今日は、結構言いたい事言えたし、シンシアも賛成してくれたみたいで良かった。

 後は、ミオのことを生暖かい目で見守りながら、少しだけ背中を押して行こう。



「お早うございます、クロエさん。」

 図書館に着くと、司書のレンさんが声を掛けてくれた。

 連日の図書館通いのお陰で、司書さんにもすっかり顔と名前を憶えられたようだ。

 もちろん、初日にミオが暴れた影響も多分にあるだろう・・・たぶん・・・


「お早うございます、レンさん。 今日もお邪魔します。」

「今日はいつもより遅かったですね? いつもなら開館と同時にいらっしゃるのに。」

「えへへ・・・ちょっと、うちのメンバーとお茶して来ちゃいました。」

「そうでしたか。 本日はお探しの本はありますか?」

「えーっと、魔導帝国と12勇者のことが書いてある本が見たいんです。」

「そうですか・・・じゃあ、僕がご案内しますよ。」

「よろしいのですか? それでは・・・すみませんがよろしくお願いします。」

「では、こちらに・・・」

 そう言って、レンさんが歩き出したので、私は後に続く。


 レンさんは、見かけは20才前後の人族の男性だ。 今は図書館司書をしているが、その前には魔法士として冒険者をやっていたそうだ。 しかし、クエスト中に負ったケガが原因で、パーティから外されたらしい。

 そのケガの影響か、少し歩くのに不自由があるように見える。


「レンさん、歩かせてしまってすみません。」

「ああ、やっぱり分かっちゃいますか? 痛くは無いんですが、何というか・・・右足の可動域が少し減ってしまっているようで・・・お見苦しいところをお見せしてしまって・・・」

「いえ、そんな事は・・・」

「ああ、ありました。 この辺が魔導帝国に関する書物がある場所です。 12勇者のことも記載されているものも多いはずですよ。 もっと12勇者に特化したものですと、隣の書棚にありますね。」

「ありがとうございました。」

「では、僕は戻りますね。 何かありましたら、また声を掛けてください。」

「はい。 ありがとうございます。」


 レンさんが去った後、私は早速教えて貰った書棚から数冊の本を取り出して、閲覧場所に向かう。


 昼食も忘れて本と格闘しているうちに、あっという間に閉館の時間となる。

 私は、本を書棚に戻して、受付のレンさんに挨拶をしてから図書館を後にした。



 ホームでの夕食の最中に、グスタフから新しいクエストを請けたことが伝えられる。


「クロエ、俺たちは明日からクエストでシザース高地に向かう。 簡単な採取クエストだが、戻って来るまでには10日くらいはかかると思う。 お前はどうする? 一緒に行くか?」

「そっか・・・今調べ物も佳境だからなぁ・・・私がいないことで不都合が無ければ、私は調べ物を優先させてもらっても良い?」

「そうか、それなら別にいいぞ。 ただ、しばらくはお前1人きりになるが、大丈夫か?」

「うん。 ここでお世話になる前はずっと1人だったし、平気だよ。」

「クロエ・・・ミオは平気じゃないんだナ?」

「ありがとうミオさん。 少し時間が出来るから、私たちのお部屋を片付けておきますね。」

「え? いや、ミオの部屋に捨てるものなんて無いんだナ。」

「え? いや、ミオさんの私物は勝手には捨てませんけど、少し・・・いや、かなり整頓して床のお掃除とかしますよ。 ゴミは大量に出てきそうだから、それは捨てます。」

「そうよミオ、あんたクローエと一緒になってから多少はましな部屋になったけど、まだまだ汚いんだから、クローエに掃除してもらいなさいよ。 あと、自分でも少しは掃除しなさいな。」

「う・・・うん。 クロエ・・・ミオに黙って捨てないでくれナ?」

「はい、安心してお任せください。 皆はクエスト頑張ってね。 特に猫田さん、ミオさんの事守ってくださいね?」

「え? ああ、もちろんだよ。 ミオだけじゃない、新婚のご夫妻も守るさ。」

「あー・・・うん。 そうなんだけど、そうじゃないんだよなぁ・・・もう、猫田さんは相変わらずですね。」

「え? 何が? 自分何かおかしなことを言ったかい?」

「クロエ、しばらく1人になるが、昨日言った事忘れるなよ。 暗くなる前に必ずホームに帰ること。」

「分かりました。 ちゃんと約束は守るから、グスタフたちはクエストに集中して、ケガなんかしないようにね。」


 明朝、グスタフたち4人は、シザース高地に向かって出発していった。


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