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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第4章 カメリアとクー2

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第12話

 クーの卒業試験2日目


「クー、今日もパトリックからだぞ。 いいなクー。」

「はい。 パトリックさん、よろしくお願いします。」

「ああ。」

 昨日と同じく、全身鎧に盾そして木鎚を持つパトリック。対するクーも昨日と同じ戦闘服に・・・今日は木槌ではなく短い木剣を持っている。


「パトリック、クーが昨日と同じだとナメてかかるんじゃねぇぞ?」

「ん? ああ、油断するつもりはない。」

「よし、じゃあ2人とも開始位置に・・・」

 ん?クーとエルザが一瞬目くばせをしたような・・・? 気のせい??


「よし、始めっ!!」


 エルザが戦闘開始を告げると、昨日とは違い、クーは距離をとったまま木剣を構えジリジリと動いている。パトリックが距離を詰めようとすると同じだけ後退する。かと思えば、たまに懐に飛び込んで四肢を使った連撃を繰り出して、また離れる。

 クーは、防御力の塊のような相手に対する戦い方を試行錯誤しているかのようだ。

 クーの攻撃は、主に四肢を使ったもので、木剣をあまり使用していないのは、刃へのダメージを想定してのことであろうか。


 パトリックが不用意に見える前進をかけた瞬間、クーは再び懐に飛び込む。


(ああっダメっ!! 誘いに乗っちゃった!!)


 パトリックは、即座に盾を前に構えてクーに突進した。

 ゴンっ!!と大きく鈍い音が響く。

 クーは四肢を丸めて何とか防御していたが、そのまま後ろにふっ飛ばされる。


 好機と見たパトリックは、見た目からは想像できないほどの速さで前進し、盾を思い切り左に払った。

 クーは、体勢を崩しながらも後方宙返りを行い、盾攻撃をギリギリ躱す。しかし、着地にミスったのか、地べたに這いつくばるような格好で着地した。

 そこを目掛けて、パトリックは木槌を振り上げ・・・思い切り振り下ろす。

 クーは、四つん這いの状況から両腕の力だけでさらに後ろに飛んで躱した。

 そのまま地面を殴ったパトリックに一瞬のスキができた。しかし、クーの所からは攻撃が届かな・・・ん?あの体勢は?


「てやあああああああああっ!!」

 クーは大きく叫ぶと同時に、地面に付きそうな体勢から木剣を振りぬく。

 その距離からでは、木剣は届かないと判断したパトリックは、防御するよりも空振りからの体勢の復帰を優先する・・・


 バチンっ!!


 衝撃音とともにパトリックが後ろに傾き、尻もちをついた。

 何が起こったのか?パトリックは驚いていたが、何かが当たった感触のある胸の辺りを押さえながらもすぐに立ち上がる。


 クーは、木剣を振り抜いた形のまま、俯せに倒れた。


「よし、そこまでだ。」

 エルザが終了を告げる。


「クーっ!!」

 私は、クーに駆け寄ろうと飛び出すが、視界が歪んで良く見えない。

 良く見えないながらも、なんとかクーを捕まえて抱き起す。

 このとき、私の貧弱な力で戦闘装備を身に纏ったクーを抱き起せたのは、奇跡的なことだった。妹を想う()()が成した奇跡だったのだと思う。


「クー! 大丈夫?」

「・・うん・・だいじょう・・ぶ。 悔しいなぁ・・・やっぱりまだ全然敵わないや。」

 ようやく私は、自分が泣いているのだと気づき、服の袖で拭うが涙はすぐには止まってくれない。


「クー、最後のあれ・・・」

「へへ、とおあて。 リア姉のよりも弱っちいけど、少し出来るようになったんだ。」

「うん。 うん・・・」

「リア姉泣きすぎ。 私、ケガしてないよ。 大丈夫、大丈夫。」

「うん。 うん。」


「で、どうよ。 ママは・・・ やっぱりクーは不合格か?」

「ううん。 エルザがダメだって言っても、クーは私が連れて行くことに決めたわ。」

「そうかよ。 パトリック、お前はどうだった?」

「シールドアタックで終わると思ったんだが、そこからの打ち下ろしも避けられて・・・しかも反撃をもらうとは驚いた。 最後のはなんだ? 石でも投げたのか? それとも魔法か?」

「と・お・あ・てだよ。 とおあて。」

「そうよ、パトリック。 遠当てよ。」

「とおあてです。 パトリックさん。」

「そうだぞ、パトリック知らないのか?」

「なんだ? ゲオルグまで・・・俺だけ知らなかったのか? とおあてとはなんなんだ?」

「えへへ、リア姉に教えて貰った、剣が届かない所に当てる技です。 まだまだ未完成ですけど。」

「何だと!? そんな技があるのか?」

「誰でも出来る訳じゃないわよパトリック。 ()()()()()()()()()()()()()わ。」

「そ、そんな条件がある技が存在するのか!?」

「そうよ。 だから、この中ではクーにしか習得することはできないわ。」

「リア姉・・・」

「はぁ・・・カメリア~、お前のママっぷりがどんどん酷くなって来てるのが心配だよ。 それに、その理屈ならアタシにだって習得できるだろうがよ。」

「まったくだな。 『冷血』ってアダ名も考え直さねぇとならねぇかもな。」

「・・・可愛くないと・・・か、確かに俺では習得できそうもないな。」

「おい、お前ら・・・アタシの話聞いていたのか? まあいいや、じゃあクーは卒業試験合格ってことでいいな!?」

「「おう!」」

「ええ!」

「やった~! これからもっと強くなるよ!!」

「よし、じゃあ今日は久しぶりに外で騒ごうぜ!」

「そうだな。 久しぶりにパーっとやろうぜ!」

「そうね。 久しぶりだし今日くらいはいっか。」


 その夜、新しくクーをメンバーに加え、5人体制となった『新生・深紅』最初の飲み会が盛大に開催された。


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