第11話
私とクーが姉妹デートを終えて、夕食の買い出しまで済ませて帰ってくると、エルザたちがどこかで買って来たと思われるツマミを、テーブル一杯に広げてお酒を飲んでいた。
「おー、お帰りー。 カメリア、クーゆっくり遊べたかい?」
などと言ってきた。 私も一応挨拶は返すが、毎日毎日お酒を飲んでいるコイツらに少し・・・いや、かなり呆れていた。しかも、クーが作ってくれる夕食の前にだ。
これは万死に値する・・・いやいや、昨日クーに怒られたばっかりだし、広い心とやらで許そうではないか。
ただし、夕食を残さず食べた場合に限る・・・だけど。
夕食前にお酒をかっ食らって、クーの作ったご飯を残した場合は滅してもいいよね?
クーがエルザ達に夕食は必要か尋ねたところ「食べる」とのことであったため、今日もクーが腕を振るってくれた。
出来上がったお料理は、やっぱり脂っこいお肉料理だったけど、まあ、冒険者メシはこんなものだろう。 今後は、もう少しさっぱりしたものも覚えてくれるといいけど。
食事の途中でエルザたちが満腹感を見せ始めたので、私が殺気を放つと黙って最後まで食べ続けた。
食事が終わると、昨日と同じように後片付けをして2階の部屋に戻る。
明日は、再度街道哨戒クエストを請ける予定なので、エルザたちも早めに眠るとのことで、すでに別々の部屋に入っている。
ベッドに入り眠ろうとしているクーに、私は声をかける。
「クー、手を出して。」
「はい?」
クーは何事かと小首を傾げていたが、私の言うとおりに手を差し出す。
「コレあげるね。」
そう言って、私はクーの手の中に、白銀の・・・だけど、1筋だけ金色が入った組紐を乗せる。
「え? なにこれ? キレイな・・・紐?」
「うん。 今日の魔法具店で売っていたのを買ったんだ。 これ自体は魔法具って訳ではないけどね。 クーの髪を縛るのに良いかと思ってね。」
「わぁ・・・嬉しい。 これで縛れば、髪ジャマにならなくなるね。 じゃ、やっぱり髪もっと伸ばそうかな。」
「そうだね。 伸ばしてみようよ。 ただ、前髪は少し切ろっか?」
「うん。 リア姉切ってくれる?」
「ええ、任せて頂戴。 それで・・・私のはコレ。」
私は、黒地に1筋金色が流れる組紐を取り出して、クーに見せる。
「あ、その色・・・もしかして・・・」
「そ。 クーにあげたのが私の髪色で、私のはクーの髪色。 お揃いのつもりなんだけど・・・どうかしら?」
「素敵っ! ありがとうリア姉・・・ううん、ありがとうツバキお姉ちゃん!!」
「ああ、もう・・・クー可愛いっ! 大好き!!」
辛抱堪らず、私はクーを抱きしめる。
「クーの髪がもっと伸びるまでは、エルザたちには内緒にしておこう。」
「そう?」
「そうだよ。 アイツ等は、私にばっかり隠し事をしているんだから、しばらくは隠しておいて、クーの髪が伸びたところで、一緒に付けて見せびらかしてやる。」
「気付いてくれますかね?」
「男連中はどうか分からないけど、エルザは多分気付くはずよ。 アイツがどんな顔するか楽しみだわ。」
「もう・・・性格悪くなっているよ?」
「これ位は良いでしょ?」
「うん。 そうかもね・・・」
翌日、私たち『深紅』は再びギルドに赴く。 本日もギルドは冒険者たちでにぎわっている。
今日はどんなパーティと組まされることになるのやら。
まあ、今はすこぶる気分が良いので、どんなパーティでも我慢してやるつもりだ。
2回目の合同クエストは、男ばかりの冒険者パーティと組まされた。
クエスト自体は、ブルグマンシアに遭遇することもなく無事に終了したし、クーがマジックバッグを買った後に、別のお店で買っていたお鍋で、食事時には暖かいスープを用意してくれたりと、良いこともあった。
だが、一緒に組んだクソ男たちが、エルザやクーにやたらとちょっかいを出そうとしていたので、危うく5体の氷の彫像に仕立て上げるところであったが、クーの説得のお陰もあり、なんとか踏みとどまって、全員無事に帰還できた。
人族の中でも巨乳種であるエルザは、貴族の血だからだろう、かなり整った顔立ちをしているので、以前から野蛮な冒険者たちには、そこそこ人気があった。
しかし、いくら可愛いとはいえ、まだ未成年のクーに手を出そうとする輩もいるとは・・・やはり、粗野な冒険者は好きになれない。
あれっ・・・・?
私は、気付いてしまった。
私は、小さい頃から母とよく似ていると言われてきた。 母はとても美しい人であったし、実際私は母によく似ていると自分でも思う。
里でも都の学校でも、よく美人だのと言われてきたが、思い返してみると・・・その大部分は同性からだったように思う。
しかし、私は冒険者などからちょっかいを出された経験がないことに気が付いた。
以前はエルザの事を『丁度いい男避け』くらいに思っていたのだが、そもそも私自身が声を掛けられた経験はないように思う。
いや、別に男にモテたいと言う訳ではない。 でも・・・なんだ? なんだろう・・・この感覚は・・・
その日の夜、私は思い切ってクーに話してみることにした。
「ねぇ、クー?」
「なに?」
「今回のクエストでさ・・・一緒にパーティ組んだヤツ等の中に、クーにちょっかい出してきたヤツがいたじゃない?」
「あ、あー・・・うん。 いたね。」
「実際のとこ、クーはどう思ったの?」
「うーん。 カワイイとか言ってくれるのは、お世辞だとしても嬉しくないわけじゃないけど・・・知らない人に頭触られたりとかは、結構イヤだったかも。」
「あー、やっぱりそうだよね。 あ、クーがカワイイってのは本当だけどね。」
「ありがとうリア姉。 今回の事があって、今までリア姉がどんなに嫌な思いをしてきたのか、少しだけだけど分かった気がしたよ。 大体、エルザさんもリア姉も一緒だったのに、私に構おうとするのってどうなの? って思っちゃうよ。 子供好きの変態さんだったのかな?」
「あー、そういう輩は少なからずいるようだからね。」
「うん。 そうなのかもね。」
「あのですね・・・」
「どうしたの? 改まって・・・」
「実は私・・・男の人に声掛けられたことないんだよね・・・」
「えっ!? ウソでしょう!?」
「いや、本当に・・・全く記憶にございません・・・」
「リア姉ほどの美人が・・・ありえない・・・」
「あー、そのことなんですけど・・・私、自分で言うのは何なんですが・・・美人だ美人だって良く言われて来たんですけど・・・それってお世辞的なものだったんだよね?」
「いや、違うよ? 私がリア姉と初めて会った時、女神さまと勘違いしちゃったくらいだよ? 私がいままで見た女の人で、一番リア姉が美人だよ!?」
「そうなのかしら? 別に男にモテたいって訳じゃないんだけどね? なんか私が勘違いしているだけなのかなって思ったんだよね。」
「いやいやいや・・・リア姉は超美人だよ。 きっとリア姉が美人すぎて、男の人が近寄りがたいって思っている・・・とかじゃないのかな?」
「そうかな? しつこいようだけど、男にモテたい訳じゃないからね? ただ、自分をもっと客観的にね・・・見ないといけないかなってね・・・思ったんだよね。」
「う、うん。 それは分かったよ。」
「私は、クーがいればそれで良いんだからね?」
「うん。 私もリア姉がいてくれれば、それでいいんだ。」
「ありがとうクー。 大好き。」
「昨日も聞いたよ?」
「毎日言うわよ。」
「そっか。」
「うん。 もう寝ようか。」
「はい。 ツバキお姉ちゃん、お休みなさい・・・」
「お休みなさい。 クリスターニャ。」
クーが眠ってからも、私は少しの間起きていた。
つまりアレだ・・・クーは私にウソは言わないと思うから、やはり私は一般的には美人ってことでいいんだろう。
私が異性にモテないのは・・・クーが言うとおり美人過ぎるから? それとも、都の学校に通っていた時とかみたいに、他人を拒絶するような雰囲気を醸し出しているから・・・っていや、別にモテる必要はないんだけど・・・後学のために、一度くらいは経験しておいてもいいかと思っただけ。
よし、とりあえずこの件も、もう考えるのはよそう。
明日もクエストだから、早く眠らなきゃだ。




