第4話
強盗団と戦った日から5日。
私たち一行は、アッパー・リブ市まであと半日という位置まで来ていた。
この5日の間で、捕らえた強盗団の生き残りに『ラッパとガイコツ』のシンボルについて問いただしたが、まあ、素直に答えてくれる訳はなかった。
クーの話を聞いた後だったので、私は捕虜の何人かを犠牲にしてでも情報を引き出すつもりであったが「暁の戦士団や難民のいる前で荒事はよせ。」と、エルザに止められたので、踏みとどまっていた。
恐らく、このクエストにおいての最後になるであろう休息の最中に、私はエルザとグレンを呼び出した。
「なんだよこんな所で・・・」
「カメリアから声かけられるなんて珍しいな。」
「ええ、もうすぐ街に着くから、その前にちょっとアンタたちに話しておこうと思ってね。」
「へぇ・・・ホントに珍しいな、こういうの。」
「詳しくは、街に戻ってからクーたちも交えて話をしたいんだけどね。」
「おう・・・」
「あの『ホネラッパ』・・・とりあえず『ブルグマンシア』って呼ぶわね? で、そのブルグマンシアなんだけど、クーがサウス=カプリコで捕まっていた時にも見たって言っていたのよ。」
「・・・マジか?」
「ええ、クーとっても怯えていたわ。 ゲオ・・・グレンはあの屋敷に入っていたんでしょう? ブルグマンシアに見覚えは?」
「いや、俺が会っていたのは料理人とか雑用係とかで、純粋な組織のメンバーって訳ではない雇われの連中だったからな。 俺が潜入できたのもそういうヤツに化けたからだしな。」
「だけど、クーを助けたってことは、組織のヤツと接触はしたんだろう?」
「そりゃあね。 当然、地下の監禁部屋には見張りもいたからな。 ソイツ等を数人倒してはいるけど、そんなん気にしている時間は無かったって・・・ああいう連中は彫り物しているのも多いしな。」
「それもそうね。」
「だろ?」
「エルザ、街に着いたらブルグマンシアの連中はどうするの?」
「ギルドに引き渡すことになるだろうな。 後は、ギルドでお話ししてもらうか、そこからさらに兵士に引き渡して、国の方でお話ししてもらうことになるんじゃねぇか?」
「11人もいるんだし、1人か2人くらいはこっちで貰えないかしら?」
「おいお前・・・なにか物騒な事考えているだろう?」
「別に。 肉体的苦痛を与えて吐かせるなんて、そんな野蛮なことを私がするとでも?」
「いや、お前の場合は、精神的な苦痛を与えて吐かせた後に、肉体を丸ごと消しちまいそうだな。」
「言い方! ちょっと魔法の実験に付き合ってもらいたいだけよ。」
「カメリア・・・お前は、クーが絡むと本当に見境なくなるな。」
「止めときなよカメリア。 そんなんクーに知られたらドン引きされるぞ?」
「それは・・・困るわね。」
「ブルグマンシアの連中の調書は、アタシが伝手を使ってでも何とか手に入れてみせるさ。 第10国でのことと関係あるんなら、アタシも供述内容には興味があるしね。 なんで、事情聴取なんかは本職に任せようぜ。」
「・・・仕方ないわね。」
「よし、じゃあ街に戻ったら、皆で安心して会議できる場所を伝手に借りてくるわ。」
エルザの口から時々出る『伝手』・・・エルザの実家に関係するのだと思うけど・・・本当にエルザは何者なのだろうか?
エルザたちと別れた後、私は少し遠くからクーを眺める。
クーは、なにか大きな塊・・・・いや、パトリックだわアレ。 パトリックと何か話しているようだった。
いつものように笑っているクーを見て、少し安心した。
アッパー・リブ市の城門をくぐる際に、難民たちは警備の兵士によって連れていかれた。
難民たちは、私たちに向かって何度もお礼を言っていたけど、別に難民を助けに行った訳ではないし、アッパー・リブ側が受け入れてくれるのも分からない。
強盗団の捕虜たちについても、兵士が引き渡しを要求していたが、エルザの交渉により、ギルドに引き渡すことの了承を得た。 ただし、ギルドまでは兵士の監視付きとなる。
ギルドに到着後、エルザとアッパー・リブ冒険者ギルドのギルド長、一緒に来た兵士が話をしていたが、やがて兵士は引き上げ、もうしばらくするとエルザも戻って来た。
エルザは、暁の戦士団も含めた私たちが待つテーブルに、ドンっ!と、袋を置く。
「今回の報酬だ。 メンドいから10等分でいいな?」
「エルザさん、僕たちはあまり役に立てなかったので、エルザさん達と同額は貰い過ぎです。」
暁の戦士団のリーダーミシェルが殊勝なこと言う。 さすがに他のメンバーも同意見のようであった。
「いや、元々のクエスト報酬は1人当たりで払われるし、討伐報酬は・・・まあ、アレだが・・・お前たちがいなかったら難民の被害も増えただろうし、何より11人も捕まえられなかったよ。 護送中とかもお前らに任せきりだったしな。」
「ですが・・・」
「まあ、若いんだから遠慮すんなって。 お前らもそれでいいだろ?」
結論を先に出しておいて、一応、私たちの同意を求める。
ここで文句を言ったら、私が守銭奴みたいに思われるじゃないか。
「私は別にいいわよ。」
「ああ、俺も文句はねえぞ。 ミシェルたちの今後の活躍に期待して・・・だな。」
「・・・・」
私、グレンに続いてパトリックが無言で頷き肯定を示す。
「私も問題ないです。 私は暁の戦士団の皆さんと一緒にクエストが出来て嬉しかったよ。」
最後にクーも同意した。
「皆さん・・・ありがとうございます。」
リーダーミシェルが私たちにお礼を言った後
「これからもっと活躍できるように努力します。」
「僕は、魔法士としてカメリアさんに近づけるように頑張ります!」
などと、暁の戦士団の連中は口々に言っていた。
最後は、レティとデイジーがそれぞれクーの手を握りブンブンして名残惜しんでいたが、やがて暁の戦士団の連中は去って行った。
「よし、それじゃあ今日は宿じゃなくって伝手のところに行くぞ。」
出た。 例の『伝手』だ。 アローストリングの時みたいな豪邸に連れていかれるんだろうか?
「グレン、一足先に向かっておいてくれるか?」
エルザは、グレンに何かを渡す。 鍵のように見えたが。
「分かった。」
その何かを受け取ったグレンは、すぐに立ち上がって何処かに消えた。
「よし。 じゃあ買い物しながら帰るとしますか。」
エルザの言葉に続いて、皆立ち上がる。
「パトリック、お前も先に向かってくれ。」
「どうしたエルザ。 買い物行くなら俺は荷物持ちにいた方がいいだろう?」
「いや、お前・・・その鎧着て大楯を持って買い物行く気か? アタシの斧持って先に行ってろ。」
「ああ、そうか・・・そうだな。 分かった。」
パトリックは、エルザの両手斧を受け取ると1人別方向に向かった。
「買い物って・・・またお酒?」
「まあ、酒もだけど・・・夕飯のさ。」
「ああ、お弁当とかそういうのね。」
「だったら私が作ってみたい! デイジーとレティに教えて貰ったし!」
「お、そうか? じゃあ、出来物じゃなくって、肉とか野菜とか買うか?」
「はい!」
「あそこなら竈も調理器具もあるし、調味料とかもそれなりにあるから材料だけ買えばいいな。 よし、じゃあクーに任せるぞ!!」
「はいっ!!」
そんな感じで話はまとまり、私たちは夕方の市場に向かった。




