表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼と虎  作者: 釘崎バット
第5章 クロエとミオ3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/75

第4話

 侯爵令嬢(エリザベート)と面会した次の日の朝、グスタフが目を覚ますと、猛烈な頭痛を感じた。


「う・・・頭イテぇ・・・昨日は・・・少し飲み過ぎた・・・か?」


 指でこめかみの当たりを刺激していると、チラチラを目に入って来る部屋の雰囲気が、見慣れたいつも部屋とは違うことに気付く。


 さあっ・・・と血の気が引いていくのを感じる。

 続いて悪寒が走り、体がブルブルと震えて来る。


 隣を見てはいけない。


 長年冒険者として、また一時は騎士団員として、数多の戦いを経験してきたグスタフの勘が、最大級の警告音を発する。


 ()()()()()()()()()()を感じる右側に、一度は顔を向けようとするが踏みとどまる。


 そうだ、見てはいけない。


 警告は続く。しかし、確認しないままではいつまでも警告音は鳴りやまないだろう。

 グスタフが覚悟を決めて恐る恐る顔を右に傾けると、果たしてそこには眠っているシンシアの姿があった。


「な・・・なんて事だ・・・」

 グスタフは、思わず両の手で顔を覆った。

 彼は、その体制のまま昨夜のことを必死に思い返す・・・


 昨晩飲んだいつもよりも高級な酒が、思いのほかうまくて、ついつい酒が進んでしまったのは覚えている。シンシアの作ってくれた料理もうまかったのは思い出せる。

 おねだりをして買ってもらった高級な酒2本が空になる頃には、意外と酔いが回っていたのでお開きにしようとした。

 しかし、シンシアが自分に内緒で密かに購入していた、さらに高級な酒を出してきたため、どうしてもソレが飲みたい衝動に抗えなくて・・・栓を開けた・・・ところまでしか思い出せない。


 シンシア1人では、自分を居間から2階の部屋に運ぶことなど到底無理だろう。そうなると、自分の足で部屋まで歩いて来たとしか思えない。


 そうだとすると・・・俺が・・・!?


「おはようグスタフ・・・」

 目覚めたシンシアは、普段通りの態度でグスタフに声を掛ける。


「シ・・・」

「し?」

「シンシア・・・すまない。 俺は・・・俺自身の誓いを破ってしまったようだ・・・」

「うん。」

「しかし・・・しかし、それは・・・」

「それは? なによ?」

「・・・お前のせいでもあるよな?」

「う~ん・・・まあ、ゼロってことは・・・ないかもしれないわね。」

「そうか・・・シンシア・・・」

「なに?」

「責任取ってくれるか?」

「・・・ぶっ!」

 シンシアは、思わず吹き出してしまった。


「なによそれ? そういうのは私のセリフじゃないの?」

「いや、よくよく思い返してみると・・・お前、昨日ほとんど酒飲んでなかっただろう?」

「そうだったかしら?」

「いや、間違いない。 お前、普段だったら2日酔いで機嫌悪いのに、今はピンピンしているじゃねえか。」

「そういう日もあるんじゃないかしら?」

「俺は・・・お前の策に嵌ってしまったせいで、俺自身で立てた誓いを自ら破ってしまったんだ。」

「グスタフ・・・そんなに深刻に考えないで? 私だって・・・」

「エルフのお前はさ・・・これから百年、二百年と生きていくんだろうけどさ・・・それに比べたら俺の寿命なんて長く見積もっても後20年もないだろう・・・」

「うん。」

「それでも・・・」

「・・・それでも・・・?」


「それでも、俺を嵌めた責任取って、俺の嫁になってくれるか?」

「グスタフっ!!」

 シンシアはグスタフに飛びついた。


 シンシアに押し倒される格好になったグスタフは、いつもと違う天井を見ながら呟く。

「ミオたちに、どう説明したらいいもんかな?」

「大丈夫だって。 あの娘たちならきっと喜んでくれるわ。」

「そうかな? いや、そうだな。」


「シンシア・・・」

「ん? 何?」

「エルザに何か吹き込まれたのか?」

「ん~・・・ちょっと背中を押してくれただけだよ。」

「そうか。」


「ねえグスタフ。 私、ミオやクローエみたいな、元気でかわいい子供が欲しいな。」

「ハーフはいじめられるぞ。」

「そんな奴らは、私が捻りつぶしてやるわよ。」

「ああ・・・そうだな。」


 エルフ種であるシンシアなら、自分が死んだ後でも子供を見守って行くことができるだろう。いや、むしろ子供よりも遥かに長生きするのだから、子供の最後までも見届けてくれる事だろう。

 それなら・・・と、グスタフは腹を括ったようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ