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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第5章 クロエとミオ3

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第11話

 私は、シンシアとミオに挟まれる形で居間のテーブルに座っていた。


(・・・なんなの? この状況・・・?)


「クローエ、ごめんなさい。 傷つけるつもりなんて無かったの。 本当にごめんなさい。」

「え? ああ、大丈夫だよシンシア。 ほら、本当にちょっとだけ爪が当たっただけだから、傷跡なんて残らないよ。」

「ミオは許さんぞ。」

「ミオ・・・ごめんなさいね。 でも、ミオが年のこと言うから悪いのよ・・・」

「なんだと!!」

「なによ!?」

 私の両側に座る2人が同時に立ち上がる。 話が進まないなぁ・・・


「ミオさん?」

 ビクっとして、ミオの動きが止まった。


「シンシア?」

 シンシアの動きも止まる。


「2人とも座りなさい。」

「「はい。」」

 私の()()()を聞いてくれた2人は大人しく席に戻る。


「ミオさん? まずはシンシアにごめんなさいをして下さい。」

「クロエっ! なんでだ? ミオは本当のことしか言っていないんだナ!?」

「だとしてもです。 わざわざシンシアを挑発するようなことを言ってはいけません。」

「・・・はい・・・シンシア、悪かったんだナ。 ごめんなさい。」

「シンシア? ミオさんを許してくれますね?」

「え、ええ。 私も悪かったわ。 ミオ、クローエ、ごめんなさい。」

 よし、まずは1つ問題解決だ。


「シンシア・・・さっき『グスタフに捨てられた』って言っていたけど、どういう事ですか?」

「それは・・・グスタフ、猫田を連れて出て行ったきり、まだ戻ってこないのよ。 きっと私を見限って、猫田と女のいる店に行ったんだわ。」

「何だと! 許さんぞネコタ!! もしそうならシメる!!」

「いや・・・そんな事はないと思うけど・・・でも、確かにちょっと遅いですね。」

「クローエもそう思うでしょう?」

「はぁ・・・まあ。」

「もしも、女の所に行っていたら・・・」

「い・・・いたら?」

「グスタフを殺して、私も死ぬわ。」

「ちょ!! シンシア何を言っているの? ミオさんも何か言ってください!!」

「ネコタ殺す!!」

「ミオさんまで・・・何言っているんですか? それに、グスタフたちはそんなことしてませんって! 何かトラブルかなんかですっ!!」

 男女関係でパーティが崩壊するって話は聞くけど、これは絶対に違うやつだ。


「おう、戻ったぞ。 遅くなってすまねぇ。 ちょっとトラブルがな・・・」

 言いながら居間に入って来たグスタフの言葉が止まる。


「何が・・・あったんだ?」

 泣きながら自分を睨んでいるシンシアと、今にも飛びかかってきそうなミオと、2人の間でおろおろしている私を見た直後のグスタフの反応だ。


「どうかしたのかグスタフ?」

 相変わらず間の悪い猫田さんが、グスタフ越しに居間を覗く。


「みんな動かないで!!」


 私はどうしようもなかったので、とりあえず精一杯大きな声で叫んだ。


「「「「・・・・・・・」」」」


 普段、大声など上げたことのない私の魂の叫びを聞いてか、皆は動きを止めて、一様に私を見つめていた。


 ゴクリ・・・

 誰かの喉を鳴らした音が響く・・・


「クロエ・・・」

「静かにっ!! みんな、勝手にしゃべらないで!! 黙ってイスに座って!!」

 呆気に取られていた4人は、素直にイスに腰掛ける。


「私が良いって言うまで、勝手な発言は許さないからね?」

 皆が頷いて、私の言葉を理解したことを示す。


 さて・・・なんとか刃傷沙汰は防げたけど・・・どうやって進めたら良いものか・・・

 時系列的に、まずはシンシアからグスタフに詫びてもらおうと思っていたけど、今はシンシアが素直に応じる可能性は低いだろう。

 ここは、私の勘を信じてグスタフたちから身の潔白を証明してもらおう。それには・・・


「猫田さん。」

「はいっ!」

 異様な状況に、猫田さんもいつもとは違う反応だ。


「依頼品の納品と、馬車の返却にしては時間がかかり過ぎではないですか?」

「それはだね・・・依頼品の納品時に依頼主からお小言をいただいてしまって・・・それでかなり時間がかかってしまったんだ・・・ですよ。」

「そうですか? どこかに寄って来たとかはありませんか?」

「ないない。 下手をすれば夕食の時間になってしまいそうだったので、急いで戻って来たんだ・・・来たんです。 結局、自分は昼食抜きですよ。」

「そうですか。」

 私は、猫田さんとグスタフの顔を良く見てみた。


「グスタフ?」

「なんでしょう・・・」

「猫田さんの話は確かですか?」

「ああ、猫田の話は本当だ。」

「確かに、グスタフも猫田さんもお酒を飲んだ感じはないですね。」

「ああ、もちろんだ。」

「グスタフ。 勝手な発言はしないでください。」

「・・・・」


「シンシア?」

「は・・はい・・・」

「グスタフたちの言っていることは信じられませんか?」

「いえ、ウソは言っていませんでした。」

「どうして分かるの?」

「だって、今までずっと見て来たから・・・ウソを言っている時のグスタフは分かるわ。」

「そうですか。 じゃあシンシア、グスタフにちゃんと謝ってください。」

「グスタフ・・・さっきは私が勝手に勘違いして怒ってしまいました。 ごめんなさい。」

「お、おう。 分かってくれればいいんだ。 俺もひどいことを言ってしまってすまない。」

「グスタフ・・・」

「シンシア・・・」


 (よし、ここまではうまく行っているぞ。 もう少しだ! 頑張れ私!!)


「ミオさん?」

「はい。」

「もう怒る理由はないですよね?」

「はい。」

「じゃあ、ミオさんも猫田さんに謝ってください。」

「え? でも。」

「でも? じゃないです。 猫田さんに直接言ってないですが、ミオさんが猫田さんを勝手に悪者にしていたんですよ?」

「あ~・・ネコタ・・・なんかスマン。 ミオの勘違いだったんだナ」

「ん? なんだかよく分からないが、別に自分は怒っていないぞ。」


「よしっ! これで誤解は全部解けましたよね? 皆さん、いつものように仲良く行きましょう!!」

「「「「お、おー」」」」

「そして! おめでとう!! グスタフ!!シンシア!!」


 わー! パチパチパチ・・・・


「お、おう」

「ありがとう。 クローエ、ミオ、猫田。」

 ふう。 これで一件落着ってことで・・・・あれ?


「猫田さん、グスタフ、依頼主からのお小言って何です? 依頼品に何か問題がありましたか?」

「いや、クロエ・・・これがな? 笑える話なんだが、お前らロアー・リブで役人から文句言われただろう?」

「あ、あー・・・グスタフが来ていないから荷物を渡せないとか言われて・・・なんとか荷を引き渡してもらうのに結構苦労したんだよ?」

「それな」

「ん?」

「実は依頼時に、俺が直接行くように指示されていたんだよな。」

「「はあ?」」

 私とミオが同時に反応した。


「だけどな・・・これは俺の早とちりだったんだが、ロアー・リブへの出発とカブって呼び出しがあったもんでな? 俺は依頼者が同じだと思っていたもので・・・・って、おい、クロエ・・・ミオ・・・どうしたんだ怖い顔して!?」

「「グスタフ~!!」」

 私とミオは同時にグスタフに飛びかかった。


「ちょっと、ミオ!クローエっ!!やめてよ! 私のダンナに手を上げないで!!」

「はははっ・・・キミたちは本当に仲良しだなぁ。」

「おい!猫田!! 笑っていないで2人を止めてくれ!!」


 結局、シンシアの必死の説得により、私とミオはなんとか押しとどまり、グスタフの顔のひっかき傷が少し増えただけで済んだ。


 ロアー・リブの領事館職員さんごめんなさい。 職員さんの言っていた事が正しかったです。

 悪いのは当方でした。 本当にごめんなさい。

 私は、心の中で何度も職員さんに頭を下げた。



  ~第5章 クロエとミオ3 終わり~


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