第1話
シンシアの思い違いから巻き起こった揉め事等がひと段落し、私とミオの2人で作った夕食を皆で囲んでいた。
1度は酔いからさめたと思われていたシンシアは、夕食の完成を待つ間にグスタフ、猫田さんと3人で少しお酒を飲んでいたようで、再び寝落ちしそうになっている。
グスタフから、今回の旅の話を聞かせて欲しいと言われたので、私は旅の間にあった出来事を伝える。
王都からロアー・リブ市に向かう途中で、商隊を襲う野盗に遭遇したが、ミオと猫田さんの活躍により野盗を撃退したこと。
ロアー・リブ市の武器屋に、私の打った剣を買ってもらったこと。
その後にミオと2人で、港町ならではの生魚料理を食べる事ができたのが嬉しかったけど、その料理を食べている最中にミオをナンパしてきた冒険者がいて、ミオが冒険者を瞬殺してしまったこと。
そして最後に、ロアー・リブ市からの帰りに、再び立ち寄った王都での出来事を話す。
「それで、王都に着いたのが閉門の直前で・・・無事に王都には入れたんだけどね。 すぐに宿に行こうって事になって、見つけた宿は『子うさぎ亭』っていう、うさぎ獣人さんばかりの宿でね。 うさぎさんがとっても可愛かったんだよ。」
「そうか。 それじゃあ、その日は観光も出来なかったんだな。」
「う・・・うん・・・」
「おい、クロエ。 グスタフにもちゃんと言え。」
「ミオさん・・・ちゃんと話しますよ。 兄さんの件もありますし。」
「は? 何だと? 兄って言ったのか? え? お前が探しているのは姉じゃなかったか?」
「グスタフ、ちょっと待つんだナ。 順番、順番。」
「お、おう・・・すまねぇな、クロエ続けてくれ。」
「その・・・王都に入ったのは閉門直前だったので、それから宿を探して夕食を食べたらもう夜です。 宿は1人部屋だったので、皆すぐに自室に戻ったんですが・・・」
「おう。」
「私は、まだ眠くなかったもので・・・その、王都の大通りは夜でもとても明るくて・・・せっかく王都に来たのに、2回とも素通りしてしまうのはもったいないなぁ・・・なんて思ってしまって、大通りだけでも見ておきたいって・・・私1人で出かけてしまったんです。」
「おい、クロエ・・・お前らしくないじゃないか。 夜の街に1人で出歩くなんて、ミオたちに心配かけると思わなかったのか?」
「その・・・もちろん、思わなかったわけじゃないけど・・・好奇心に勝てませんでした。 ごめんなさい。」
「ああ・・・まあ、お前は年の割にしっかりしているから忘れがちだが、成人済とは言え15才だもんな。 初めての王都に興味が湧くのは仕方ないかもな。」
「ええ、まあ・・・ただ、もう16才になったけどね。」
「ナニ!? おい!! お姉ちゃん聞いてないゾ!! いつだ!?」
「私は1月生まれなので、千剣山脈の遺跡に行っていたころですね。」
「もー。 そう言う事はお姉ちゃんに話しておいて欲しいナ。」
「ごめんなさいミオさん。 ミオさんのお誕生日はいつなんですか?」
「あー、ミオはな・・・」
「おい、悪いがその話は後で2人の時にしてくれや。 クロエ、続きを聞かせてくれ、兄貴はどうなるんだ?」
「そうだねゴメン。 明るい大通りだけ見ようと思っていたんだけど、ちょっと考え事をしている間に大通りから外れてしまっていて・・・すぐに帰ろうと思った矢先に、女性の悲鳴が聞こえたんです。」
「それで、叫び声の方に行ってしまったと?」
「はい。 女性2人が悪党に襲われていて、私が着いたときには、先に駆け付けた剣士が悪党と戦っていました。 私は、女性に近づこうとしていた男と戦ったんですが、剣士はその間に5人倒していました。」
「へえ、なかなかやるじゃないか。 その剣士が、お前の兄貴だったってか?」
「そうです。」
「え!? マジでか?」
「はい。 私は、兄は亡くなったと聞かされていたので、凄くびっくりしました。」
「そうか・・・それは、まあ・・・良かったな、クロエ。」
「はい。 兄は仕事があるので、翌朝にも少しだけ話をして別れたんですが、時間が取れたら私に会いにアローヘッド市に来てくれるって約束してくれました。」
「そうか。 俺も挨拶しておかないとならんな。 その時には、是非俺にも合わせてくれよ?」
「はい。 是非。」
「ちょっと、クローエ?」
「シンシア起きていたの?」
「うん・・・うとうとしていたけどね。 あなたたち、ロアー・リブに向かう時と・・・クローエは王都でも誘拐犯に出くわしたってことでしょう?」
「そうだね。 少なくとも王都の悪党は、誘拐目的だったんじゃないかな?」
「ちょっと聞いた話だと、王都よりも西側や北側では誘拐事件が結構あるみたいなのよ。 別個の事件もあるのだろうけど、大規模な誘拐組織が動いているらしいって噂もあるのよね。 貴女たちも可愛いんだから、気を付けなさいね。」
「確かに、ミオさん位可愛かったら狙われちゃうかもしれませんね。 でも、ミオさんなら逆にやっつけちゃいますよね。」
「まあナ。 でもクロエだって狙われるゾ、可愛いからナ。」
「ええ~。 ミオさんが気を遣ってくれているよ。」
「クローエ、冗談じゃないわよ? あなたも気を付けなさいね。 後は・・・なんだっけ・・・えーっと、確か・・・ラッパと・・・骨が・・・」
「えっ? シンシアちょっと待って!! 今言ったのって、もしかして『ラッパを持ったガイコツ』の入れ墨の話じゃないよね!?」
「あ、そうそう。 それだわ・・・って、クローエ知っていたの?」
「う、うん。 その・・・たまたまだと思っていたんだけど、ロアー・リブでの強盗と、王都での悪党と・・・どっちにも『ラッパを持ったガイコツ』の入れ墨をしているヤツがいたんだ・・・」
「そうなの!? 猫田、ミオも見たの?」
「いや・・・自分は覚えていないな。 ああいう輩は、入れ墨しているのが多いものだろう?」
「ミオは?」
「あー・・・えっと・・・ミオも覚えていないけど、クロエが言うんならそうだったんだろう・・・ナ?」
「それで、シンシア? その『ラッパとガイコツ』はなんなの? やっぱり同じ組織のシンボルか何かだってこと?」
「え、ええ。 私も詳しく聞いたわけじゃないんだけど、大規模な誘拐組織の噂を聞いたときにね、その話をしてくれた人が『ラッパとガイコツ』に気を付けなさいって・・・言っていたのよ。」
思い返してみれば、ロアー・リブ市に向かう途中で襲われていた商隊は、ロアー・リブ市で働こうとしていた女性たちの運搬もしていた。
その女性たちには被害はなかったが・・・彼女たちは、リゾート地で働こうというだけあって、皆結構美人でスタイルも良かったように思う。
もしかすると、強盗というよりは女性たちの誘拐が目的だったのではないだろうか?
そう考えると、辻褄が合うように思えた。
私は「あくまでも私見である」として、グスタフたちにその事を話した。 グスタフはしばらく黙って考え事をしていたが
「クロエの言っている事には一理あるかもしれんな。 だが、まあ俺たちにどうこうできる話ではないな。 それよりも、ミオ、クロエ・・・シンシアもだが、その誘拐団とやらが、アローヘッド市にも出張って来るかもしれんから、夜の1人歩きとかはしないようにしろよ。」
「はぁい。」
「おい、クロエ。 特にお前だぞ。 王都の一件もそうだが、お前は夜に1人で工房へ行き来したりしているんだからな。 今後は1人歩きはやめろ。」
「これからも、ミオが夕方には迎えに行くから大丈夫なんだナ。」
「そうだな・・・ミオ、そうしてやってくれ。 クロエ、今後は鍛冶をする時でもホームに必ず帰って来い。 いいな。」
「う・・・うん。 なるべく帰るようにするよ。」
「なるべくじゃない。 必ずだ、分かったな。」
「うん。」
「お前に万が一の事があったら、お前の兄貴に申し訳が立たないからな。」
「うん、そうだね。 ありがとうグスタフ。」
「おう。」
「それで・・・話は変わるんだけど・・・」
私は、王都で兄から聞かされた、この国の『神』や『聖女』・・・いや『12勇者』の事などを、自分でもよく知っておきたいと思っていたため、グスタフたちに「調べたいことがあって図書館に行きたいので、しばらくクエストには行けない」と伝えた。
グスタフは「そうか、分かった。 存分に勉強してこい。」と快諾してくれた。




