第3話
「ただいま帰りましたー。」
私が図書館から帰って、ホームの玄関から帰宅のあいさつをすると
「お帰りクロエ~。」
と、ミオの声がした。
私が居間に入ると、グスタフ、猫田さん、ミオの3人が食事用のテーブルに着いて話をしていた様であり、シンシアは台所で夕食の料理の最中だった。
皆が「お帰りなさい。」とか「調べ物は捗ったかい。」とか一声かけてくれる。
皆は、少しお酒を飲んでいるようで、楽し気ではあった。
ん・・・?
なんとなく違和感があった。
「クローエ、ご飯出来るから早く着替えていらっしゃい。」
「ありがとうシンシア、すぐに着替えて来るね。」
シンシアに返答した後、私は着替えのために2階のミオと私の部屋に上がる。
部屋着に着替えをしながら、先ほど感じた違和感がなんだったのか考える。
「ミオさんが、お酒飲んでいたのが珍しかったからかな?」
お酒があまり得意でなく、普段はあまり飲まないミオが、夕食前に・・・しかも楽し気に飲んでいたのが珍しかったからだろうか?
テーブルには、グスタフと・・・その向かいには猫田さんとミオが並んで座っていた。
猫田さんとミオが並んで!?
食事の際の席順は、グスタフとシンシアが並んでいて、グスタフの向かいはミオ、私はシンシアの向かいになる。猫田さんはシンシアと私の間・・・いわゆるお誕生日席が定位置だ。
実のところ、食事をするテーブルは、3人並んで座れるくらいに大きい(つまり6人座れる)のだが、ミオが「ネコタにはまだ早いナ。」と言った感じで、猫田さんを横並びに座らせてくれなかったのだ。
ええっ!? ちょっと待って・・・つまりアレか!? ミオが自分の気持ちに気付いて、行動を起こし始めたってこと?
もしそうなら、サポートしないといけないな・・・
しかし、グスタフとシンシアといい、ミオと猫田さんといい・・・異種族間の結婚で生まれるハーフは、一般的にどちらの種族からも歓迎されないんじゃなかったかな?
異種族間で生まれるハーフは、人族と他の5種族からしか生まれないと言われている。
例えば、人族と獣人族とか、人族と妖精族とか・・・必ず、父親か母親のどちらかは人族である必要がある。
ハーフで良く聞くのは、獣人族と人族のハーフと、妖精族(エルフ種が圧倒的に多い)と人族のハーフだ。 後は妖魔族とのハーフが若干見られるくらいか。 爬虫人族のハーフの話もあったと思うが非常に稀なケースだ。 翼人族のハーフに至っては聞いた事が無い。
エルフ種とのハーフが多いのは、人族からするとエルフは、長寿で見た目が麗しい上に、総じて魔力が高いのが人気なのであろう。 逆にエルフ側のメリットは少ないように思うが、長寿ゆえに性欲が薄く、自己の知識欲を満たすことに旺盛だと言われるエルフは、エルフ同士での子供が中々出来ないらしく、子供を欲しがるエルフが人族の繁殖力を当てにするってことなのかも。
獣人とのハーフが多いのは、6種族の人間の中で、人族の次に多いのが獣人族で(この2つの種族で、人間全体の6割から7割を占めると言われている。)、人族にはケモミミやケモシッポ好きが一定数いるからだろうか。
ハーフの見た目は、人族じゃない方に似るのが通例だが、その中身は、人族と他種族との中間・・・よりもちょっと低いような能力で、なんとも中途半端になることが多いらしい。
ハーフエルフを例にとると、見た目はエルフっぽいが、中身的には普通の人族よりも、少しだけ魔力が高くて寿命が倍くらいある代わりに、フィジカルは大分劣るって感じになることが多い。
まあ、当然個人差はあるのでハーフでも強くて活躍した人は、過去には何例かあるんだけど。
ついでに言うと、ハーフもまた人族との間にしか子供を成すことができないようだ。
ハーフと人族の子供は、クォーターということになる訳だが、ハーフエルフと人族の間にできた子供は、ハーフエルフか人族として生まれるので、本当のクォーターというのは存在しない。
グスタフとシンシアに子供が出来れば、その子供はハーフエルフとなり、猫田さんとミオに子供が出来たとすれば、子供はハーフトラ獣人になるハズである。
もっとも、猫田さんがただの人族であれば・・・だけど。
さて、それはともかくとして・・・とりあえず夕食に向かうとしよう。
みんなを待たせてしまう。
私が着替えを終えて1階に下りると、皆が席に着き私の到着を待っていた。
夕食の準備は既に完了しているようだ。
配席は・・・片側にグスタフとシンシアが座っている。 これはいつも通りだ。
対面には、猫田さん、ミオ・・・そして私の席であろう空席がある。 これはいつも通りではない。
私は、さも「今気づいた」風に声をだす。
「あれ? 猫田さん席が変わったんですね?」
「え? あ・・・そうよ。 もともと6人掛のテーブルだし、猫田もいつまでも新入りって訳じゃないしね?」
意外にも、シンシアが私の問いに答えた。
「そうなんですね。 ミオさんのお許しが出たんなら問題ないですけど・・・」
「・・・!!!」
私の言葉に、ミオとシンシアが「ビクっ」と反応していた。
(これは・・・? 先ほどの対応といい、今の反応といい・・・ミオさんは、既にシンシアを篭絡していると見ていいのかな?)
「いきなりだったので、ちょっとびっくりしちゃいました。」
「そ、そうかクロエ? まあ、いくらネコタと言っても、いつまでもあそこじゃ、さすがにカワイそうだと思ってナ、ミオはやさしいから許してやったんだナ。」
「そうよクローエ。 ベ、別にそんな大した問題ではないでしょう?」
「うん。 問題だなんて思ってないよ。 むしろ遅いくらいだと・・・猫田さん、良かったですね。」
「そうかい? 別に自分は元の席でも構わないんだけどね。」
(うん。 猫田さんは通常運転だな。)
「じゃ、じゃあ皆揃ったことだし、ご飯にしましょう。 クローエも早く座りなさい。」
「そ、そうだナ。 早く食べるんだナ。」
夕食は、皆が楽し気に話をしながら進んでいった。
そう、私1人を除いて・・・
食事が終わるまでの間、私は時々相槌を打ったりしていた他「へぇ~」と「そうなんですね~」の2言しか発した覚えがない。
どうやら、私が望んでいた方向に進みつつあるようだけど・・・なんだろう、思っていたよりも疎外感が強い。 これで、もし本当に猫田さんとミオがお付き合いすることになったら、私の居場所は無くなるんじゃ!?
それに・・・この湧き上がる感情・・・これって「嫉妬」!?
ミオの恋(?)を応援しようと思っていたはずなのに、いざミオが行動を始めた(と、想定される)とたんにコレか・・・と、私は自分に少し幻滅していた。
しかし、それはそれとして、ミオがシンシアを取り込んだと思われるが、私には何も言ってくれなかったことについては、ちょっと一言申し上げたいところである。
今夜ミオに問い質す!!
食事を終えて部屋に戻る際に、私は固く決意した。




