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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第6章 カメリアとクー3

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第5話

 夕飯の買い物を済ませて、エルザの言う「伝手」に向かう道中、私はアローストリング市の時のような豪邸に連れていかれるんじゃないかと、内心ドキドキであった。


「よっしゃ、ここだぜ。」

 エルザの伝手に着いたようだ。

 私はエルザが指し示す建物を見て唖然とする。


「え? あれ? え? これなの?」

「ああ、そうだよ。」

 連れてこられた家は、ごく普通の2階建ての家だった。

 立派な柵もなければ、プールなんてもってのほかだ。


「え? 本当に?」

「なんだよカメリア、不満なのかよ。 お前、アローストリングの屋敷を想像していたのか? あんな所そうそう貸してもらえる訳ないだろ?」

「そういう訳じゃないけど・・・」

 そう、アローストリングのお屋敷は豪華すぎた。 さすがにあれは行き過ぎだと思う・・・だけど、一転してコレかぁ・・・普通の家・・・よりはボロっちい家だ。


「おう、お疲れ~。 早く上がれよ。」

 家の前でわちゃわちゃしていたのに気が付いたのであろう。 ゲオルグが玄関を開けて、私たちを招いている。

 まあ、宿なんかと一緒か・・・と思うことにする。


 立派すぎるお屋敷は遠慮願いたいが、いざ普通の家に・・・となると、それはそれでなんか面白くない。 乙女心は複雑なのだ。


 家の中に入ると、中は外見よりも相当キレイだ。 造りもそうだけど、掃除なんかも定期的に行われているとしか思えない。

 外から見えるところは、ワザとオンボロに見えるようにしているのかとも思う。


「ほら、中は結構キレイだろ。 内装はキレイに直してあるんだよ。」

 エルザが、まるで私の心を読んだかのような発言をする。 この女は時々油断できない。


「エルザさん! お台所はコッチですか!?」

「おう、その先だよクー。」

「よーし、頑張るぞ!!」

 クーが張り切っている。クーの初めての料理を食べられるんだから良かったかも。 使用人がいるようなお屋敷では料理はさせてもらえなかったかもだし。


「クー、アタシが見てやるから好きにやりなよ。」

「ありがとうございますエルザさん。 リア姉は?」

「アイツは多分料理なんてできないんじゃないか? 見るからに向かなそうだ。」

「そうかな~? リア姉にできないことはないと思うけど・・・」

 クーとエルザの会話が聞こえる。

 エルザの奴、私が料理できないとでも思っているのか? 「しない」のと「できない」のは違うんだよ? 私の場合、料理は「しない」のだ。 まあ、自分で料理をしようと思ったことも、したこともないのだけど。


 その後、エルザとクーの楽し気な会話が続いていた。

 私も料理勉強しようかな? クーと一緒に料理とか・・・楽しそうだ。

 しかし、エルザの奴、料理もできるのか? なら、今までなんでやらなかったんだろう? クエストの最中にも温かいスープ飲めるとかいいじゃない!!



 身の置き場所に困っていた私は、クーたちの邪魔をしないように、1人で2階に上がってみる。

 2階には部屋が3つ。 3つとも開けて中を見るが、大体どれも同じような感じだ。

 それぞれにベッドが2つと机とイスがあるだけで、まるで、冒険者用の宿屋みたいだ。

 寝具に触れてみるが、ちゃんとしている。 やはり誰かが時々掃除をしたり、布団を干したりしているのだろう。


 2階の検分を終えて1階に戻る。

 クーとエルザは、未だに楽しそうにしている。

 居間にいくと、ゲオルグはなにやら本を読んでおり、パトリックは脱いだ鎧やエルザの斧の手入れをしていた。

 私は、特に声もかけずにソファーに腰を掛けて、クーの料理が終わるのを待つことにした。


「お待たせしました~!」

 クーが大きなお皿を両手に持って居間に現れ、テーブルの上に置いたのち、すぐに台所に取って返し、また、お皿を持って戻ってくる。

 エルザは、今日の買い出しの時に買っていた酒瓶とグラスをテーブルに置いた後にイスに座った。


「ママも、おじちゃん達も来いよ。 メシにしようぜ。」

「初めてなので、ちょっと見た目が悪くって・・・ごめんなさい。」


 どれどれ、クーの初料理はどんな感じかな?


 テーブルの上には大皿が2つと、山盛り野菜の入ったボウルがある。

 お皿の1つは、お肉と野菜を炒めたもののようだ。 香ばしい香りがする。 色は・・・大分茶色い。

 もう1つは、卵と小さく切った野菜をやはり炒めたようなものだ。 少しコゲている所も見える。

 山盛り野菜は、数種類の葉野菜と、スティック状に切った色の付いた数種類の野菜が入っている。

 野菜の切り方は非常に上手だ。

 初めてにしては上出来だと思う。 さすがは我が妹だ。


「すごいじゃない。 クー、あなたって本当に自慢の妹だわ。」

「少し、コゲちゃったりもしてるけど・・・次はもっとうまく作るから。」


 クーの初料理だということで、エルザたちもお酒は後にして、先にご飯を食べる。

 野菜盛り以外は、ドンドン減っていった。

 私も2つともいただいたが、おいしいと思った。 味付けが少し濃いとは思うけど・・・クーも含めて、ほかのみんなは美味しそうに食べているから、これが正解なのかも。 普段お店で食べる料理も基本味濃いし。

 私は、皆があまり手を付けない野菜を中心に食べるが、そんなには食べれない。 必然、野菜だけが余ることになる。


「あんたら・・・野菜をもっと食べなさいよ。」

「なんだよママ、本物のママみたいなこと言うなよ。」

「あんたらこそ、野菜嫌いの子供じゃないんだから・・・言われなくても野菜食べなさい。 クーもちゃんと野菜食べないとダメよ。」

「はい・・・リア姉。」

 渋々野菜に手を付けるクー。

 出会った頃は、むしろ野菜を多く食べていたような気がするけど、エルザたちに毒されて、すっかり肉食になったみたい。 まあ、トラだし肉食なのは仕方ないか。


「野菜も採らないと、ちゃんと大きくなれないわよ?」

「はい。」

「いや、クーは結構育っているだろ? ママなんかより、特にむ・・・」

 エルザは、私の殺気に気が付いたのか、途中で言葉を止めた。


 血を見ることなく、無事に夕食は終わった。

 私とクーは、一緒に洗い物をする。

 洗い物って、食事をした食器以外にも調理段階で使用したものもあったりで、思っている以上に多いものなんだな。

 改めて、毎日毎食ご飯を作ってくれていた母と母上さまに感謝の念を送る。


 エルザたち3人は、テーブルにて食事の時に飲まなかったお酒を飲んでいた。

 洗い物を終えた私とクーは、居間のソファーに座る。


「おい、カメリア。 話があるんじゃなかったか?」


 そうだった! クーの料理を堪能しすぎて忘れるところだった。


「そうだったわね。 クー、あの『ホネラッパ』の入れ墨のことを話してくれる?」

 私の言葉を聞いたクーの体が硬くなるのが伝わる。


「う、うん。 そうでした。 エルザさん、ゲオルグさん、パトリックさん私の話を聞いてもらってよろしいですか?」

「おう、話してくれ。」

「はい。 先日の強盗団の腕にあった『ガイコツとラッパ』の入れ墨のことなんですけど・・・」

「ちょい待ち。」

「なによエルザ、せっかくクーが頑張って話そうとしているのに。」

「あの入れ墨な、とりあえず『ブルグマンシア』って呼ぶことにしようぜ。 『ホネラッパ』とか言われると、気分が萎えちまうわ。」

「そ、そうね。 そうしましょう。」

「ギルドにも『ブルグマンシア』で通しているから、もしかすると正式な呼称になるかもしれないしな。」

「分かったわ。 クーも良い?」

「はい、分かりました。 けど、ブルグマンシアって何なんですか?」


 ゲオルグが、クー(あとパトリックにも)にブルグマンシアの事を説明する。

 私も説明を聞くのは2回目だが、やはりブルグマンシアと言う呼び方の方がソレっぽいなと思った。



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