第4話
夜、ミオ(と、私)の部屋にて
いつものように、ミオの大きなベッドで、私とミオは並んで横になる。
いつもとは違い、ミオからのスキンシップ的なものがなく、ただ並んで横になっているだけである。
「ミオさん。」
「ん? どうかしたのかクロエ?」
「猫田さんと何かありましたか?」
「ナ・・・なんだと!? クロエ何を言っているのナ!? ナ・・・ナニモナイ・・・のナ。」
「ミオさん・・・?」
「い・・・イヤ・・・そんな・・・本当に何もないんだナ。」
そう言うと、ミオは私に背を向けてしまう。
「ミオさん。 私の勘違いでしたら申し訳ありませんが・・・ミオさんは、猫田さんの事を好きになったのかな? って思うんですが・・・?」
「ナ!・・・な・・なにを言うんだクロエ!?」
「シンシアよりは頼りにならないかもですが、私には何も言ってはくれないんですか?」
「クロエ・・・」
ミオは、再び私の方に向き直る。
向き直ったミオの顔は、まさしく恋する乙女の顔をしていた。
(きゃあ~、なにこれ!? ミオさん超キュート! 元々カワイイのに、今は輪をかけてカワイイ!! なんかズルい!!)
「ミオにもよく分からないんだナ。 こんなのミオじゃないって思うのナ。」
「う・・・うーん・・・」
私の心の中では、可愛すぎるミオに興奮しまくりであったが、ちょっとツラそうに話しをするミオの前で、はしゃぐことなど出来る訳もなく、冷静を装うのに必死であった。
「ロアー・リブから戻って来てから、ネコタを見るとイライラすると言うか・・・殴りたくなると言うか・・・でも、気が付くとネコタを見ていたりとか・・・」
「はい。」
「それで、シンシアにちょっと聞いてみたんだナ。」
「はい。」
「そしたらナ・・・シンシアが『お姉さん(?)に任せなさい。』って言って、ネコタの座る場所を変えたんだナ。」
「え? 今日の話ですか!?」
「いや、もう4~5日前からだナ。 クロエがいないときは、ネコタが隣の席だったんだナ。」
「うわ・・・そんな感じだったの?」
「うん。 最初は、クロエがいないときは、クロエの席に座るのを許すって感じでナ。 それで、そろそろ良いだろうってことで、今日からネコタも横並びで座るってことに・・・」
「なるほど、それで猫田さんは特に疑問も持たずに普段通りだったんだな・・・」
ミオがシンシアにだけ相談したのも、シンシアが私には何も告げないで策を実行に移したのも、私が恋愛オンチだと考えているからだろう。
シンシアは、自分の成功体験から「突撃あるのみ」と考えている可能性が極めて高い。
しかし、ミオの場合は、あまり急かすのはかえって逆効果になりかねない・・・と思う。
もう少し、ミオが自覚を持つまでの間は、ほんの少しだけ背中を押してあげる位の方が良いんじゃないかな?
相手は、あの猫田さんだし・・・猫田さんだってミオの事はキライなはずはないだろうけど、猫田さんからミオへのアプローチは、まず見込めないだろう・・・
ああ、難しい・・・難しい・・・と言っても、私は当事者じゃないからこの程度だけど、当事者であるミオの不安な気持ちはこんなものではないのであろう。
シンシアが、先制攻撃からの波状攻撃を考えているのなら、私は少しだけ攻撃のスピードを抑えて、ミオが自分の気持ちにハッキリと気が付けるようする方向で行くことにしよう。 よし。
「ミオさん。」
「なんだ?」
「あんまり焦らないで、じっくり行きましょうよ。」
「え? なにを?」
「猫田さんは、あの眼のこともあって、私たち以外にはあまり拘わらないようにしていますから、すぐに誰かに取られちゃうってことは無いとは思いますけど・・・」
「はぁ・・・けど・・・なんだ?」
「けど、猫田さんは結構手強いと思うなぁ・・・」
「クロエ~! ミオは別にネコタのことなんて何とも思っていないんだナ!!」
ミオは、私に抱きついてギュっと締め付けて来る。
(ああ、イタイイタイ・・・だけど、コレだぁ・・・やっぱり、コレがないと。)
「私、ミオさんの事応援します。 だけどミオさんは、私のお姉ちゃんでもあるんですから、私の事も構ってくれないと、私スネちゃいます。」
「お・・・おう? クロエはお姉ちゃんのこと大好きすぎるナ。」
「そうですよ。 私、お姉ちゃん大好きですから。」
「お姉ちゃんもクロエが大好きなんだナ。」
「はい。 お姉ちゃん、今日はもう寝ましょうか。」
「おう。 クロエは明日も図書館か?」
「はい。 でも、後2~3日くらいで、知らべものは終わるかなと思います。」
「そうか。 じゃ、終わったらまた冒険に行くんだナ。」
「そうですね。」
そうして、私とミオは眠りにつく・・・
ミオが眠った後も、私は少しだけ起きていた。
今調べていること、姉鍔姫のこと、兄真鞘のこと、鍛冶のこと、パーティメンバーの人間模様・・・色々なことが頭をよぎって行く。
「とりあえずは、やっぱり身近なところからだよなぁ・・・ミオさんと・・・ああ、まずは図書館・・・を・・・」
すっかりお馴染みになった、ミオの温もりから来る猛烈な眠気により、声にならない私の独り言は、そこまでで終わってしまった。




