第8話
朝食を終えると「俺もちょっと出かけて来るからよ。 俺の昼食はいらないからな。」と、言ってゲオルグもどこかへ出かけて行った。
期せずして、クーと私の2人きりになってしまった。
「クー、これからどうしよっか? 私たちもどこか出かけちゃう?」
「うん。 でも、お家のカギ持ってないや。 リア姉は持っているの?」
「あー、私も持っていないわね。 じゃ、誰か戻って来るまでは2人で留守番だね。」
「そうだね。 カメリアお姉ちゃん・・・あっ、間違えた。」
「ふふっ。 そう呼ばれるのちょっと久しぶりだね。」
「ごめんなさい。 リア姉。」
「なに謝っているの?」
「だって、子供っぽいし。 私は、早く大人になるって決めたんです。」
「良いんだよ。 クーは十分大人になったよ。 でも、クーはまだ12なんだし、子供の部分があったっていいじゃない。」
「でも・・・」
「じゃあ、私と2人きりの時は気を抜いてもいいってことにしよう。」
「・・・・」
「呼び方も、リア姉でもお姉ちゃんでも、その時に呼びたい呼び方でいいよ。」
「うん。」
「こっちおいで。」
「うん。」
私は、隣に座ったクーを引き寄せてから、頭を優しく撫でる。
「リア姉・・・あんまり私を・・・子供扱いしないで・・・」
クーは、少し感極まったかのように震えている。
普段は大人ぶっているが、色々と無理をしているのだろう。
「可愛い妹を可愛がっているだけだよ? 子供扱いとは違うんじゃない?」
「・・・どうしてそんなに私の事を妹だって言うの?」
「あら? 言ったことなかったかしら? 私には妹がいるんだよ。」
「そう言えば、初めて会った時に言っていたかも。」
「そう。 未沙柄って言うんだけど、年はクーよりも1つ上かな?」
「・・・・」
「未沙柄も黒い髪でね・・・あ、私の母国ではほとんどの人は黒い髪なんだけどね。」
「その妹さんはどうしているんですか?」
「多分、今でも国にいると思うけど・・・もう4年も前に別れたきりだからね。 元気にしてくれると良いんだけど。」
「そうですか。」
「クーには兄弟姉妹はいないの?」
言ってから「しまった」と思った。 クーの実家は今大変なのに、変に思い出させてしまったかも。
「私にも3つ年上のお姉ちゃ・・・姉がいます。」
クーよりも3つ上ってことは・・・私よりも2つ下になるのかな?
「そうなの? お姉さんは・・・ご実家にいらっしゃるの?」
「いえ・・・ミオ・・・ミスティオン姉さんは、3年くらい前に父と大ゲンカをして、家から出て行ってしまいました。」
「そうなんだ・・・」
「はい。 それからは・・・どこにいるのか、どうしているのか全然分かりません。」
「そっか・・・私たちって結構境遇が似ているところがあるかもね。」
「はい。」
ちょっと、しんみりした空気になってしまった。どうにか明るい話題に変えたいな・・・と思っていた矢先のことだった。
「おう、今帰ったぜー。 クーいるか?」
エルザが帰って来た。
「はい、エルザさん。 何か私にご用ですか?」
クーは、玄関にいるエルザの方に向かって行った。
クーの姉が実家にいないっていうのは、今にしたら良かったのかもしれないな。
まあ、現在もどこかで生きているなら・・・だけど。
・・・なんて考えている自分が、今は少しイヤになる。
昔から思っていたことだけど、私は人としての部分がどこか壊れているんじゃないかって思ってしまう。
エルザとクー、あとパトリックが居間に入って来た。
「おう、戻ったぜカメリア。」
「朝からどこに行っていたのよ。」
「ああ、ちょっとな。 それよかさぁ、少しの間クーを借りていいか?」
コイツ・・・また、私に隠し事か・・・
「アンタ等が戻ってきたら、クーと出かけようと思っていたんだけど・・・」
「たまにはいいだろ? 代わりにパトリックを貸してやるから。」
「え?・・・いらない・・・」
「クー。 いいだろ? ちょっとアタシに付き合ってくれよ。 んで、帰りにはまた買い物して来ようぜ。」
「分かりました。 いいでしょリア姉?」
クーに頼まれたら嫌だとは言えない。
「分かったわ。 いってらっしゃい。 エルザがバカなことしないようにちゃんと見ていてね。」
「あはははは・・・じゃあ、行ってきます。」
「んじゃ、行ってくるわ。」
エルザとクーは、出かけて行った。 そう言えば、あの2人が2人きりで出かけるなんて珍しいことだ。
しかし・・・問題は、むしろ私の方だ。 パトリックと2人きりって・・・どうしたらいいんだ!? 外ならまだしも、家の中って・・・
私の苦悩をよそに、パトリックは窓の近くに腰を下ろすと、自分の装備の手入れを始める。 そうだった。 ヘタをすればパトリックは2~3日一言も喋っていないんじゃないかと思うことはままある。 別に無理をして話をする必要もないけど、今は1つ聞いておきたいことがある。
「ねえ、パトリック・・・」
「なんだ?」
「エルザとどこに行っていたのよ。 ゲオルグから朝早くに人が訪ねて来たって聞いたけど。」
「ああ、ちょっとな。」
あ、またこれだ・・・エルザといい、イラっとしてしまう。
「その『ちょっと』のことを聞いているんだけど?」
「すまん。 今日の夕食時にでもエルザから話があると思う。」
「そう? なら今日1日だけは待ってあげるわ。 エルザもそうだけど、あんまり私をナメないで頂戴ね。」
「ああ、お前を敵に回すつもりはないよ。」
「そう。 じゃ、私は2階に行っているから。」
「ああ、分かった。」
私は、2階の部屋に戻る途中に、言い過ぎてしまったのではないかと少しだけ後悔をしていた。
自分がエルザたちに仲間外れにされていると考えたのか? いや、それはちょっと違うと思うけど・・・ときどき私は自分の沸点がどこにあるのか分からなくなる。
やはり、私はどこか欠けているの部分があるのだろうか。
早くもクーの顔が見たくなる。 ・・・あれ? そういえば、クーに出会う前はこう言う時どうしていたんだっけ? 思い出せないなあ・・・早くクーに会いたいよ。




