第13話
クーを『深紅』の正式メンバーとして迎え入れてから、いくつかの簡単な採取クエストや魔獣討伐クエストをこなした。
クーの遠当ては、日を追うごとに進化しており、ちょっとした野獣・魔獣では相手にならない程強くなっていた。
もちろん、遠当てだけって話ではなく、剣技全体が上達している。
もうそろそろ十分であろうとの判断で、アローヘッド市に向かうこととなった。
まずは、アローストリング市から王都サジタリアに向かう商隊護衛のクエストを請ける。
アローストリング市から王都までは、商隊の移動速度で2週間ほど。
道中、護衛対象の商人から、とある噂話を聞かされる。
商人が言うには、第9国の北、第9国と第7国とを結ぶ街道に、かなり大規模な強盗団が出現して猛威を振るっているらしい。
現在、その街道には旅人や商隊以外に、第7国を離れて第9国へ移住しようとする難民のような人たちが増えているようで、その難民が多く襲われているとのことだ。
私は、私たちの目的地とは関係ないし、それだけ大規模なものであるのなら騎士団の仕事であろうと、特に気にしてはいなかったのだが・・・
もう2~3日で王都に到着しようかという所での野営中、眠っていた私は、ふと目を覚ましてしまった。
隣で寝ているはずのクーの姿が見えなかったため、クーを探しに起き出す。
「クー・・・トイレ?・・・お腹でも空いたのかな?」
暗闇に眼を凝らしながら、声にならないほどの小声で独り言を呟く。
「・・・・・・・」
エルザ達が、見張りをしている焚火がある方向から話し声が聞こえた。
ここからでは内容までは分からないけど、エルザとクーが、何かを話しているように聞こえる。
私は隠れる必要も無いのに、思わず気配を消して話の内容が聞き取れる距離まで近づいてしまう。
「・・・はい。」
「そうか・・・そりゃ故郷のことだもんな。 心配する気持ちになるのは仕方ないんじゃないか?」
「はい。」
「クーは国に戻りたいと思っているのか?」
「・・・正直に言って、戻りたいと思う気持ちは・・・あります。 お父さんやお母さんのことが心配ですから・・・けど、私が行っても邪魔になるだけだし・・・なにより、せっかく仲間にしてもらえたのに皆さんとお別れしたくはありません。」
「そうか。 お前は本当に聡くて、良くできたヤツだよ。 お前のママにも見習わせてやりたいわ。」
「エルザさん・・・頭の良さで言ったら、リア姉よりもスゴイ人はいないですよ? きっと。」
「あ? まあ、単純な頭の良さで言ったら、それこそ女神級なのかもしれんけどな。」
「そうですよ。 リア姉はすごいんです。」
「だけどな、アイツは自分ことを頭が切れる上に、沈着冷静だ・・・なんて思っているみたいだが、実の所はとんでもなく直情的で抜けているヤツだからな。」
「そういうところは少しあるかもですね。」
「お前の方が、よっぽど周りが見えていると思うぞ。」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。 カメリアじゃないけど、アタシだってお前のことは妹・・・いや、可愛い姪っ子かな? そのぐらいには思っているんだぜ。 もちろんゲオルグたちだってな。」
「そうだったら、とっても嬉しいです。」
「そろそろ戻りな。 ママが探しに来ちまうぞ?」
「はい、エルザさん。 お休みなさい。」
「おう。」
エルザとクーの話が終わりそうになったので、私は気配を消したままに急いで寝場所に戻る。途中からしか聞こえなかったけど、クーが自分の国に帰りたがっている?
つい最近、私のパーティ離脱問題やクーのパーティ加入問題が片付いたばかりなのに?
北の街道での問題・・・第9国と第7国との国境で・・・第7国・・・
そうか、おそらく第7国はクーの生まれ故郷なのだろう。
以前、エルザが言っていたことを思い出す。
クーは、とある国の重鎮の娘であり、その重鎮は敵対する者ともめている。
最近、政情不安定になってきているという第7国、そして第7国から他国に避難する難民・・・さらに、その難民を襲う大規模な強盗集団・・・・
なるほど・・・ちょっと気にかけて考えると、全部繋がって来る気もする。
もし、エルザが、クーが、北に向かいたいと言うのなら一緒に行こう。
知らない他人のことなんて、正直言って興味がないが、クーの願いならなんでも聞くし、エルザたちパーティの皆の頼みなら手を貸すのはやぶさかではない。そして、それが結果として、知らない他人を助けることになるのだとしたら・・・少なくとも悪いことではないと思った。
~第4章 カメリアとクー2 終わり~




